第四十五話 プロポーズ
「それはプロポーズと受け取っていいのかな?」
紡は顔が真っ赤になりながらも僕の言葉の意味がどういうことなのかを理解しようとしていた。
「え?うんそうだよ。」
『じゃあ結婚しようよ』という僕の言葉はプロポーズ以外の他にどんな解釈があるのだろう?
「私のため?」
「僕のためでもある。」
「私のこと、好きなの?」
「今は、ちょっと言えない。」
「好きって言わないと、私は嫌だよ?」
それはその通りだ。
でも紡の悲しい顔を見て、何も言わないなんてできなかった。
「最悪の場合を考えてたんだ。」
「どういうこと?」
「このまま大人になって、なんとなく疎遠になったらどうなるだろう?って考えた。」
「それで?」
「僕たちは生きていけるだろうか?」
「……。」
紡は答えることができなかった。
幼い頃に、お互いの存在が相互的に刻み込まれている。紡のいない生活が僕には現実味のないものに見える。
そして紡は僕がこれから何を言うのか、大体理解したように見えた。
「それは共依存なんだよ。」
「それの何がだめなんだ。」
僕はここで引くつもりはない。
これからどんな滅茶苦茶で、論理的に破綻してることを言うことになってもだ。
「共依存がだめなのは、それによって僕たちが客観的に見て損をするからダメなんだ。だったら僕たちが得をする共依存になればいい。」
「そんなの、ダメだよ。」
「僕たちが客観的に見て得をしてるのに、他人からゴチャゴチャ『共依存』みたいなカテゴリー批判をされても、そんなのは勝手な話だ。」
「本当にできるの?それができる自信なんてないんだよ。もし世界が嫌になって、2人だけの世界に閉じ籠もったらどうするの?」
「その時は、その時だ。」
「ズルいんだよ…。縹は私が断れないのを分かってて言ってるんだよ。」
「ごめん。」
「本当に、縹は鬼畜だよ。」
大体、お互いに得をする共依存ってなんだよ。
喋りながら考えてるから頭が空回りする。
自分で言っててバカバカしい。
「うんざりしたら二人で隠居してダラダラすればいいんだ。一人より二人だ。これが紡の最悪の未来だ。そう考えるとちょっと楽にならないか?この最悪の未来をなんとかして回避しよう。」
「ものすごい詭弁なんだよ。」
紡はすごく可笑しそうに笑った。
「縹にはちゃんと好きって言わせるから。」
紡が僕を抱きしめる。
ふわふわして気持ちいい。
「ありがとう、縹。」
僕たちはしばらくの間、そのままでいた。




