第二十四話 おかえり
「おかえりなんだよ。」
19時に多目的室から解放されて、紡の家でご飯を食べようとしたら、出迎えてくれた。
時刻は19時17分。
ちなみに彼女の服装は上下ともに黒の長袖と長ズボンである。
家では基本的に黒しか着ないらしい。
「ご飯もお風呂もないけど、私はいるよ?」
「そう思ってスーパーに寄ったよ。台所は勝手に使ってもいいか?」
「いーよ。」
彼女はお風呂に入ったが、ご飯は食べてないらしい。待ってくれてたのかもしれない。
どちらにせよ、嬉しかった。
「今日はあまり長居できない。」
「うん。」
母は友達と夜まで遊ぶことに関しては寛容だ。
「友達と済ませる」と母にメッセージを送ったが、早く帰るに越したことはない。
どうせすぐに家を出るのだとしても。
僕と彼女の家は徒歩5分ほどの距離で、かなり近い。だから20時までには料理を終わらせたいところだ。
僕はフライパンで玉ねぎのみじん切りを中火で炒めて、しばらくしてから、しめじを入れる。
玉ねぎがしんなりしてきたらトマトを潰してフライパンに入れる。
「赤ワインあるけど、使ってもいいか?」
「安物だからいいんじゃない?」
まぁ、いっか。
赤ワインを目分量で注ぎ、2つのサバの水煮缶を汁ごと入れて、中火で煮込む。
砂糖と塩とみりんで味を調えたら完成だ。
買ってきたバゲットとサラダを合わせれば、ちゃんとしたご飯になるだろう。
出来上がった料理を配膳する。
「相変わらずの手際だねぇ。」
紡は感心しながら、リビングテーブルで本を読んでいた。持っているのが岩波文庫の青いやつということだけは分かる。
「残ったやつは三人前あるから、残りは綾地家で食べてくれ。」
「お金は?」
「お世話になってるんだ。これくらいは。」
なんて言っても、母の金なのだが。
ちなみに我が校はバイト禁止である。
「バレないようなバイトをまた探そうかな?」
「やめたほうがいいんだよ…。」
紡は本気で僕を止めた。
「高校1年生で学校から遠くのコンビニ、スーパー、飲食店、清掃、工場でアルバイトしたけど、どれも一日で飛ぶような人間の屑が、縹なんだよ。」
なんてことを言うんだ。
だが具体的な行動を挙げられると否定できない。
僕は明らかに社会不適合者である。
新しい環境に耐えられない。
「店から連絡は来ないの?」
「別に?非通知にしてるし。」
紡は僕のことをゴミを見るような目で見た。
そんな目で見ないでほしい。
ゾクゾクしちゃうだろ。
「適当でも、いいんじゃない?」
紡は僕の考えてることを見透かしていた。
とは言っても、僕の特殊な癖を見透かしていないということだけは信じたいものである。
僕にはバイトをやらなければならないという義務感があったのかもしれない。
母から自立するために。
まだこんな感じでもいいのかもしれない。
少なくとも、今のところは。
「まぁ、今は働かないことが社会貢献だな。」
「それは違う。」
なるほど、そういう意味ではないらしい。




