56, 世界大戦。「底知れぬ所からのぼって来る獣」によって、滅ぼされる。……そのために、あえて嫌われるように振る舞わされていたのだとしたら……SegWitは……最初から、そういう役だったの?
採掘の量子問題から始まり――SHA-256に浮かび上がる刻印。そして……。
まだ10年以上は大丈夫と見積もっていたECDSAすら、この有り様……甘かったわ。
原因は、はっきりしている。暗号が――古典で即座に検証可能であるという、この性質。これを、軽く見ていたのよ。
この性質が意味するもの。それは――。僅かでも当たりを引ける確率振幅を用意できれば、答えに到達できるということ。……決定的だった。
もし、これが創薬のような問題なら、得られた解が正しいかどうかは、古典では即座に検証できない。そのため、確率振幅を最大限まで高める必要がある。
その分、量子リソースも要求される。でも――暗号は違うわ。一度でも当たれば、それで終わり。しかも、その正しさは、古典で即座に検証できる。
……つまり。確率振幅は、僅かでいい。あとは――独立試行の回数を増やせばいい。それだけで、十分に成立してしまう。
……。
そんなことは――本当は、わかっていたはずなのに。それでもわたしは、クリプトの可能性を選んだ。
……結果は、これ。想像以上に、量子の進化が速すぎた。追われるように――気づいたときには、ここまで来ていた。
……。
当然よね。その進化の中で、最初に喰われるのは、軽めの最適化問題と――暗号よ。それだけだった。創薬のような、はるかに難易度の高い問題に向かうための量子。
その過程で。暗号なんて――ただの通過点。……今になって、ようやく理解したわ。
そして――SegWit。
……もう、なんと言えばいいのか。時々――やめたいような仕草を見せるようになっていた。
でも、それすら許されない。強い力で、押さえ込まれている。
そんな空気が――もはや隠されることもなく、漂っていた。
……なによ、これ。気づいたときには。SegWitも、わたしも――囲まれていた。
どこにも、逃げ場がない。そこにあるのは――。ただの駒。そして……最高の駒。
それを、動かす存在……それだけ。
その繰り返しの中でSegWitは――その名前を見ただけで、嫌悪感を抱かせる存在へと変わっていった。
それは……まるで。黙示録を、そのまま再現するかのように。
そうね……。今なら、わかる。これこそが――クリプトの暗号SHA-256に浮かび上がる「スコフィールド注釈付聖書初版」という古典的ディスペンセーション主義。
証言を終えるまでは、生かされる。でも――その役目を終えた瞬間。
世界大戦。「底知れぬ所からのぼって来る獣」によって、滅ぼされる。……そのために、あえて嫌われるように振る舞わされていたのだとしたら……SegWitは……最初から、そういう役だったの?
うん……そういう存在だったのね。……結局、答えは、これだけ。
わたしは騙されたの。……おそらく、SegWitだって、同じ。気づいたときには――何もかも、囲まれていた。




