第二十三話 するときはちゃんと
「どうして僕がこんな仕打ちを受けるんだ!」
「お前が課題を出さないからだ。」
僕の担任が正論を言う。
「もう2年生は、お前以外全員出したぞ…。」
どうやら彼は僕を要注意人物と認定したらしく、多目的室に連行され、マンツーマンで課題をこなしていた。
自分の仕事も忙しいだろうに。
なんだかんだで面倒見が良い人なのだろう。
彼はノートパソコンで仕事をこなしながら僕を監視していた。
「最高でも2カ月の間、課題を出さずにいれば先生方も諦める計算で動いていたんですが…。」
「ふん、職員会議でお前の名前が出てな。」
「甘やかすのは、やめだ。」
たったの一週間で僕は放課後の時間を拘束された。それ自体は当たり前なのだが、担任の監視はとても厳しかった。
多目的室に呼び出された時に逃げようとしたのだが、下駄箱から靴が消えていた。
そして待ち伏せていた担任に捕まった。
人間存在の自由を軽んじる行為である。
こんなことが、許されるのだろうか?
「まぁ、話しながらやろうや。」
別に話してもいいのか。
それなら、少し楽だ。
「課題出さない癖に、成績が良いのはなぜだ?」
「80点取るつもりでやるからです。」
「お前は嫌な奴だな。それで?」
「例えば理系科目なら、テスト範囲終盤部分でやらない分野を決めます。」
「匙加減は適当で、80点が下振れのギャンブルになればいいなーって感じで、やらない量を決めます。90点台を取れれば上振れです。」
「それって成績を下げてないか?」
「ギャンブルをしないと脳汁が出ません。」
「そうか。」
「文系科目は授業中に覚えるだけです。90点台は取れるので、そこでカバーします。」
「じゃあその要領の良さを生かして、さっさと課題を終わらせろ。」
担任は不機嫌になった。
やはり、授業は聞いてほしいのだろう。
「それとこれとは、話が別です。」
勉強ができないと、母が色々とうるさい。
内申点が低いことについては、成績が良ければセーフらしいので、そうしてるだけだ。
「綾地さんとはどうなんだ?」
「踏み込みすぎですよ。」
「ちゃんとつけろよ?」
「黙れ!」
将来のことを考えると、成績だけ良いというのも考えものかもしれない。
表向きの素行を良くするに越したことはない。
「次からはちゃんと提出します。」
担任は何か言おうとしたが、理由を聞くことはなく「よい心がけだ」とだけ言った。
「これだけは言うが、するときはちゃんと−−」
「殴りますよ?」
本当に、余計なお世話だ。




