第二話 いいよ。
「なぜこの部屋にいる?」
「鍵が空いていたからだよ。不用心だよ。」
「家の鍵が空いていたのか…?」
「…ん、そうだよ?」
「…?」
妙な間があったのが気になったが、追及するのはよそう。
「それで君はこの大きな箱に銀色のシールが張ってあるゲームの幼馴染と妹と先輩と巫女さんのなかで誰を一番使ったのかな?」
彼女のその言葉を聞いて、戦慄が走る。
なるほどクローゼットに隠してある紳士の秘蔵コレクションの一部を覗き見たらしい。
普通の男ならば、穴があったら入りたいほどの羞恥によって、この場から逃げ出すだろう。
だが甘い。
僕はそのようなステージにいるような凡庸な男ではないのだ。
「僕はキャラを好きになるが推しはいない!強いて言うのならば箱推しだ。それで「誰を使ったのかな?」と貴様は聞いたな?全員使ったさ。」
彼女は僕の男らしい宣言の何を気に入らなかったのか全く分からないが、僕に呆れたジト目を向け、「うん、ソウダヨネ。」と表層をなぞるような言葉と共に、「とっとと会話を終わらせたいという意思が私にはありますよ?」と暗に表明していた。
「大丈夫?」と彼女は聞く。
無論、僕の頭の調子が大丈夫なのかを聞いたわけではないのだろう。
「平気。」
それだけを答えるとなんだか無性にさびしさと心地よさと、先ほどの母親とのやりとりの焦燥の名残りが入り混じったような感情に襲われて、つい彼女の制服の袖を引っ張ってしまった。
「どうかした?」と彼女は聞く。
「そう、その角度だな。それがいい。しばらくそこにいてくれないか?」
「いいよ。」
彼女はただそれだけを言った。
彼女は僕の行為に対して「なんで?」とか「どうして?」とかを問うことはよっぽどのことがない限りない。それがすごく心地良い。
「いや何。君は顔が整っているからね。目の保養だよ。」
そんな感じのことを冗談交じりに言った。




