第三十八話 遠足
学校の昼休みにて。
僕は教室で紡と向かい合って座っていた。
紡は自分の席に座っていて、僕は自分の椅子を持っていって、彼女の正面に座っている。
僕と紡は遠足をサボる計画を立てていた。
「高校生にもなって、遠足をしないといけないのはなぜだろう?」
我が校には春期恒例の親睦遠足なるものがある。
高校生にもなって、自転車やバスのような文明の利器を使わずに、人様の迷惑にならないように人の少ない緑の多い道や、広い道を大人数で闊歩するイベントである。
それだけなら我慢できるのだが肝心のイベントが、終わっていると言わざるを得ない。
学年別クラス対抗カラオケなるものをやると聞く。周辺に住宅地もなく、管理者からの許可も取っているらしい。
大体、クラスマッチなどを楽しんでいる生徒がこの世の中に存在するのだろうか?
そしてボッチ飯対策でクラスの皆で膝を突き合わせてご飯を食べることを強制される。
他人と食べるご飯ほどマズイものはないだろう。
どちらもリベラルデモクラシーを重んじるこの国の学校で行われるとは思えない人間存在の尊厳を踏みにじる所業である。
「学年別クラス対抗カラオケは、うちの高校の腐った因習そのものなんだよ。」
紡がすごく嫌そうに言った。
一年生の頃に散々な目に遭ったらしい。
ちなみに僕はサボって、昼間から適当に何をするでもなくブラブラしていた。
「僕は休む許可を取れたよ。」
「私も良いって言われたんだよ。」
僕の母の良い所は、自己幻想の埋め合わせのために理解ある親を演じようとしてくれる、ちょっと変なプライドの高さにあるだろう。
そうとなれば話は早い。
紡と二人で何をしようか考える。
僕より先に紡が口を開いた。
「ゲームセンターに行きたいんだよ。」
「へぇ、意外だな。」
「行ったことないから、行きたいんだよ。」
「じゃあそうしようか。」
明日はサボってゲーセンデートだ。
「午前中は一緒にお家でゴロゴロしよ?」
紡は流石、よく分かっている。
サボりは午前中に自堕落なことができるから価値があるのだ。
「私の部屋で、ゴロゴロしよ?」
「僕のゴロゴロする場所なくね?」
「私の隣が空いてるよ?」
「……。」
ぶっちゃけそれをするなら、一日それだけをするのもアリだなって思ってしまった。
「それじゃあ、明日の朝に私の家に集合して、ゴロゴロしながら決めよ?」
「いえっさー。」
昼休み終了のチャイムと同時に僕らは解散した。




