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ゴラリ・エージェント  作者: Adrashika
第六章 ― 死の天使
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パート31

— 記憶の椅子 (Chair of Memory)

全ての書類の確認が終わったが、有力な証拠は見つからなかった。

「正直に言おう、これを仕組んだ奴は……大したもんだ。疑いの余地すら残さないほど、緻密に証拠が作り込まれている。」

カツネリ は部下たちに語りかけていた。部下たちの額には冷や汗が滲んでいる。その中の一人が尋ねた。

「カツネリさん、これからどうすべきでしょうか?」

「新入り(ジュニア)たちをこの書類から遠ざけろ。そして、全て元の場所に戻しておけ……。俺たちは今から、街外れのあの屋敷へ向かう。」

部下は黙って頷き、その場を離れた。残っていた別の部下が前に出て、汗を拭いながら話し始めた。

「カツネリさん、あの辺りは完全な森林地帯とは言えませんが、7〜8キロほどの広さがあります。その中心から少し左に外れた場所に、あの屋敷は建っています。……ですが、もうすぐ日が暮れる。行くのは明日にしませんか?」

カツネリはタバコに火をつけた。ライターをポケットにしまいながら、静かに言った。

「今、行く必要がある……。朝にはもう、チャンスはないかもしれない。暗闇のいいところを知っているか?……『暗闇は、とても正直だ』」

部下にはその真意が分からなかったが、それでも頷き、車を回すよう連絡を入れた。

その頃、タガヤ が自宅に到着した。車を停め、ロックをして中に入ろうとした時、ツネリ が現れた。オカイラが最も信頼していたエージェントだ。

「ああ、ツネリか……。朝から何度も会いたいと言っていたが、一体何事だ?」

「実は、オカイラさんの死から20日が経ちました。葬儀は静かに執り行われましたが、親族や家族だけでしたので、エージェントたちは立ち会う機会がありませんでした。ですから、明日、エージェンシーに来ていただけませんか……。」

タガヤはツネリの肩に手を置き、静かに頷いた。

「分かった、待っているよ。……ところで、マヨラ からは何かあったか?」

タガヤが、マヨラからは何も聞いていないと伝えると、ツネリは深く追及せず、足早に去っていった。タガヤは家へと歩き出し、途中でマヨラに電話をかけたが、マヨラがそれに出ることはなかった。

— 翌日

屋敷の前に車が止まった。昨夜、カツネリたちが調査に出ようとした矢先、本部に死体発見の連絡が入り、結局一晩中局に留まらざるを得なかったのだ。

車を降りると、そこには焼け崩れた屋敷の残骸が広がっていた。崩れた壁、積み重なる瓦礫。

「これほどの惨状……単なる火災で済むはずがない。」

カツネリは独り言を漏らしながら歩みを進め、部下たちと共に再調査を開始した。

同じ頃、東京の別の場所では、エージェンシーにエージェントたちが集まっていた。タガヤが到着し、自分の席に着く。マヨラ以外の全員が揃っていた。皆の視線がタガヤに集まる中、彼は再びマヨラに電話をかける。

(マヨラ、なぜ出ない……? どこにいるんだ?)

そう考えていた時、入り口に立っていた少年が外に目をやった。雨が降り始めていた。窓の外では、人々が店先や木の下へと駆け込んでいく。

一台の車がエージェンシーの敷地に入ってきた。エンジン音に、全員の視線がゲートに突き刺さる。

車から降りてきたのはマヨラだった。片手に傘、もう片手に花束。黒い服に黒い傘、そして白い花。マヨラは一段飛ばしで階段を駆け上がっていく。

彼が会議室に現れ、自分の席に座ると、ツネリがマヨラを見て少し微笑んだ。全員が短い沈黙を捧げた後、ツネリが前に出た。

「皆様、お集まりいただき感謝します。ここ数日、我々エージェンシーは協議し、今後はマヨラがこのエージェンシーをリードすることに決定しました。」

その言葉を聞いた瞬間、タガヤは呆然とした。彼はゆっくりとマヨラの方を向く。

「現在、我々には多大なプレッシャーがかかっています。そのため、オカイラさんの仕事はタガヤさんに引き継いでいただくことにしました。情報筋によれば、JIBが既にこの件に介入し始めています。慎重に対応せねばなりません。そしてこの重責を担えるのは、オカイラさんの後ではタガヤさんしかいないのです。」

ツネリの言葉を聞き、タガヤは直感した。(これはマヨラの仕業か……。)

(マヨラ……初めてだ。お前の中にこれほど大きな変化を感じたのは。……一体、何を企んでいる?)

タガヤの心の中で葛藤が渦巻く。その時、彼とマヨラの間の見えない糸が揺れた。マヨラがタガヤと視線を合わせる。

(ついに『真のゲーム』が始まるのか……。そして、本物の『マヨラ』が覚醒した。今まで一度も聞いたことはなかったが、あえて聞こう。……お前の望みは何だ?)

タガヤがマヨラを見つめながらタバコに火をつけた、その瞬間。

同時刻、カツネリのタバコが消えた。

カツネリが車に戻り、全員に引き揚げを命じようとしたその時……。

一人の部下が、一発の**銃弾バレット**を持って駆け寄ってきた。カツネリはその弾丸を凝視する。先端にはひび割れのような紋様があり、細長く、白く輝いていた。

カツネリは空を見上げ、深く長い溜息をついた。まるで、失くしていたパズルのピースを見つけたかのように。

「……こんな弾丸、見たことがない。確信はないが、銃と弾丸の知識なら誰にも負けない自信がある。だが、これは別物だ。不気味すぎる。」

カツネリは独り言を呟きながら、その弾丸を部下に手渡した。

「これをラボへ持っていけ……。」

赤い空と雲が夕暮れを彩っていた。その静寂を、ある声が切り裂く。

「これはどういうことだ? 全てお前の差し金ではないのか、マヨラ。」

タガヤはマヨラの自宅を訪れていた。

「お前は知っているはずだ……かつてお前は殺人を犯し、一つの血族をほぼ絶滅させた。その死罪からお前を救ったのはオカイラさんだ。そうでなければ、お前は無残な死を遂げていた。それなのに、エージェンシーを率いて、自ら表舞台に出るつもりか?」

ずっとタガヤを見つめていたマヨラが、水の入ったグラスを彼に差し出した。

「タガヤさん。俺にとって、オカイラさんの場所はただの『物』じゃありません。……あれは、古き記憶が宿る椅子なんです。あなたは知らないでしょうが、俺はあなたよりもずっと前から、オカイラさんを深く知っていた。」

「お前を巻き込みたくはない。だが、お前が腹を決めたのなら……俺には止められない。お前がオカイラを知っていたように、俺もお前を知っている。言っても聞かないだろう。」

マヨラは窓際に歩み寄り、静かに告げた。

「……この世界の『ルール』を知っていますか?」

タガヤは違和感を覚え、考え込んだ。この世にルールなど、数えきれないほどある。

「恐怖…… 権力…… 敬意。

そして、この3つを理解した者が……」

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