後日談 時が動き出す日
本編後のしんたろうと關鍵の話です。
少し時間が空きましたが、後日談を受信したのでこちらに。しんたろうの《非時》結局どうなったん?のアンサーです。
ネタバレ?になるので最後まで読まれた後に読んでいただけますと幸いです!
「あれ?」
「どうしたノ? 変な声出しテ」
鏡を見ながら、しんたろうは自分の目元を撫で、小さく声を上げた。
本を読んでいた關鍵はちら、と視線を向ける。
「ほらここ、シワ出来てる」
「…ホントだネ」
目元に薄っすらと入るシワを指差しながら、しんたろうは嬉しそうに笑った。
寿が行った《非時》の修復は、しんたろうの体を完全に作り変え、普通の人間と同じ細胞に戻していた。
六十代後半のしんたろうの体は、緩やかに歳を取り始めている。まだまだ見た目は二十代のままだが、歳を重ねられる事がしんたろうは嬉しかった。
奪われた時間は戻ってはこない。それでも普通の人間と同じように過ごしていけるようになった。
老いを実感するにはまだ時間がかかるが、そこまでは寿と生きていける喜びに胸が熱くなる。
「ようやく時間が進み出したよ」
「そうだネ。ボクも治して貰ったシ、最期まで付き合うヨ」
しんたろうが《非時》を打たれて間も無く、關鍵もえいじの手で《非時》を打たれ不老となっていた。
しんたろうの治療のためと、その化学者としての頭脳、何より親しくなっていたしんたろうへの嫌がらせのためだけに。
しんたろうと同じ激痛に耐え、人として死ねなくなってしまったことを知ったしんたろうは、關鍵に泣きながら謝った。
關鍵としては、しんたろうを一人にしなくて済んだので、気にしていなかったが。
「その感じだト、まだ三十年ぐらいはこのままかもネ」
「そうだなあ。ま、気長に待つよ。もう急ぐ必要もないんだからさ」
改めて微笑むしんたろうの顔を見て、關鍵もにこりと笑う。
「そういえば明日はまた日本に行くんだけど、關鍵も来るだろ? 今回は昔住んでたとこにある梅を見に行くんだ」
「……うん、ボクも行くヨ」
毎回ではないが、關鍵も日本に帰るしんたろうについてくる。自分が育った城塞砦跡より、しんたろうが育った場所の方が、關鍵にとって大事な場所になっている。
「やった! 寿に伝えてくる!」
「よろしくネ。じゃ、ボクは本読むヨ」
ウキウキしながら頷くと、しんたろうはリビングを後にする。遠ざかっていく後ろ姿を見ながら、關鍵は柔らかく微笑んだ。
──キミが光の中に戻って、色んな笑顔を浮かべるのが見たかった。
これからずっとそれは叶い続けるだろう。
「……ありがとウ。しんたろう」




