第四十四話 めんどくさ
昼休みにようやっと職員室から解放される。
見知った顔が僕を待ち構えていた。
「縹、一緒にご飯、食べよ?」
言葉だけを聞くとすごく嬉しいのだが、その声色にはとんでもない圧力があった。
誰もいない多目的室を見つけてご飯を食べる。
「『エッチすぎるよ』って女の子に言わせた縹くんはどんな言い訳をするのかな?」
「いや、あれは冤罪だ。」
「まあそれはいいや。」
「分かってくれたか。」
「愛姫ちゃんのこと、名前で呼んでた。」
「苗字だぞ?」
「私のことは『君』って呼んでた癖に。」
ていうか、そこなの?
それに中学生の時の話じゃないか。
めんどくs…、じゃなかった。
とても可愛いと思った。
僕は自分の感情を粉飾して、そこに可愛げを見出すことにした。
「めんどくさ。」
だが、心より先に身体が反応してしまった。
「そんなに◯にたい?」
紡を激おこにさせてしまった。
ここからは真面目に答えないと、しばらくは口をきいてもらえなくなるだろう。
「どうしたら僕を許してくれる?」
「私を膝枕して。」
そんなことで許してもらえるのか。
ちょっと拍子抜けした。
「ここでやる。」
「床に寝ることになるけどいいのか?」
「やる。」
僕たちはご飯を食べ終わったら、机と椅子をどかして膝枕するためのスペースを作る。
僕は正座して、膝をポンポン叩いて紡に頭を乗せるよう促した。
僕の膝の上で紡は仰向けになって寝た。
なんとなく頭を撫でてみる。
すごく滑らかな髪質で気持ちいい。
なんだかとても温かい気持ちになった。
「ご褒美になっちゃったかな?」
紡はからかうようにそう言った。
なんだか眠そうで、蕩けた表情だ。
「眠たいなら寝れば?起こすよ?」
「寝たくないんだよ…。」
彼女は手を伸ばして僕の頭を撫でる。
僕はその手を掴んで指を絡ませた。
「さっさと寝なさい。」
「うん…。」
穏やかな表情と寝息だった。
彼女を眺めているだけであっという間に時間がたった。
もう起こさなければならない時間になった。
別にバレても怒られないだろうと紡の頬を手のひらで撫でたりする。
紡は目を開いた。
「起きたか?」
「やっぱり縹は、私が目を覚ますのと同時に始めるのが趣味の変態さんなんだよ。」
「黙れ。」
「それは、心臓に悪いんだよ。」
ああ、そういうことか。
確かに僕は紳士的じゃなかったかもしれない。
寝てる時に気安く触るのは良くないだろう。
「悪かった。」
「毎日こんなことができればいいのに。」
紡はどこか厭世的な顔をしてそう言った。
ちょっと寝ぼけて素の姿が出ている。
「じゃあ結婚しようよ。」
「へぁ!?」
彼女は顔を真っ赤にして、聞いたことのない声を出した。




