パート23
— 一瞬の隙 (A Hance)
風は止んでいた。フラダが目にしている光景は、想像を絶するほど恐ろしいものだった。流れる血の騒めきが、周囲の雑音を消し去っていく。体は震え、視線は一点に釘付けになっていた。
その恐怖の渦中で、一つの影が死体を貪り食っていた。フラダの境遇は、まさに目の前で仲間を食らう獅子の前に立ち尽くし、逃げ場を失った鹿のようだった。フラダはただそこに座り、その光景を直視していた。いや、本当は見たくなどなかったのだ。
「目が離せない… 神よ、お助けください…」
心の中でそう呟きながら、彼は身を縮めて一晩中座り続けた。だが、ある瞬間、その影が食べるのを止め、石のように固まった。フラダの心臓が跳ねた。逃げ出そうと腰を浮かせたその時、影は再び人の死体を食らい始めた。
夜は更けていったが、フラダにとっては八晩分にも等しい長さだった。重い呼吸と、自分に向けられた死の気配…。震えながら、ようやく夜が明けた。
朝になり、村人たちはフラダを捜し疲れていた。どうすべきか誰も分からなかった。その時、冷たい一陣の風が吹き抜け、一人の男が遠くから歩いてくるフラダの姿を捉えた。彼の足取りは奇妙で、ひどく疲れ切っていた。村人たちが駆け寄り、問いかけたが、フラダには答える余裕どころか、言葉すら見つからなかった。萎縮した彼の思考は、何も理解できずにいた。
数日後、フラダの体調は少し回復した。その間、ユリナが彼の看病をしていた。フラダは確信していた。あの夜のことを村人に話せば、自分は消されるだろう。何事もなかったかのように振る舞う日々が始まった。
「何だって…?! 村を出るというの? なぜ?! 近いうちに祝言を挙げると言ったじゃない…」
ユリナは村を去る理由を問い詰めるが、フラダは何も語ることができない。
「すぐに戻る、私を信じてくれ。そして、私と共にいたいなら、何も聞かずにいてほしい…」
ユリナはそれを受け入れ、二人は歩き出した。村の外れまで来ると、フラダはユリナに別れを告げた。
「達者でな…」
そう言い残し、フラダは歩みを進めた。彼の姿が見えなくなるまで、ユリナは見送り(お見送り)を続けた。
— 江戸の街 (Ido/Tokyo)
フラダは江戸の街に辿り着いた。道中、彼は多くの土地の噂を聞き、調べを進めていた。ゴラリは一様ではない。その姿は、彼らが死の間際に迎えた状況を映し出す。どのような死を遂げたかが、ゴラリの肉体となるのだ。
彼はまた、一部の人間がゴラリの存在を知りながらも、何も語らず、ただ自分たちが襲われないよう祈っていることを知った。
「彼らによれば、それは想像を絶するほどの強欲なのだという。人は死ぬ間際、誰もが願いや渇望を抱く。その中でも、あまりに強すぎる渇望ゆえに天国にも地獄にも行けず、ゴラリへと成り果てた者たちがいるのだ。」
フラダは江戸の街を裸足で歩きながら、考えに耽っていた。夕暮れ時、江戸は華やかな活気に包まれていた。銭湯には人々が集まり、物売りの声が江戸独特の風情を醸し出していた。当時、家々は木と紙で造られていた。
フラダは、先へ進むための軍資金を得るため、ある店で働き始めた。
数日働いて分かったのは、当時の人々は明日の心配をせず、今日の稼ぎを今日のうちに使い果たすことに喜びを見出していたことだ。地震や火事への絶えぬ不安が、皮肉にも「今この瞬間」を精一杯生きる力となっていた。
翌日、フラダが店に着くと、主人が彼を呼び止めた。
「フラダ、向かいの店から四百匁の銀貨を受け取ってきてくれ。急ぎだ。」
フラダは承諾し、四百匁を預かって戻ってきた。主人は喜んだ。実は主人は事前に相手の店主に「五百匁」だと伝えていたのだが、フラダは百匁の欲に溺れることなく、誠実さを示したのだ。
主人はフラダに真実を話し、褒美として新しい草履を贈った。
フラダは喜び、そして数日後、彼は目的のために店を去った。狩りをするゴラリ、自らの存在を悪用する者たちだけを討つための組織を作るために。
彼は歩き出した。あの夜の残像を脳裏に焼き付けて。ここから、すべてが始まるのだから…。
ここまで読み進めてくださり、心より感謝申し上げます。私の物語に皆さんの貴重な時間を割いていただけることが、何よりも嬉しいです。
さて、今回のエピソードを読んで、何か「複雑すぎる」と感じた部分や、設定について「よく分からない」と思った箇所はありましたでしょうか?
皆さんがどこで混乱を感じたか、あるいはどの部分をもっと詳しく知りたいか、ぜひ教えてください。次回のパートで、より分かりやすく、より良い形で改善していきたいと思っています。
皆さんの意見を大切にしながら、この物語を紡いでいきたいです。これからもよろしくお願いします。




