第四十七話 テスト勉強
「どうかこの私めに勉強を教えてください!」
放課後になって早々に紡を連れて帰ろうとした時に、姫宮さんからそんなことを言われた。
「紡に言えばいいじゃん。学年1位常連だぞ?」
「頭がいいのと教えるのが上手いのは違うの!」
姫宮さんが叫ぶ。
確かにアイツは人に何かを教えるというのに向いていない。
というか、アイツは勉強など微塵もしていない。
『授業中に教科書を読み、耳で先生の話を聞けば100点を取れるんだよ』って言われたときは張っ倒したくなった。
僕もそんな能力が欲しいものだ。
よくよく考えれば、勉強してない奴が勉強を教えるのが下手なのは、ある意味で必然なのかもしれない。
「まだ一週間あるじゃないか。」
「間に合わないよ!」
偏差値が高い我が校の生徒なだけあって、変な所で真面目である。
その真面目さに計画性が伴えば彼女の人生はもっと豊かになるだろうに。
「テストさぼって補習を受ければいいじゃん。委員長がいるんだ。君は一人じゃない。」
委員長は補習をギリギリまで出席せずに、学校側から最大限の譲歩を引き出して乗り越えようとする猛者である。
彼はこの戦略を使ってテストを出席せずに高校生活を乗り越えようとしている。
「委員長を炭鉱のカナリアに使いなよ。
Well, I suppose this is where our paths must part. I sincerely hope that, wherever life takes you from here, you continue to make decisions that are every bit as impressive as the ones that brought you to this particular moment. Take care, and do try not to make too much trouble for everyone else on your way out.
You’ve got this! Good luck!
まあ、僕の言いたいことはそれだけだ。健闘を祈る。グッバイ。」
僕はサムズアップして彼女を励ました。
途中でウェットでシニカルなジョークを英語でまくし立てたが、どうせ分からんだろう。
我ながら紳士である。
「京都の人の嫌味や皮肉は回りくどいと聞いたことがあるけれど、鬼畜くんはそれを遥かに凌駕してるよね。私って下に見られてるのかなぁ。」
彼女はどうやら英語が分かるみたいだ。
僕の足を踵で思いっきり踏みつけた。
ありがt…、じゃない。痛い。
そこは開いてはいけない扉だ。
「じゃあ3人で勉強すればいいんだよ。」
紡が僕に助け舟を出してくれた。
姫宮さんは僕の足を踏みにじるのをやめる。
「縹は踏まれるのが好きな変態さんなんだよ。」
「言いがかりはやめろ!」
姫宮さんの汚物を見るような視線には、さすがの僕も反応することができなかった。




