公園の会合
「あの樹がそうなのね。」
公園の入口でプチを抱っこした芽依ちゃんが呟いた。そう、今日は詩の誕生日。芽依ちゃんの提案でいっちゃんの実家近くの公園に行く約束をした日だ。長い髪をポニーテールに束ねた芽依ちゃんと駅で待ち合わせをして、古都にあるこの公園にやってきた。詩は今日の日に備えて、澄み切った空に似た淡いブルーのボタンフロントのワンピースを着ている。胸には青い薔薇のブローチ。昨年、薔薇島に行った時の服装だ。今日ここで、芽依ちゃんの話を聞いて、彼に会える方法がわかるのかもしれないと考えると、期待で胸が膨らんだ。
歩道から公園の入口を通って子供達の遊具が設置された敷地を抜けていくと、お目当ての樫の樹が見える場所に出た。その樹に近づくにつれて、芽依ちゃんの視線の角度が上がる。歩みを進める度に吐息が漏れてきて、芽依ちゃんも興奮した気持ちを抑え切れないようだ。やがて、その樹が生えている場所に到着すると、芽依ちゃんはその幹をぐるりと廻り、不思議な模様が正面に見える場所で立ち止まった。抱っこされているプチがその模様を確認しようと首を捩る。
「プチは見たことあるよね。この模様を。」
抱っこされたプチが芽依ちゃんをちらっと見た。
「どういうことなの?」
詩が尋ねると芽依ちゃんが答えた。
「プチが使者なら知っているはず。」
プチが足元に降りて、詩の傍に寄って来た。詩はしゃがみこんでその可愛い頭を撫でてあげた。
「太陽の軌道を表す365の数字、その3と6と5を足すと14。」
詩は、芽依ちゃんが何を言いたいのかわからなかった。見上げた芽依ちゃんの顔が、太陽の光に照らされて偉い数学者か古代の神官のように見えた。
芽依ちゃんが言葉をつないだ。
「その14の番号を持つ第14番目のレポートと、その前後にある第13番目と第15番目のレポート。その三つのレポートにこの模様の謎を解くヒントが書かれていたの。」
きっと、いっちゃんが残したファイルにあったレポートのことだ。詩は確認のために聞いてみた。
「レポートって、私の自宅にあるレポートのこと?」
「そうよ、謎めいたドイツ語のタイトルが付いているレポート『Bericht für die Wahrheit』、日本語に訳すと真理のためのレポート。その第13番目から第15番目までのレポートには、他のレポートと違ってたくさんの測量値や分析データの数字が記載されていたの。芽依ちゃんも同じことを感じたと思うけど、私も最初は三大ピラミッドの設計に関する専門的な報告書かと思ったのだけど、調べていくにつれて驚くべきことを意味していることがわかったの。」
参考: Pomegranate I
第三章探究 青いバラのブローチ
第四章真理 もう一つのファイル
第五章約束 薔薇島の出来事
プチとお出掛け




