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つぼみ ──ノライ──  作者: モリサキ日トミ


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33/33

決心するもの

──アヤカ。

アカが呼びかけてきた。

「なあに」

アヤカが首にぶら下げた小さな巾着袋をそっと握る。

──アヤカ、これから一緒にメアリのところに行って欲しいの。

「突然どうしたの?」

──メアリのノライは案外近くまで根を伸ばしていた。

「そうなの…」

──この間行ったスーパーで万引き犯が捕まった。

「そうみたいね」

──その犯人は、ここから見える山のどこかでノライの根に襲われたらしい。

「えっ、そうなの!」

──アヤカ、ここの夫婦の平和な暮らしを望んでいるでしょう。

「ええ、もちろん」

──それなら……早急に決着をつけた方がいい。

「いったい、どうやって?」

──これからアヤカを操る。

「わかった。私を好きなように操っていいわ。でも一つだけ約束して。あなたが犠牲になるようなことは絶対しないで」

──……ええ、約束する。

そこまでのことは覚えているが、その直後、アヤカの意識はプツッと途切れた。



「可南子さん」

部屋を出て階段を下りると、アヤカが呼びかけた。

その姿を見た可南子が目を見開く。

アヤカは、ここに来た時に持っていた大きなトートバッグを肩にかけていた。

「アヤカちゃん、どこに行くの?」

「可南子さん、少しの間自宅の方に戻ります。用事を済ませたら戻ってきます。ただ、戻るまでにどのくらい時間がかかるかわからないので、今日までの宿泊の精算をお願いします」

「ちょっと待って。あなたはお客さんじゃないでしょう。私たちはあなたを家族と思っているのよ」

「私もそう思っています。これからもそういう関係でいられるように、様々なしがらみを解きに行ってきます」

「必ず、帰ってきてくれるの」

「はい」

力強くアヤカは返事をした。

「そう。お金なんかいらないの。必ず帰ってきて」

可南子は繰り返し言った。

「可南子さん、いってきます」

「いってらっしゃい。気をつけて」

可南子は外に出て、アヤカの姿が見えなくなるまで、いや、見えなくなっても暫くの間見送っていた。



久しぶりの街並みの中をアヤカは歩いていた。

可南子と別れてから一言も言葉を発することなく、脇目も振らずメアリの家を目指した。途中ホームセンターに寄り買い物を済ませ、重い荷物を抱えながらメアリの家の前に立った。

三軒並んでいたはずの戸建て住宅は真ん中の家しか残っていなかった。その家の扉をアヤカはノックした。

扉が開き、美しい瞳を怪しく光らせてメアリが出てきた。

「あら、お久しぶり。ウチのコの餌になりに来たのかしら」

ニヤリと笑いながらメアリがアヤカを家の中へ招いた。

リビングで

「その辺に座って。今、美味しい紅茶をご馳走するわ」

と言いキッチンへ行こうとするメアリの手首を、アヤカが握って引き止めた。

「何、どうしたの」

珍しくメアリが驚く。

「これをあなたに」

アヤカは首にぶら下げていた小さな巾着袋を外し、メアリの首にかけた。

その途端、メアリは一瞬固まり、アヤカはその場に倒れた。

そしてメアリはゆっくり動き出し、アヤカが先ほどまで抱え持っていた大きな袋を抱えた。

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