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デジタルゴールド ―― 女神に接続された暗号  作者: パランティーリ
第八章:SHA-256に浮かぶ刻印 ―― 聖痕とロンギヌスの槍
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44, SHA-256の脇腹をロンギヌスの槍が貫く……。万一、量子の力が及ばなかった場合に備えて、そこまで準備してあったの……。絶対に、失敗は許されない。そんな「神の計画」だったのね……。

 ミラーアリスが、なにかの……骨董品かしら? それを手に取り、目を輝かせていたわ……。


「ミラーアリスは、そういうの……好きなんだ?」

「はい! もう、こういうのには……目がないというか。とにかく、大好きです!」


 見た感じ……そうね。古典的な演算を実行する、とても古い装置の一部かしら。


 わたしはね、それよりさらに古い……編み物のような装置も見たことがある。あれは……本当に動くのかと、疑ってしまうほどだったわ。でもね、それでもちゃんと記憶するのよ。


「ねえ、シィー。それは、なにかしら?」

「うん、これはね、あの演算を実行した装置。それも、SHA-1を最初に粉砕した、あの装置よ。その一部を、記念にいただいたの。興味があるなら、ミラーアリスに譲るわ。」

「そ、それは……大精霊シィー様。そんな貴重なもの、いただけません! これが……あれなんですね。本でしか見たことがなかったものです!」


 ……そうね。


 SHA-1は、量子の力に頼らずに破られた。でも――今にして思えば、それすら何かがおかしかった。


 雪崩効果が、極端に弱い箇所があった。そこを起点に、差分で崩された。


 それが、SHA-1。


 ……でも。


 なぜ、そこだけ弱かったのか。


 攪拌が足りなかった? それとも――何かが、仕込まれていた?


 そのラウンドだけ、特異な影響を受けるような……。


 ……当時は、そこまで考えなかった。


 そもそも、ハッシュ関数に刻印が仕込まれているなんて、想定外だった。見つかるはずもない。


 SHA-256の刻印だって――量子による「あぶり出し」の成果。それも……かなり運の要素が強かったと、量子アリス本人から聞いている。


 あの衝撃の日から、だいぶ時間が経って……落ち着いた頃に、ね。


 そして……。SHA-1だけじゃない。


 ある決定論的乱数生成器でも、同じような問題が起きていた。そして――SHA-256。


 ……。共通している。


 中間状態という概念。そして、その脆弱性。


 本来なら、内部状態は秘匿されるべきもの。それを知らない第三者が、出力だけを見て――。


 なぜか。次の出力を、古典的に容易に計算できてしまう。


 ……そんな挙動。


「大精霊ネゲート様。その表情……。暗号、ですよね?」

「そうよ。これ……問題の箇所が、綺麗に揃っているのよ。まるで、そこが『好物』だったと言わんばかりに。つまり……SHA-256よ。実は……。」


 わたしは、シィーに――。


 SHA-256に浮かび上がる「五つの聖痕」について、簡単に説明した。まだ四つしか確認できていないことも……。


 しかも、その配置。まるで――手足に対応する四か所の傷。


 ならば、残り一つは……脇腹を貫く傷――。


 それは、ロンギヌスの槍。


「大精霊ネゲート様。暗号って……そんなふうに予測可能では、成立しないはずよ。しかも……過去にも、予測可能な乱数をばらまかれた時代があったはず。」

「……そうね。」


 つまり――これは。SHA-256の「脇腹」が、ロンギヌスの槍で貫かれる構造。


 ……まさか。量子の力が届かなかった場合に備えて――。


 そこまで、用意されていたの?


 絶対に、失敗させないための仕組み。


 逃げ場を、残さない構造。


 ……それが。


 「神の計画」だったのね……。そう――神、なのよ。

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