表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
つぼみ ──ノライ──  作者: モリサキ日トミ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

32/33

話をするもの

『君は鎮守様の縁日にアヤカが買ったノライだね』

──あなたはアヤカを裏切った人。

『そう。私はアヤカを裏切った。そのせいで、もう実体はなくなり成仏も出来ずにこの世を彷徨っている』

──アヤカに近づいてきたのはあなただったのね。何を企んでいるの。

『他意はない。ただアヤカが心配なので君たちを探した』

──今更、何を言ってる。実体のないあなたに何が出来る。

『確かに、私は物理的な行動は起こせない』

──そもそも、あなたはアヤカを捨ててメアリに近づき、いいように使われて最後には彼女のノライの餌になった。そんなあなたに用はない。

『そんなことを言わないで。私にもアヤカを守る手伝いをさせて欲しい』

──あなたを信用することは出来ない。あなたはノライの中に取り込まれた。そんなあなたは何をしようと考えている?もう何も出来ないだろう。見えないけれど目障りだ。どこかに消えて。

『確かに君の言う通り、私はノライに食べられた人間だ。だが、それ故に私に出来ることがあるかも知れない』

──どういうことだ?

『ノライのどこかに私だったものが、私の血や骨や肉や臓器や脳がドロドロに溶けて吸収されてヤツの細胞の一部になっているはずだ』

──それがどうした。

『私がまだこの世にいるのだから、その細胞とは遣り取りが出来ると思う』

──果たしてどうかしら?

『ノライはこの港町に向かっている。私にはそれがわかる。そして今、足止めしている』

──何とでも言える。

『最近、おかしなことを言う男を見なかった?』

──さあ。スーパーで万引き男が捕まったらしいけど。

『その男は隣の県にある山を登り、その近くの沢でノライの根に襲われた。彼はよくないことに、ひとり煙草を吸っていた。ただ、その火のおかげでその男だけが、あの太い根に絡め取られずに済んだ。周りの登山者は全滅した』

──ほう。

『つまり、ノライはここの隣まで来ているということ。そして、今足止めをしている』

──足止めは、あなたのおかげだと?

『おかげなどではないけれど、おそらく私のドロドロしたものは蕾と根の境目辺りの細胞になったようだ。それで多少、根のコントロールが出来ていると思う』

──それじゃ、それ以上ここに近づかないようにノライの根の動きを封じて。

『それは無理だ。私がコントロール出来るのはほんの一部だ。焼け死んだ二体のノライのように蕾も根も一気に完全に生命活動を止めないと、この国全部が根で覆われてしまう』

──それじゃ、あなたはこれから何をする?

『とにかく根をここまで伸びないようにコントロールする。その後、根の水分を一気に脱水出来ればいいんだけど。君たちは、やはりここを離れた方がいい』

──アヤカは、この場所を、この家の人を気に入っている。ここにいたいと思っている。いつも私を大切にしてくれるアヤカの望みを叶えてあげたい。

『君は、人を操れるんだろう』

──アヤカを操れと

『君も私も、現状では物理的に動けない』

──アヤカは私の友人だ。操ることなど出来ない。

『それなら、メアリのノライをどうやって倒したらいい?アヤカをここで生活させたいのなら、あのノライを滅ぼすしかないのだろう』

──四方に伸びた根を一所に寄せてまとめて脱水する。それが無理なら、メアリの浴室を襲う。あそこではノライの根が浴槽の底に穴を開けて、そこから外に広がっているので蕾が普通に見られる。蕾をダイレクトに攻撃して滅ぼす。そうなれば根も活動を停止してやがて干からびる。

『メアリはどうする。簡単に浴室に入れてくれない』

『君はどうする』

『おい、なぜ黙る』

アカの返事が途絶えた。

静かな寝息を立てていたアヤカが寝返りを打った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ