第二十一話 今のところは許す。
なんの変哲もない通常の学校生活で、一番抜け出しやすい授業をご存知だろうか?
いや、授業というのは正確ではない。
わけのわからない集会である。
しかも休み明け恒例である課題テスト後の、6時間目と7時間目の2枠を使って行うというのだから、気だるさも一入である。
ちなみに、今日の集会は見たことのない人の、知らない成功話を聞かされるセミナーである。
学校以外の新しい視点も取り入れてほしいというのが我が校の教育方針らしい。
まぁ、そんなことはどうでもいいとして学級委員長が人数確認したらバレるのではないかと思われるかもしれないが、僕は一味違う。
委員長に月1000円の賄賂を渡している。
そうして僕は、誰もいない教室で優雅に一人回しをしていた。
我が校でカードの持ち込みは禁止である。
最近の僕のブームはシャカパチと横入れで、カードを触らないとなんだか落ち着かない身体になってしまった。
四重スリーブの硬さとシャカパチが癖になる。
僕は意味もなくデッキの横入れとシャッフルを繰り返していた。
そして、一枚初動のドロー系誘発受けを考えていた時に、後ろから声をかけられた。
「シャカシャカパチパチうるさいんだよ。」
「うお!」
びっくりした。そして見知った顔で安心する。
「紡もサボりか?じゃあ一緒にやろうぜ!」
「メタルファイトベ◯ブレードなら一緒に遊んであげるんだよ。」
「どうせ暇だろ?」
「ちなみに私は左回転しか受け付けないよ?」
「いや、カードは回せないだろ…。」
紡は当然のように僕の膝の上に座った。
「どうやって抜け出したんだ?」
「委員長に袖の下を渡そうとしたんだけど、縹からもらってるって言われてサービスされた。」
どうやら考えることは同じらしい。
優等生の癖に、やってることはアグレッシブだ。
「じゃあ、なんかやるか?」
「なんもしないよー。」
そう言って、彼女は僕にもたれ掛かる。
膝の上のふわふわした感触を楽しむ。
「嫌だったかな?」
いきなりそんなことを言い出してきた。
主語はないが、言いたいことは分かる。
「ごめん」
そうとだけ言った。多分、伝わるから。
「まぁ、今のところは許す。」
ちゃんと伝わって、嬉しかった。
心の拠り所がなく、一緒にいても一人ぼっち。
つまり相手を信頼していないということ。
予定調和の会話が心地良い。
それはきっと、彼女も同じ。
それでも自分の感情をぶつけることが出来るのは、本当にすごいことだ。
正直、僕にできるか自信がない。
でも信頼なんかなくたってすごく心地良い。
これが偽物なんて、僕には思えなかった。




