第二十二話 成績発表
課題テストの成績発表がされた。
とは言っても、アニメや漫画みたいに順位と点数が貼り出されることはない。
ちなみに1学年240人、8クラスで、僕は10位だった。僕は9位と10位の2つ以外の順位を取ったことがない。
僕のことは「再現性の鬼」と呼んでほしい。
「ふふん、1番なんだよ。」
紡は自分の成績表を女子達に見せて回っていた。
「綾地紡の恋路を応援する会」のメンバー達はそんな彼女を嫌がる様子は無かった。
むしろ彼女たちは紡をマスコットのように眺めていた。紡が姫宮愛姫に見せた所で
「綾地さん、放課後にカフェ行かない?」
「私、綾地さんと仲良くなりたい!」
今日は良いものを見た。
お邪魔虫の僕は退散しよう。
そうしようとしたのだが。
「なんで?愛姫ちゃんたちとは、この関係がベストなんだよ。カフェになんか行かなくたって愛姫ちゃんとは仲いいよ?それにカフェに行ったら皆でワイワイ騒げないけど、学校ならカフェみたいなこともできるよね?」
「じゃあね、皆。また学校で!」
そして、紡は僕のところに来た。
「勝手に帰ったらダメなんだよ。」
「いいのか?」
「うん、理解してもらってるから。」
僕は心配して、彼女たちに視線を向ける。
応援する会のメンバーは悶絶していた。
「たまらん!」
「柔らかい態度に反した冷淡さ!」
「論理的思考!」
「かわいすぎる!」
「仲いいって言われた!」
「もう我慢できない。
◯るよ?◯るよ?◯るよ?」
最後だけ、◯モットがいた気がするが。
聞かなかったことにしよう。
ふむ。どうやらちょっとあれな人達らしい。
少しだけ、僕と同じ波動を感じた。
「ああ、鬼畜くんに奪われる。」
僕の仇名は「鬼畜くん」らしい。
彼女たちにしては穏当なネーミングである。
「奪われるって悪くないかも…。」
そして新たな扉を開こうとしていた。
僕はその道の先輩だが、こういうときに余計な口を挟まないのが、導く者としての務めである。
そうして教室を出ようとしたのだが
「おーい、逃げんなー。」
担任に声をかけられ、肩を掴まれる。
「お前、課題を何一つ提出してないんだが、どういうことだ?」
めっちゃ凄まれた。
ちなみに担任は性別が男で、白衣がトレードマークの英語教師。彼はオンラインサロンをしているような、いかがわしい有名人の本をたまに勧めてくる、ちょっと情弱な所がある。
「そんなんじゃ社会に出て通用しないぞ。」
「提出物というのは人と人との約束を守ることの延長線なんだぞ?」
「先生、人の失敗を許すことって大事だと僕は思うんですよ。」
「お前が言うな。」
「人が失敗した時に、何回許せますか?」
「お前みたいに繰り返すのは良くないな。」
「7回を70倍にするまでです。」
「って、誰かが言ってました。」
「お前は糸◯聡か!」
「じゃあ、明日提出することを約束します。」
「先生も僕との約束を守ってくれますね?」
「おい!」
こういうときは、走って逃げるに限る。
そしてこの程度で親に連絡してくることなどないだろう。
明日はどう口八丁で誤魔化そうか考えた。
「あっ、紡を連れてくのを忘れてた。」
この後、めちゃくちゃ怒られた。




