第五十二話 ゲーム
「なん、だと?嘘だと言ってくれ!」
僕は深夜にベッドに寝っ転がって、紡とビデオ通話をしていた。
「本当なんだよ。20年続いても、解散するものは解散するものなんだよ。」
「そんなバカなことがあるのかよ!大人になって遊べる年齢になった時には、すでに新作は無いというのか!そんなの、あんまりだ!」
「それは公式のSNSがあるからそこにポストなりなんなりしてほしいんだよ…。」
紡は世間話のつもりでやったらしいが、これは僕の実存における大問題である。
命に関わる問題だ。
「そうか。次は僕なのか。」
「あっ、もういいよ?そこでやめとこ?」
紡は僕の大立ち回りを警戒して釘を刺す
だがそんな制止で止まる僕じゃない。
「無いなら、作ればいいんだ。僕はもう消費者マインドから抜け出すよ。今まで僕は資本主義の犬だったんだ。これからは自分の欲望や自己プロデュースのために金を払うことをやめるとしよう。僕の精神は、現実を受け入れられない自分と受け入れなければならない自分で分裂している。この相反する二つの精神を統合するのは『二次創作をする』というジンテーゼしかないとは思わないか!?」
「うん。じゃあゲームしよ。」
「そうだね。」
これ以上続けたらウザがられるだけだろう。
最近は分別がついてきた。
僕たちが遊ぶのはデジタルカードゲーム。
ビデオ通話からゲームの画面共有をしながらの通話に切り替える。
ルームマッチをしながら通話でも良かったのだが、正直に言って頭を使いたくない気分だったため、紡のレート戦を見ながら話すことにした。
「今ってこれに誘発当てた方がいいのかな?」
「そこに当てないと、リーサル取れなかったときの3ターン目にまたサーチされるから打った方がいいかも。」
「うーん、分からないんだよ。」
「サーチ先のカードに打った方が、相手のディスアドを要求できるようにみえるしな。」
僕たちは新しいパックに出てきたらしい強そうなテーマに悪戦苦闘していた。
「サンダー・◯チャイ先生に聞こう。」
まあ、ブラウザなんですけど。
僕はWEBサイトと公式のカード情報を照らし合わせてどうすればいいか考える。
「誘発は打てるなら打てばいいんじゃね?」
分からないものは分からないものだ。
制限時間が300秒のため、考えるにはあまりに時間がなかった。
対面は自分のサーチを通した後に永続をセット発動していた。
裏目が大きすぎるプレイングだが、相手に与える精神ダメージは絶大である。
「うお、永続じゃん。」
「引きだけの春日。私の方が上手いもん。」
「ガチで効いてるじゃん。」
紡はブチギレながら、手慣れたカーソル裁きでサレンダーしていた。
そしてゲームを終了した。
カードゲームのプレイングというのは奥が深いものである。
「そっちに行ってもいい?」
「ダメ。」
流石に夜道を歩かせるのは良くないだろう。
この辺の治安は良い方だが、それでもだ。
「じゃあ来て。来ないなら行く。」
「分かるのか?」
「あからさまに暗いよ。」
「そうか…。」
努めて明るく振る舞っていたつもりだった。
長い付き合いだから、誤魔化せないか。
「こっちに来てほしい。でも自転車で来いよ?歩くのは防犯的に良くはないからな。」
「ものすごく格好悪いこと言ってるんだよ…。」
「紡の顔が見たい。」
「おけ。」
紡の玄関を開ける音と共に通話が終わった。




