パート41
— エンカウンタ
真夜中。白い砂漠の砂が風に舞っていた。
空にははっきりと星が見え、この奇妙な夜には闇がなかった。まるで一人一人が自分の光を持っているかのように、砂漠はくっきりと見えていた。
舞い上がる砂がシナの頬に当たる。彼女は目をこすった。
目の前にはユリナが、かなり前から彼女を見つめていた。遠くには誰もいない。二人だけが向かい合って立っている。
「……君がそうか。」
シナの声は風に溶ける。ユリナはただ小さく頷いた。
シナは少し考える。
「私たち……どれくらいここに立ってる?」
その問いにもユリナは反応しない。
その瞬間、シナは気づく。自分は一本の木の下に立っていた。
さっきまでそんな木は存在していなかった。葉は鋭く、触れれば人を傷つけそうなほどだった。シナは怯えながらその木を見上げる。
しかし視線を戻すと、そこに木はなかった。
少し後ろへ下がり、周囲を見渡す。誰もいない……自分以外。
しばらく砂漠を見つめ続ける。
「……何が起きてるの?私はどこにいるの?」
心の中で呟きながら、シナは前へ歩き出す。
少し進んだ瞬間、足元が崩れ、彼女は落ち始める。地面が消え、深い闇へと落下していく。
その時、無数の刃が彼女に向かって飛んできた。
しかしその直前、ツネリがシナをその場から引き離す。シナは意識を取り戻す。ツネリがそこにいた。
そして彼女の視線の先に——魂が凍る光景があった。
そこに“死体”が立っていた。
白い身体、ところどころに広がる緑の菌のようなもの。頭の上部だけに残る白い髪。背中からは刃が突き出している。
「シナ、今すぐ逃げろ……!」
ツネリはそう言って前へ出る。
次の瞬間、血しぶきが飛び散った。ツネリの顔にかかる。
彼の手首は切断されていた。
シナは叫びかけるが、口を押さえて声を殺す。
ツネリはなおも同じ言葉を繰り返す。しかし今度は顎ごと切り落とされた。
シナはその場から必死に逃げ出す。
ポケットの中の携帯が鳴っていた。
一方その頃、マヨラはツネリに電話をかけていた。しかし応答はない。
マヨラは電話を切り、車のスピードを上げる。タガヤも同乗していた。
そのタガヤにも妻から電話が入る。
「今ちょっと立て込んでいる。後でかけ直す。家にいてくれ。」
そう言って電話を切る。
一方アラシヤマでは、テイシが地面に倒れていた。頭から大量の血が流れ、まだ息はある。
意識を取り戻し立ち上がろうとするが、激しい痛みに再び倒れ込む。
「警察の動きはもう遅い。アラシヤマは封鎖され、警備員まで入れ替えられている……」
タガヤが説明している最中、道路を横断した瞬間——
横からトラックが突っ込んできた。
車は道路下へ転落し、激突する。
運転手はトラックを止め、救急を呼ぶ。
マヨラは意識を取り戻す。シートベルトのおかげで致命傷は免れたが、重傷だった。
口から血が流れる。
横を見ると、タガヤの姿がない。衝突の衝撃で車外へ投げ出されていた。
彼は岩の地面に頭から激突し、大量の血を流していた。動けず、ただ苦しむだけだった。
マヨラは車から出ようとするが、ロックが壊れて開かない。
「タガヤさん……!」
何度も呼びかける。
ようやくドアを壊して外に出た時には、彼はすでに息絶えていた。
マヨラはその場に座り込み、震えながら後ずさる。
その時、運転手が近づいてくる。
マヨラは駆け寄り、状況を説明しようとする。
「俺たちはあの場所から来たんだ……そしてトラックが……見たんだ……」
言葉にならない。
その瞬間、地面に一滴の涙が落ちる。マヨラの涙だった。
運転手は遺体を見て目を閉じる。
やがて救急車が到着する。
マヨラは車を止め、別の車に助けを求める。
「アラシヤマへ行けますか?」
運転手は頷く。マヨラは乗り込む。
一方、救急隊は遺体を運び始める。
運転手は状況を説明し、もう一台の車に少年が乗って行ったことも伝える。警察へ連絡が入る。
マヨラは車内で頭を押さえていた。
そして突然、携帯を取り出す。
「マスターに連絡しなければ……」
その頃、シナは走り続けていた。息が乱れ、倒れる。
顔を上げると——
そこにゴラリが立っていた。
その目には、シナ自身の姿が映っていた。




