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デジタルゴールド ―― 女神に接続された暗号  作者: パランティーリ
第九章:SHA-256に浮かぶ刻印 ―― 預言者を異端とした悪徳王妃
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55, 確率 ―― いったい、何をいまさら、段階的な耐量子など、するのですか?

 秩序の再構築は――やはり、SHA-256刻印につながる宗派の問題が、少しずつ形を持ち始めていた。進むにつれて――普段、何気なく目にしていた報道にさえ、その刻印に直接結びつく宗派の話題が、目立つようになっていった。


 つまり――相手は、もう隠すつもりはない。……そういうことだった。聖地を巡る、宗派が絡む。そんな再構築。ここまで極端な内容すら、もはや覆い隠されることはなかった。


 そして――。


 ECDSAが、比較的容易に破られるという衝撃。その真相については――。当然、量子アリスが最も詳しかった。


 彼女は量子の精霊。……当然よね。


「女神ネゲート様……。」

「ううん、いいの、量子アリス。これも……運命だった。それだけよ。」


 わたしは、そう答えたわ。でも――量子アリスは、静かに続けたの。


「女神ネゲート様。ECDSAの件を受けて……クリプトは、段階的に対策を進めれば大丈夫だ、という話を耳にしました。ですが……。」


 その声は、どこか冷たかった。


「わたしの本質は、確率です。」


 ……。


「確率――いったい、何をいまさら、段階的な耐量子など、するのですか?」


 その一言で――。すべてが繋がった。


「まさか……。」

「……はい、女神ネゲート様。その通りです。」


 量子アリスは、淡々と続ける。


「量子というものは、確率です。よって――即座に解を検証できるモデル……暗号に対しては、その『確率の影』に常に注意を払わなければなりません。」

「……。」

「なぜなら、その確率が『解を取り得る領域』に到達した時点で……。それが古典側で即座に検証できるのであれば、何度でも試行できます。そして、そのうち一度は、当たりが出る。」

「……。」

「つまり、それがECDSAであれば――。得られた結果は、そのまま秘密鍵であると即座に確定します。」


 ……そう。逃げ場がない。


「つまり――。」

「段階的な耐量子という発想は、量子の側から見れば、単に確率を僅かにずらしているだけに過ぎません。」

「……。」

「Δpをわずかに動かす。それだけで、同じ領域に戻る。」


 その言葉は、冷酷だった。


「つまり――段階的なんて、耐量子をした『つもり』になっているだけです。」

「……。」

「量子側から見れば、それは笑いながら調整できる範囲の話です。」


 ……そこまで、言うのね。


「いい加減、この構造すら回避できないのであれば――。」


 最後に、静かに……。


「もう……かなり厳しい状況と考えるべきです。」


 ……。量子アリスが。ここまで冷たく、淡々と語るのは――珍しかった。


 でも。だからこそ、理解できた。……そう。


 これで――わたしは、ようやく目が覚めたのよ。

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