第十七話 将来の夢
綾地家で夕食を頂いたあとに、母から「今日は帰れない」というメッセージを受け取ったため、しばらく綾地紡と遊ぶことにした。
彼女の部屋の壁には吸音材が敷き詰められており、しかも簡易的な防音室がある。
防音室は、両手を広げるとちょうど内壁に手がとどく程の広さである。室内にはデスクとゲーミングチェアがあり、デスクの上には小さな本棚とノートパソコンがある。
天井にはエアコンの空気を取り入れる通気口があり、季節を問わず快適らしい。
そんな防音室の中で僕は椅子に座り、彼女は膝の上に座っている。
ちなみに彼女は「哲学探究」を読んでいた。
「落ち着くー。」
彼女は僕にもたれかかって、そう言った。
確かにそれはそうなのだが、悩ましいものである。色々と反応してしまいそうだ。
「大五郎さんと話したよ。」
僕はそう切り出した。
「でも、中学2年生から高校3年生までの間、耐えられる自信がない。」
「それで?」
「何でも一つ言うことを聞いてくれないか?」
「なぁ!?」
彼女にしては珍しい、驚きの声だった。
「そうですか。君はもう男の子になったんだね。これは私の責任なのかな?」
「ああ、責任を取ってくれ。」
彼女が軽口を言っても、僕は引かない。
「僕たちってこんなことをしても、一人ぼっちだよな?でも僕たちは同志であり、親友だ。」
「今日、僕は将来の夢ができたよ。」
「教えて。」
彼女は真面目な声色に切り替えて真剣に聞こうとしていた。
僕は彼女に「将来の夢」を話した。
彼女の顔は茹でダコみたいに真っ赤になった。身体もとても熱い。
「それって、人としてどうなの?」
「いや、別に犯罪やるわけじゃないんだから。」
「でも、やっぱり…」
「あまりにも、鬼畜だよ…。」
彼女にしては珍しく、逡巡している。
最後の言葉はどこか艶っぽかった。
「他人から見たら、そんなの分からないだろ。」
僕がそう言うと、彼女はもうどうにでもなれといった感じで
「その賭けに、私も付き合うよ。」
そう言った。
そして彼女は膝の上で振り返り、上目遣いでいきなりとんでもないことを言い出した。
「私のこと、好き?」
心臓が止まるかと思った。世界から音が消え、顔が一気に熱くなる。
「分かった。」
「いや、何がだよ。」
「私はそんなに辛抱強くないんだよ。」
彼女は決意表明のように宣言した。
「絶対に好きって言わせるから。」
僕は何も言えない。余裕がまるでない。
「じゃあ縹はまず、私を紡って呼んで?」
この日を境に、紡の猛攻がはじまった。
中学生編が終了して、次話から高校生編に突入します!




