3.5 一回目の死の後
「おい!何やってんだ!」
スライは普段の気だるげな感じからは考えられない表情と怒鳴り声をあげた。
それもそうだろう。能力が無いとはいえ、子供の頃から一緒にいた友人が目の前で手と首をはねられたのだ。
「いいんだ。この子は国王命令で殺すように言われているんだ。たまにいるんだよ。こういう異分子が。」
「異分子って、バクが何をしたんですか!こいつはただ冒険者に憧れていた子供だ!」
村長も叫ぶ。村長も子供の頃からバクを見ていた。
うるさく、生意気で、でもまっすぐなバクを孫のように思っていた。
父親のいないバクからすれば村の男連中はみんな父親のようなものだった。
悪いことすれば叱り、いいことをすれば褒める。
男連中も子供や孫のように可愛がっていた。
友人からしても同じだ。
父親がいないのにそんなこと気にもならないといった様子で、小さいころからまっすぐ冒険者を目指していたバクはいい友人だった。
「うるさいな。めんどうだな。隠して殺すんだったな。」
スライは能力が劣っていることが分かっていても飛び掛かっていった。それだけ頭に血が上っていた。
村長も同じだ。特別な能力は持っていない。ただ、スライと共にフラムベルクに向かっていった。
スライの全力切りがフラムベルクの体制を崩すも崩すだけだった。
村長もスライも殺された。
当然ステータスも経験も違いすぎる。
見物に来ていた村人たちは逃げ出した。
唯一隠れてみていた母親だけはバクの亡骸に一目散に向かう。
「全員殺せ!」
フラムベルクは同行していた騎士たちに指示を飛ばした。
騒ぎを聞きつけたギルドマスターやジムドがやってくる。
二人は状況を見て自分の目を疑った。
「そうか。君がここのギルドマスターをやっていたのか。」
「なんだ?何があった?」
「何があったって君ね。バクってガキを殺したら二人して襲い掛かってくるんだ。そりゃあ殺しちゃうよ。」
「あ!?てめぇがやったってのか!」
「そうだよ。脳筋くんにはすぐに理解できなかったみたいだね。」
背後では逃げようとした村人たちが騎士によって惨殺されていた。
「何をやっているかわかっているのか!?」
ジムドが叫ぶ。フラムベルクはヘラヘラとした様子で答える。
「何をやっているって、村全員で王国代表の僕たちに襲い掛かってきているんじゃないか。これは反逆だよ。」
「ジムド!あの騎士たちを止めろ!」
「ギルマスは!?」
「俺はこいつを殺す!」
「大丈夫なんですか!?」
「いいからいけ!」
躊躇しながらも村人を襲っている騎士たちを止めるべく駆け出す。
「武器も持っていない君に僕が殺せると?」
「殺す!」
ギルドマスターは素手でフラムベルクに向かっていく。
攻撃は凄まじいが、騎士の本業は守り。攻撃は届くことなくふさがれ続ける。
「相変わらずの馬鹿力だね。でも成長がみられないね。」
攻撃を受けながらも反撃を繰り出す。ギルドマスターの体は少しづつ血に染まっていく。
ギルドマスターには奥の手のスキルがあった。ただし、それを使えばフラムベルクを倒せても、その後に一切動けなくなってしまう。攻撃を受けながらも戦況を確認していた。
しかし、こいつを殺さないことには状況が変わらない。
スキルを発動することを決める。
そのときフラムベルクが不意に攻撃を受けずに動いた。
動いた先にはバクと傍らにいるバクの母親だった。
バクの母親に向かって剣を振り下ろす。
ギルドマスターは無意識に体をバクの母親の前に投げ出す。
何を言うでもなく一瞬でギルドマスターは殺されてしまった。
「子供と一緒に死んでくれ。」
バクの母親も殺された。
同じころ、ジムドも他の騎士を止めに動いたが、五人の騎士に囲まれ絶命していた。
すべての村人が殺された。
最後には火が放たれ村ごと消滅する。
「副団長、よろしかったのですか?」
「仕方ないだろ。村ごと反逆したんだ。やるしかなかったじゃないか。」
「はい。」
村ごと消滅したことは王国上層部にて騒ぎにもならず処理された。




