第五話 面白くないんだよ
僕の勝手な偏見かもしれないが、ライトノベルやアニメの主人公は大抵非リアである。
それなのにどうしてヒロインとの出会いを起点にして、文化祭を主導するクラスの中心になるまでカーストが高くなるのだろう?
真面目に作品を受け取る者ならば誰もが抱く疑問である。
「どうして、根暗で空想を広げる力だけはやたらある非リアの成功者のモデルケースの発想が、こんなにも貧弱なのだろう?」
そう考えてしまう。
その理由は明確である。
そもそも友達ができれば非リアになどなってないのである。
彼女がいたら2次元美少女に恋などしないのである。
そういうコンプレックスの裏面が作品に表れてるのだとしたら面白い。
「面白くないんだよ。」
文化祭当日。
綾地紡は文化祭展示を終え、生徒会や有志による演劇を見るためのバスや自転車での移動をクラスごとに開放するこの瞬間を狙って無事に抜け出した後に、心底くだらなさそうにそう言った。
無論、僕の恥ずかしい思索を覗き見て罵倒したわけではないのだろう。
ちなみに彼女と僕は別のクラスであるため近くのフードコートやゲームセンター、映画館などがあるショッピングモールで合流した。
制服で真っ昼間からデートをするのは世間が許してくれないのでお互いトイレで着替えた。
「文化祭のあのピリついた雰囲気はホントに疲れちゃうよ。それに展示はスーパーとかでかき集めた無料の段ボールにお絵かき。それをなんと19時まで残業しなくてはならない。くだらないよ。」
鈴の鳴るような声で彼女は文化祭への愚痴を一気に言い終わった。
彼女も分かってくれたか…。リベラルデモクラシーに反旗を翻す自由の敵である文化祭という巨悪を…。
彼女の姿はファッションに疎い僕が言語化するのには限界があるが、シックな黒のロングスカートに茶色のダッフルコートという10月にしてはいささか厚着なのではないか?という格好だった。
無骨な眼鏡にその格好を合わせたらなんだか地味で内向的な感じに見えかねない。
しかしその姿には地味という印象は全く受けず、奥ゆかしさと華が同居していた。
ファッションに詳しければこの理由が分かるのだろうが…。
「さて、本屋さん巡りをしようか?」
「ちなみにだが、何軒回るつもりだ?」
「この街全部だよ。」
「だからいくつなの?」
「細かいことですよ、お兄さん。」
変なところで無計画だがそれもいいだろう。
なんとなく巡るのも悪くない。
「それで?何時に学校に戻るんだ?やたら豪華なホールで現地解散じゃなくて、学校に戻るという無駄なことをするんだろう?」
「いや、今年はそうじゃないらしいよ?」
「それどこ情報?」
「さる筋からの情報ですよ。」
彼女は妙にテンションが高く、表情もコロコロ変わる様子と、その整った顔立ちもあって人目を引いた。
「ここで駄弁るのもあれだし、本屋行くべ。」
こうして文化祭を抜け出して街に繰り出し、本屋デートが始まった。




