第四十八話 現代文
テスト勉強は紡の家で行うことになった。
リビングテーブルの座席に紡と隣り合って座り、正面には姫宮さんがいる。
「現代文は日本語が読めればできるから勉強はいらないよね?」
紡はまず開口一番にそう言った。
「鬼畜くん、私を助けてくれるね?」
「同情するよ。」
この世の中が本を読んでる人種だけで構成されてると思ったら大間違いだ。
紡はそんなことは百も承知と思っているのだろうが、認識が世間とズレすぎてる。
「現代文は間違い探しみたいなもんだよ。正しいものじゃなくて、間違っているものを選んで、消去法で正解を選ぶんだ。『なんとなくそれっぽいものを選ぶ』を無くせば良い点が取れるよ。選択肢問題以外は授業中に出された問題の暗記だね。じゃあ現代文についてはもういいよね?」
「ブルータス!お前もか!」
姫宮さんが僕を裏切り者のような言い方をした。
何が気に入らないのだろうか?
「あとは日本語を読むだけじゃないか?なにか間違ってることを言ったかな?」
「いや、一緒に問題を解くとかは?」
「自分でやれよ。」
「それができないから頼んでるんだよ!」
よく分からない。
何が分からないのかが分からない。
このままだと僕の存在価値がなくなるだろう。
質問してみよう。
「現代文嫌いなの?」
「うん、嫌いだね。答えが一つじゃないから。」
なるほど、そういうことか。
「現代文ってそんな高尚なものじゃないよ?文章にあるものをある通りに書き、文字数が足りなければ自分の脚色を混ぜないで推敲するだけの、ただの単純作業なんだから。」
「じゃあ手伝ってよ。その感覚を掴みたい。」
「ああ、ならいいよ。」
僕の考えが足りなかった。
彼女が望んでいたのは訓練だったか。
「ダメ。」
紡がいきなり口を開いた。
「どうしたんだ?」
「縹は軽い男なんだよ。一緒に文字を読んでいいのはこの私だけなんだよ。」
最近の紡さんのブームは重い女ムーブみたいだ。
これが本当に一過性のブームであってほしいと願わずにはいられない。
「じゃあ紡が姫宮さんと一緒に読んで、紡の解説を僕が解説するよ。」
「それでいいんだよ。」
二度手間だが、紡の機嫌が悪くなるよりはマシだろう。念のため僕は紡の手を握った。
「なんで、こう、会話してるだけで、えっちいのかなぁ!」
姫宮さんはなぜか怒っていた。
何も卑猥なことなどしていないぞ。
「女の子がそう言うの、良くないと思うぞ?」
言いながらも、これはジェンダー差別的な発言かもしれないと反省した。
「机の下で手を繋ぐな!エロすぎる!」
姫宮さんの興奮を収めるには、かなりの時間がかかった。




