お誕生会
各地に散らばった伝承を組み合わせることで、この世界の真理が判明する。それは、まさにこの世界の壮大なパズルだ。やはり、真理の書は、そのことを伝える新しい神話に違いないと詩は思った。そして、その新しい神話は、稜を越える数字の秘密を伝えているのかもしれないと思った。
感慨に浸っている詩を尻目に、芽依ちゃんが話のギアを一段上げようとした。
「でも、本論はここからなのよ。」
芽依ちゃんの顔に、大事なことを告白するときの表情が浮かんでいた。詩は神妙な顔つきになって、芽依ちゃんの言葉を待った。
私の身構えるような様子を見て、芽依ちゃんは少し息抜きが必要だと思ったのだろうか、顔つきを柔らかな表情に戻してこう提案してきた。
「その話の前に、日差しが強いから木陰に座ろうか?」
ぴんと張り詰めていた気持ちが緩和されて、詩は正直、ほっとした。芽依ちゃんも大事な話をする前に一息つきたいのかも知れない。
芽依ちゃんは足元に置いていたショルダーバッグからレジャーシートを取り出して、樫の樹の木陰に出して広げた。そういえば、今日は詩のお誕生会だ。詩も朝から芽依ちゃんと一緒に食べようと思って作ってきた玉子とハムのサンドイッチをバッグから出した。プチのおやつも用意してきた。
芽依ちゃんも持参したお菓子を空いたスペースに並べていく。すると、あっという間にレジャーシートの上がいっぱいになった。大人になってから、公園でピクニックのようなお誕生会を開いて貰えるのは子供みたいに嬉しくて、なんだかワクワクした。
「アイスティでいいかな。」
芽依ちゃんが水筒から冷たい紅茶を出して、プラスティック製の透明なグラスに注いでくれた。琥珀色の紅茶が公園の風景に美味しそうに映える。
「詩ちゃんの好きなアップルティよ。」
「芽依ちゃん、ありがとう!」
芽依ちゃんの優しさが嬉しい。こんなことをして貰ったら、今度、芽依ちゃんのお誕生日に、絶対に何かをお返ししないといけないと思った。そういえば、芽依ちゃんは冬の生まれで、いっちゃんと同じ水瓶座だ。水瓶座は、知性を意味する星座。確かに、芽依ちゃんに相応しい星座だ。
「ケーキも用意したからね。ちょっと待っててね。」
「え、ケーキも用意してくれたの?」
「うん、スコップケーキを作ってきたの。」
そういうと、菜美ちゃんはショルダーバッグから小さな保冷バッグを取り出した。中には保冷材に包まれた白いタッパーが入っていた。
「崩れていたらごめんね。」
芽依ちゃんが不安そうにタッパーを開けると、白い生クリームとカットされたいちごで覆われた美味しそうなケーキが現れた。どこで調達したのだろう。その真ん中には、チョコで出来たお誕生日プレートが置かれていた。
参考: Pomegranate I
第二章伝言 ベテルギウス
第三章探究 神話学




