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ゴラリ・エージェント  作者: Adrashika
第8章:涙の欠片
37/43

パート37

— 再び、見える (— Again I See)

嵐山の竹林には、静寂が満ちていた。地面には木漏れ日が散らばり、穏やかな空気が流れている。しかし、その静けさの中で、森にそぐわない奇妙で低い音が響いていた。一人の少女が森の中に座り、竹の揺れに合わせて踊る光の粒を眺めている。……だが、彼女の方からは異様な音が聞こえていた。まるで獣が獲物を貪り食うような音だ。

そこから少し離れた場所に、観光に来た一人の少女がいた。彼女は境界線を越え、カメラを手に森の奥へと入り込んでいた。竹林の写真を撮っていた彼女の耳に、あの音が届く。音は次第に大きくなり、彼女は足音を忍ばせて進んだ。……肉を削ぎ、骨を噛み砕くような生々しい音。

さらに進むと、背中を向けて座り、何かをしている少女の姿が見えた。観光客の少女は一本一本、竹を支えに近づこうとする。だが、誤って竹の幹ではなく葉を掴んでしまい、葉がちぎれた拍子にバランスを崩して転倒してしまった。

顔を上げると、そこにはもう誰もいなかった。ただ、食い散らかされた死体だけが転がっている。少女の瞳が恐怖に震える。彼女は慌てて起き上がり、後ずさりしながら背中から地面に倒れ込んだ。それでも視線は死体から離せず、這うようにして逃げようとする。息が荒くなる。その時、自分の背後に誰かがいる気配を感じた。

「……な、何があったの? あの子はどこ……? 私の後ろにいるのは誰……?」

震えながら、彼女は恐る恐る振り返った。その瞬間、彼女の目は背後の少女の顔に釘付けになった。その少女は、これまでの人生で見たこともないほど美しかった。しかし、視線を少し下げると、再び恐怖が襲う。少女の服は返り血で真っ赤に染まり、その瞳は血のように赤く光っていた。

「……助けて。私は何もしてない……お願い……。」

突如、少女の背後から血飛沫が舞った。何かが彼女を貫いたのだ。背後から突き出したのは、無数のブレードが仕込まれた、刺のある異形の手だった。

少女はその場に凍りついた。瞳からは感情が消え、恐怖も、力も、希望もすべてが失われていく。彼女は深い闇の中へと堕ちていった。ブレードが彼女を捕らえ、その頬に一粒の涙がこぼれ落ちる。

次の瞬間、ブレードが少女の体を容赦なく引き裂いた。地面に血が広がる。体は半分に断たれたが、彼女はまだ生きていた。……だが、痛みすらもう感じない。

一枚のブレードが少女の顔をなぞり、その肌を無惨に切り裂く。剥き出しになった恐ろしい顔。ゴラリはその少女の傍らに座り、その肩を掴むと、再び「食事」を始めた。血が滴り、地面を濡らしていく。

強い風が吹き抜け、竹がぶつかり合う音が不気味に森中に響き渡った。

「風が強くなってきたね。行こう、シナ。」

テギがシナに声をかける。シナは橋の上から、流れる川をじっと見つめていた。

「……悲しいの?」

テギの問いに、シナは黙って首を振り、歩き出した。

(何があったんだろう? 昨日、何かあったのかな……シナがこんな風になるなんて。)

テギは地面を見つめ、悩みながら彼女の後を追った。

しばらく歩き、二人はカフェ『Zushai』の前に立ち止まった。マヨラが働いている場所だ。二人は店に入り、テーブルについた。一人の店員が注文を取りに来る。

「……今日、どうしたんだい? タクシーを呼んだのに、乗らないなんて。」

「……別に。」

シナは静かに答えた。テギは、そんな彼女の様子に自分まで沈んでいくのを感じた。

注文したコーヒーが届く。テギはいつもの味を確かめるが、シナはそこに何杯も砂糖を入れ始めた。テギは違和感を覚える。彼女がコーヒーにこれほど砂糖を入れることなど、本来はないはずだった。

砂糖を混ぜながら、シナの手が止まる。彼女は心の中で呟いた。

(まただ……。忘れてた。)

しばらくして、二人は会計を済ませて店を出た。その時、シナは窓越しに見てしまった。マヨラが別の女性と一緒に歩いている姿を。……その光景を見た瞬間、彼女の心は粉々に砕け散った。

テギが心配して声をかけるが、シナは答えず、ただ立ち去った。テギには何が起きているのか理解できなかった。

一方、マヨラはその女性と共に、ある店の前で立ち止まっていた。

「君が言った通り、今日は休みだ。だが、俺が言うまではカフェから一歩も外に出るな。」

女性は素直に頷き、注文した料理を食べ始めた。

「……こんなにまともな食事、久しぶり。……ねえ、一つ聞いてもいい?」

マヨラは頭に手をやり、深く溜息をついて、手で促した。女性は言った。

「……私の婚約者……つまり、カツネリ捜査官には、いつ会えるの?」

マヨラは冷ややかな怒りを込めて彼女を見た。彼女はたまらず視線を伏せる。食事を終えた後、マヨラは彼女をカフェへ送り届け、自分のアパートへと向かった。

その時、タガヤさんから電話が入る。マヨラは電話に出た。

「マヨラ……明日、行くぞ。**『マスター』**がお呼びだ……。」

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