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ゴラリ・エージェント  作者: Adrashika
第五章:血の起源 — ゴラリ
27/35

パート27

— 危機一髪

「真っ直ぐ街道を行けば済むものを、なぜこれほど遠回りをしたのだ……」

さかいへと向かう足取りは、乱れることなく進んでいた。その道中、カメズがフラダに問いかける。フラダは少し先で足を止め、カメズに向き直った。

「貴様は人殺しをしたのだ。だから街道は避けた。町衆が道を封鎖しているのだ。今こうして生きていられることを、天に感謝するがいい。」

そう言い捨てると、彼は再び歩き出した。空には厚い雲が垂れ込め、陽の光を遮っている。冷たい風が吹き抜け、二人は荒涼とした大地を進んでいった。

「一つ聞かせてくれ……。目的地は木曽谷きそだにだと言っていたが、なぜそこを通り過ぎ、回り道をしてまで堺に来たのだ……?」

フラダは深くため息をついた。カメズの言葉に耳を貸すことなく、ただ前を見据えて歩き続ける。

(なぜ何も答えぬ? こいつの言う通り、俺には殺しの疑いがかかっている。だが堺に着けば、役人に掛け合って……罪をこいつに着せてやる。その時どう動くべきか、もう考えてあるのだ。)

心の中で悪態をつきながら、カメズはフラダの後を追った。

(ユリナは無事だろうか。約束したのだ、彼女はきっと待っていてくれるはずだ。)

フラダの心の中では、その想いが募るばかりだった。一方、その想い人であるユリナは、谷で行われる祭りのために家の掃除に追われていた。

「ユリナ、少しは休みをとりなさい。そんなに根を詰めたら疲れ果ててしまうよ。祭りはまだ先なのだから。」

母の言葉を聞き、ユリナは縁側の戸の傍に腰を下ろした。

「近頃、随分と静かになったね……。」

ユリナはその言葉の意味を理解していたが、返す言葉が見つからなかった。彼女は母の顔を見ることなく、ただ地面へと視線を落とした。

(フラダ様、今どこにいらっしゃるのですか? 時ばかりが過ぎていきます……。)

ユリナの心は、何度も同じ問いを繰り返していた。夕暮れ時、彼女は家仕事を終え、皆を食事に呼びにいった。

その頃、堺の境界線上で、フラダの歩みは疲れを見せ始めていた。カメズは相変わらず問いかけを止めない。フラダは目を閉じ、不快な表情を浮かべながらも耐えていた。そんな中、カメズの口からある問いが飛び出した。

「フラダ、お前は女というものをどう見ているのだ?」

フラダは足を止め、じっと地面を見つめた。カメズは興味深げにその答えを待つ。

「答えは明白だ。絆の中に敬意と誠実さがなければ……どれほど美しい顔であっても、嫌悪しか感じぬようになる。」

そんな長い対話を続けながら、二人はついに堺へと辿り着いた。どの店の前も客で溢れ、商人たちが慌ただしく行き交っている。

雑踏の中では、スリや騒動を警戒する侍たちが目を光らせていた。フラダはこれほど大きな市場を見るのは初めてで、その活気に圧倒されていた。すると突然、背後から声をかけられた。

「少々、よろしいかな……。」

フラダが振り返ると、そこには一人の男が立っていた。**景政かげまさ**である。フラダはまだ、この男が何者かを知らない。

「江戸で人を殺め、逃げ延びた男について何か聞いておらぬか?」

フラダは冷や汗を流した。目の前の男が、町から派遣された役人であることを瞬時に悟った。

(まずい、どうする? 突き飛ばして逃げるか? いや、それは逆効果だ。余計に怪しまれることになる……。)

その時、景政の背後からカメズがこちらへ向かってくるのが見えた。

(あの馬鹿はどこへ行っていたのだ! こんな瀬戸際にのこのこと現れおって……。来るな、来るんじゃない……!)

フラダは景政とカメズを交互に見つめ、息が止まりそうになった。

「フラダ、行こうぜ。」

カメズが声をかけた瞬間、景政の傍らに連れの者が現れ、急ぎの用を告げた。カメズは景政のすぐ後ろを通り過ぎ、フラダの手を引いて歩き出す。景政も連れの言葉に耳を貸し、振り返った時には、フラダが立っていた場所にはただ人混みがあるだけだった。

辺りを見渡すが、雑踏の中にその姿は見当たらない。

夜が更け、景政は連れと共に宿屋にいた。一階の食事処で、ようやく腰を下ろす。

「久々にこれほど寛げた気がするな。一日中働いた後でも、夜は気が休まらなかったが、今日は体に力が戻ってくるようだ。そう思わぬか、景政?」

連れの言葉に、景政は表情を少し変えたが、何も答えなかった。連れは彼が話したくないのだと察した。

しばらくの沈黙の後、景政が口を開いた。

「我らは河内かわちに向かうつもりだった。だが、城の番兵に出会ってな……。江戸から街道を避け、役人を巻くようにして遠回りしてきた二人がいると聞いたのだ。番兵が疑いを持ってくれて助かった。奴らは堺へ向かったそうだ。」

「聞いているのか……?」

連れは食事を平らげるのに夢中だった。景政は深くため息をつき、額に手を当てた。

「どうしたのだ、景政?」

景政は鋭い視線を向け、言い放った。

「食事を済ませろ。話はそれからだ。」

ちょうどその時、フラダとカメズが宿屋の前を通りかかった。カメズはこの宿に泊まろうと勧めたが、フラダは断固として拒否した。その刹那、景政の目にカメズの姿が映った。

ほんの一瞬のこと。彼は反射的に立ち上がり、外へ飛び出した。しかし、視線を上げても……

そこにはただ、夜の雑踏があるだけだった。

「私の見間違いだったか……?」

実際には、二人はすぐ目の前の店に身を隠していた。しかし、看板の陰になって、三人が互いの顔を見ることはなかったのである。

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