二乗の意味
詩は、芽依ちゃんの優しさにただ感動した。芽依ちゃんはどこまで、私のことを考えていてくれるのだろう。30代になっても、芽依ちゃんがいてくれるのなら、これから良いことがたくさんありそうな気がしてきた。芽依ちゃんとは、いくつになってもずっと一緒にいたい。親友という関係を超えて、今ではまるで彼氏みたいな存在だ。
二人がその後もプレゼントの話で盛り上がっていたとき、プチもその話に参加したくなったのか二人の間にヌヌっと入ってきた。すると、芽依ちゃんはプチの頭を優しく撫でながら、到着時に話していた本論の続きを再び話し始めた。
「さっきの話だけど、数字を二乗するってどういう意味があるのか、わかる?」
芽依ちゃんがそう切り出すと、プチがまた難しいお話が始まるのねという素振りで、詩の膝の上に乗ってきた。今日、神様の秘密の話をプチと一緒に聞きたかった私の気持ちがわかるみたいだ。
ただ、芽依ちゃんから二乗の意味とか真面目に聞かれても、詩には正直わからなかった。なので、おそらくこれは答えではないと思っていたが、詩は芽依ちゃんに教えてもらったことをただ繰り返してみた。
「芽依ちゃんが言ってくれたように、それはピラミッドの底面積を計算するためではないの?ピラミッドの底面は正方形だから、底辺を二乗すれば底面積になる。13の底辺を持つカフラー王の底面積は13の二乗になって、14の底辺を持つクフ王の底面積は14の二乗になるから。」
案の定、芽依ちゃんはそんな単純な話ではないよという顔で、少し笑みを浮かべながらこう言った。
「確かに底辺の二乗は底面積だけど、二乗にはもう一つ別の意味があるのよ。見えない数字、つまり目に見えない虚数を目に見える実数に変えることが出来るのよ。」
「どういうこと?」
詩は混乱した。芽依ちゃんが急に虚数の話をしてきたのが予想外だったので、思わずその言葉が口にでた。
「詩ちゃんは以前、複素数の話をしてくれたよね。この世界には目に見える実数で表されるものばかりでなく、目に見えない虚数で表されるものがあるって。」
「うん、虚数といえば、確か海水浴場の波の話をした。物理学では子供が乗る浮き輪の動きを、実数の成分の実部と、虚数の成分の虚部を合わせた複素数で表すらしいの。」
詩は頭の中で、複素数のしくみを表す図を思い浮かべた。目に見えない虚数の世界にも海水浴を楽しむ子供がいて、同じ波に揺られているのかもしれないという不思議な図だ。
参考: Pomegranate I
第四章真理 虚数とは
複素数の世界
第六章終章 13と14




