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アシリア追放

「もう、ルイは必要ない」


 一同に集めたロード達の前で、オレは言い放った。




 「アシリアの作った、オデル様包囲網も弱体化してきました」


 ウインザーが呼応する。




 「アサイル・アサルドは弱ってきている」


 「セント・ヘレナは焼いた」


 「今が、皇帝を追放するチャンスだ」


 演説をぶった。




 「奴を援助するものは無くなった」


 「ルイの居る浮遊城を討つ!」




 「オーーー」


 ロード達は雄叫びで呼応した。




 アデルは俯きながら、爪を噛む。


 ――元の主君でもある。


 最近は完全にオデル公爵に移籍した形だ。


 ――だが、後悔はない。


 勝ち馬に乗っているのだから。




 「アデル、大丈夫か?」


 一応、様子を窺う。




 「異論はございません」


 「オデル様こそ、これからの時代を作るのですから」


 アデルは真っすぐにオデルを見詰めた。


 ――その陰で、ずっと噛んでいた爪は波打っていた。




 「トヨルド、浮遊城の弱点は?」


 浮遊城建設の親方に攻略ポイントを尋ねる。




 「弱点も何も。簡単なことでございます」


 トヨルドは得意満面で、クシャクシャの笑顔を貼り付けた。




 「浮遊城の浮沈スイッチは私が握っております」


 自信たっぷりに顎を突き出す。




 「浮遊城を包囲したら、地上に下ろします」


 張り付いた笑顔の奥の目が、鋭くものを言う。




 「地上に落ちた浮遊城など、砂上の楼閣……」


 不気味に口角を上げた。




 「うむ。ドワーフの扱いは間違えたが、……そこはでかした」


 嫌味ではなく事実だ。




 「オデル様、そのことはもう……」


 そこは言い訳が効かない。


 いつまでも過去のミスを言わないで欲しいが致し方ない。


 ……下手なことを言うと、百倍返しにされる。




 「メットの担当はアデルだ。」


 「今回はアデル総大将で戦え」


 メット近郊から、ヘレナにかけてはアデルの領分だ。




 「畏まりました。」


 やや硬い表情で頭を垂れた。


 …………ズラは擦れない。


 ――今は真剣切った会議中だ。




 敢えて元家臣のアデルをアシリア皇帝に対峙させる。


 オデルらしいやり方。




 「しかし! 殺してはならぬ」


 オレは皆を睥睨して諫める。




 「殺せば逆賊と言われ、教皇も敵になる」


 「大切なのは、生殺しにすることだ!」


 ロード達を見渡す。




 「異論はございません。承知しました!」


 このような時、トヨルドは真っ先に返事を返す。


 遅れて……皆も呼応して頷く。




 「殺さず生かさずだ。」


 「捕らえて、半殺しにして、野に放て」


 ……オレの言葉に皆凍り付く。




 皆オレの恐怖政治に恐れをなし始めている。


 今回はそれも承知さ。




 付いて来れない奴はいらない。


 アデルとトヨルドの忠義を、試さなければならないからな。






 ◇






 オデル軍は浮遊城を取り囲んだ。




 「……では、お任せください」


 トヨルドが得意げに、懐から魔石を取り出した。




 「大地の顎あぎとよ、天なる偽りの城を――!」


 胸の前に掲げた魔石を擦り、詠唱した。




 「グオ、グッゴゴゴゴーーーーー」


 眼前に浮かぶ巨大な城が上下左右に揺れる。


 ――小石や砂が城から降る。




 「喰らえーー、グラビティーー!」


 浮遊城は左右に揺れながら降下する。




 「グッオウッスウーーーン!!」


 耳をつんざく音を反響させ、浮遊城は地に落ちた。




 地を揺るがす衝撃と、砂埃があたりを舞う。


 咽るような土の匂いが立ち込める。




 しばしの静寂が訪れた。




 ――次はアデルは詠唱を始める。


 「深淵より溢れよ、記憶を沈めろ――アクア・ウンダ!」




 巨大水龍が城壁を飲み込みながら駆けて来る。


 浮遊城の下層が砕け、巨城が傾いた。




 「危ない!」


 皆が一斉に叫んだ。




 2階までを流されて、耐えられなくなった浮遊城が傾いて崩れ落ちる。


 「グッオウッスウーン!」


 浮遊城が崩れ落ち、崩壊した。




 アデルは崩れ落ちた浮遊城に感慨する。


 「皇帝の権威が崩れ落ちた」


 「時代が変わろうとしている」


 何か、――周りに言い聞かせるかのように大声で話す。




 「アシリア皇帝を捕らえろ!」


 アデルは力いっぱい叫んだ。




 「探せーー!」


 オレも皆を鼓舞する。




 ――水龍の流れが引けてから、崩れた城内を探す。




 なぜか? アシリア皇帝の姿はない。




 「情報が入りました!」


 伝令兵がオレの前に現れた。




 「アシリア皇帝は、近くのマキシ城へ逃げたとの事」


 「なにー! どうやって?」




 「脱出口が、……」


 「どうした?」


 「脱出口があったようです」


 最初から逃げ道があったという事か?




 「……トヨルド、どういうことだ?」


 「わ、わ、わかりません」


 いつもの得意顔は姿を消す。




 「設計段階で、やられたのではないか?」


 オレは結果論しか見ない。




 「どう責任を取るのだ? トヨルド」


 「腹切るのか?」


 言い過ぎを承知で、圧を加える。


 トヨルドの顔は恐怖で歪む。




 しかし、


 ――トヨルドは、すぐに笑みを貼り付けオデルを見据えた。


 「マキシ城は張りぼての砦」


 「キャノン砲ぶち込めば、あぶり出せます」


 言葉は力強かった。




 「マキシ城は近い。旋回しましょう」


 アデルも加勢した。




 「よし、全軍旋回!」


 オレの判断は早い。




 「ハプスブルグ、速攻だ」


 特攻隊長に先陣を切らせた。




 「ウインザー、アデル軍も続け」


 「トヨルドは射程圏内に入ったら、キャノン砲を放て」


 矢継ぎ早に指示を出す。




 もうこいつらは、オレの戦い方が体に染みついている。


 突然の指示変更に異論を唱えるものなどいない。




 オレが育てたこいつら、イアポニア国最強集団だ。




 「オデル様、射程圏に入りました!」


 トヨルドは、楽しんでいる様でさえある。




 オデルの無茶ぶりを交わす術を心得ている。


 ――知恵者だがマジメにバカが付くアデルとの違いだ。




 「トヨルド、撃ちます!」


 ハイテンションになったトヨルドは手が付けられない。




 「連射します!」


 オレも半ば呆れて、やるに任せた。




 「アシリアがあぶり出てきたぞー」


 先陣のハプスブルグが捕らえた。




 ハプスブルグがアシリアの両脇を羽交い絞めにする。


 ――オレは近くまで行き対峙した。




 「ルイ……」


 アシリアの顔は恐怖で白目が浮き出る。




 「よくもオレ様に盾突いたな!」


 目の前のアシリアを罵倒した。




 「ハプスブルグ、……殺れ!」


 髭面巨漢のハプスブルグが詰め寄る。




 「た、た、助けてくれ。」


 アシリアは崩れ落ちた。


 地べたに水分が満ち、臭気が漂う。


 恐怖のあまり、虚脱したか?




 ハプスブルグはロングスピアでアシリアを狙う。


 顔の真横を瞬息で衝いた。




 「ヒーーーーィ」


 そのまま意識が遠のいた。




 「メットから出て行け! 永遠にな」


 意識があるのか知らんが、ルイに追放を宣言した。


 もう、お前はこれまでだ。




 かつて皇帝にしてやった男は、泥の上で震えていた。


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