第三十三話 寄り道
僕たちはスーパーに寄り道していた。
スーパーに入った後も、手は繋いだままだ。
僕たちは浮かれていたのかもしれない。
「紡、晩御飯は何がいい?」
「ハンバーグがいいんだよ。」
子供っぽい要求に、ちょっと笑ってしまった。
「久々に笑ってる顔を見たんだよ。」
僕はそんなに笑ってなかったのだろうか?
根暗に見られないように振る舞っているつもりだったのだが。
外面と内面を切り分けることに慣れすぎて自覚していなかった。
「僕ってそんなに暗いかな?」
「いや、別に?上手くやってると思うよ。」
「ならよかった。」
「ただ、椅子にボーッと座ってる姿が可愛い所は直したほうがいいんだよ。」
「どういうこと?」
「分からなくていいんだよ。」
心の中でその言葉が少しだけ引っ掛かったが、そんなに重要とは思えなかったので、夜と朝に何を作るか考える。
「とりあえずハンバーグは作るとして、常備菜は7品ほど作るか。」
「縹は良いお嫁さんになれるんだよ。」
「筑前煮、ひじきの煮物、きんぴらごぼう、切り干し大根の4つは外せないな。」
「男子高校生が作るとは思えないラインナップなんだよ。」
「にんにく味噌も作るか。」
「さっきから渋すぎるよ。」
「残り二つは何が良い?」
「肉がいいんだよ。」
「じゃあ、ローストビーフとカレーそぼろにしようか?」
「やった!」
そうなると、なかなか大きな買い物になる。
綾地家の冷蔵庫の中身は把握してるので、一から全てを揃える必要はないが。
一応、材料を買うお金はある。
大五郎さんと睦美さんに甘えるのは少しだけ気が引ける部分がある。
まぁ結局、首が回らなくなるからやらざるを得ないのだが。
そんな僕の考えとは裏腹に、紡は買い物カゴにお菓子をバンバンぶち込んでいた。
何気に紡は甘やかされている。
「太るぞ。」
「昼は食べてないんだよ。」
「ちゃんとしたものを食べなさい。」
オカンみたいなことを言ってしまった。
他にも、この飲み物がおいしいとか、このスーパーの弁当が安すぎるとか、他愛もない会話をした。
「お会計をやってくれないか?」
「縹の生活力には致命的な欠陥があるんだよ。」
僕は店員さんと話すことがとても苦手だ。
貼り付けられたようなスマイルが怖い。
後ろに人がいる時の会計なんて、とても耐えられないというのもある。
僕の社会不適合スキルが遺憾無く発揮された。
「まぁ、それでこそ縹なんだよ。」
僕の社会不適合者っぷりをフォローされる。
「コンビニの会計は縹がやってね?」
いや、それは別の意味で嫌だ。
いつも行ってるコンビニの会計は別に緊張しないのだが、女の子と一緒にそれを買ったら、一年はそのコンビニを使えなくなる。
「それはできな−−」
「やって。」
「はい…。」
僕は頷くしかなかった。




