パート39
— 手がかりの男 (— Man Of Clues)
「……生きていたのか?」
マヨラは彼の目を見つめた。そこには、かつてあったような怯えはもう存在しなかった。
「……ああ。」
男が答える。ウェイターが注文した料理を運び、テーブルに並べていく。その間、男は皿が置かれる様子をじっと見つめていた。マヨラの全神経は、その男だけに向けられていた。
「お前は……あの屋敷の料理人だな。俺と仲間たちがゴラリを仕留めた、あの夜の……。シナもそこにいた。お前もあの夜死んだと思っていたが、遺体が見つからなかった……。なぜか、今になって理由が分かったよ。」
男はマヨラの言葉をただ静かに聞いていたが、何も答えず、料理を口に運び始めた。男はあっという間にすべてを平らげてしまった。
「すまない、長いことまともな飯を食っていなくてね……。それにしても、あの夜の出来事を思い出すと……今でも生きた心地がしない。」
「あの夜のこと……?」
コックは外で松明に火を灯していた。そこへ、一人のエージェントが通りかかる。
『こんな夜更けに、ここで何をしている?』
『使用人たちが火を点けるのを忘れていたようで、私が代わりにやっていました。』
そんな風に、二人は他愛のない会話を交わしていた。その時、コックの耳に屋根の上から奇妙な足音が聞こえた。彼が上を見上げた瞬間、魂が凍りついた。屋根の上には、すでに獲物を狙うゴラリが潜んでいたのだ。コックがじりじりと後ずさりするのを見て、エージェントは不審に思う。
『どうした?』
だが、コックはエージェントの方を見ようともしなかった。次の瞬間、ゴラリがエージェントの上へと猛然と襲いかかった。その凄惨な襲撃に恐怖したコックは、屋敷の外へと逃げ出した。何度も転び、這いつくばり、がむしゃらに起き上がって走り続けた……。その間に、ゴラリはすでにジャングルの奥へと去っていった。エージェントの胸には太い木の手すりが突き刺さり、貫通した先端には肉片がぶら下がっていた。そこには無数の蝿が群がっていた。
「あの事件の後、俺は二度とその土地の近くにすら近づかなかった。」
マヨラはコックを見つめ、その名を尋ねた。
「……ザーキだ。」
コックは自分の名前を告げた。マヨラは彼を連れて外へ出ると、タガヤさんを自宅の前に呼び出した。雨はすでに上がっていた。マヨラは彼をタガヤさんの家へと連れて行く。ザーキは怯えてはいたが、マヨラに対してどこか信頼を寄せ始めていた。
少し歩いたところでマヨラは足を止めた。そこは人通りの途絶えた、静まり返った道路だった。彼は振り返るなり、ザーキの腹部へ向けて強烈な拳を叩き込んだ。激しい衝撃に、ザーキはうずくまったまま立ち上がることすらできない。
「……これは、あの一人のエージェントの分だ。」
マヨラはそう言い放ち、手を差し出した。ザーキは一瞬躊躇したが、その手を掴んだ。マヨラは彼を支えて引きずり起こし、再び歩き出した。
タガヤさんは外に立ち、彼らの到着を待っていた。二人がそこに歩み寄る。最初、タガヤさんはザーキの正体に気づかなかったが、マヨラが事情を説明した。
「警察には行ったのか?」
「いいえ……怖かったんです。警察に話したところで、ただの作り話だと片付けられると思いました……。」
ザーキはすべての真実を吐露した。長い話し合いの後、タガヤさんはザーキに、これからはマヨラと行動を共にするよう告げた。
二人は再びアパートへと向かって歩き出す。
「……そういえば、あの時お前と一緒にいたあの少年は……助かったのか?」
マヨラは何も答えなかった。遠くで雷鳴が轟いている。しばらくすると、また微かな雨粒が落ちてきた。
マヨラはフェイスマスクを着用し、駅前通りを横切った。ザーキはただ彼の背中を見つめながら、その後を追う。二人はアパートに到着した。
「君は、ここに住んでいるのか?」
「いや……だが、かつて誰かが住んでいた。」
マヨラが答える。彼はある部屋の前で立ち止まり、深く息を吸い込んでからドアを開けた。そこには、今でもあの頃と全く変わらない景色が残されていた。そのアパートの部屋は、タカオのものだった。
「……さっき、あの少年のことを聞いたな。」
ザーキはマヨラを見つめ、それから部屋全体を見渡した。
「……もういない。」
ザーキはその場に立ち尽くした。彼の目に、タカオが母親と一緒に写っている一枚の写真が留まった。
「お前が怯えて逃げ出したあのゴラリを……仕留めたのは、あいつだ。」
ザーキは写真を手に取り、埃を拭うと、再び元の場所に戻した。
「俺は、ここに住むのか?」
「お前の自由だ……。」
その言葉を聞き、ザーキは心の中でマヨラと共に行くことを決意した。
マヨラが自分の部屋に戻ると、ザーキもそれに従った。マヨラはバルコニーに置かれた椅子に腰を下ろす。夜は静まり返り、冷たい風が吹き抜けていた。
ザーキがコーヒーを淹れて持ってきた。マヨラは、自分が指示を出したわけでもないのに動いてくれたザーキに「ありがとう」と告げた。ザーキはバルコニーの手すりに腰をかける。
マヨラはコーヒーを啜りながら言った。
「これからは、俺と行動を共にしてもらう。俺の言うことをすべて聞き、理解し、従うんだ。……それにしても、随分と濃いコーヒーだな。」
「……あんたは、どこのエージェンシーの人間なんだ?」
ザーキのその問いに、マヨラは微かに微笑み、カップをテーブルに置いた。
「俺は、渋谷エージェンシーのセカンドオーナーだ……。俺にとっての初代はオカイラさんだけだからな。過去に誰がその座にいたとしても、俺が二代目だ。」




