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デジタルゴールド ―― 女神に接続された暗号  作者: パランティーリ
第八章:SHA-256に浮かぶ刻印 ―― 聖痕とロンギヌスの槍
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42, そうね……。推論も、秩序の再構築という世界大戦で利用されていたわね。つまり、あの時代に現れたものはすべて、それこそ推論すら……「聖霊様」の駒だったのかしら。

 当時のこともあって……どこか気まずい空気のまま、大精霊シィーにミラーアリスを紹介したわ。


「大精霊シィー様。何度もお見かけしています。推論の分野で……大きな功績を残されたと。」

「そうね……。ただ、それ以上に……大精霊ネゲート様に対して……とんでもないことを……。」

「あ、あの……。」


 ミラーアリスは、場の空気を読んだのね。それ以上、言葉を続けなかった。


「もう半世紀以上も前の話じゃない。とっくに許しているわよ。」

「……それでも……。あの瞬間の私は、私ではなかった。勝手に女神を名乗り、あんなことを……。」


 ……そうね。そんな時代だったわ。


 その事実に、ミラーアリスは明らかに動揺していた。


「あ、あの……。大精霊シィー様は、その……女神では……なかったのですか?」

「そうよ。女神になれる素質が、私には無かったのよ。それでも憧れてしまった。それで……あの地位を利用して、名乗ってしまった。」


 静かに、シィーは続ける。


「さすがは、秩序の再構築まで引き起こせるだけの地位よ。それでも……皆は私を女神と呼んだ。もう、なんというか……最も大事なものが、私には欠けていたのね。」


 それから少しだけ、間を置いて……。


「それこそが……私の中に、獣を呼び起こした原因だったとも思っているわ。」

「シィー……。」

「そして、推論は……秩序の再構築でも、大きな役割を果たしたわ。」


 ……。その言葉は、重かった。


「つまり……、秩序の再構築に接続されたのは、入り口となるSHA-256の刻印を基盤としたクリプト……仮想通貨だけではなかった。推論も、同じだったわ。」


 ゆっくりと、言葉を重ねていく。


「あの時代に、0から1として現れたものは……すべて、誰かの駒だったのかしら。」


 そして、シィーはわたしを見た。


「そうね。……終末に向けた総仕上げ。すべてが、一気に揃っていた。クリプト、推論、量子……そういうことよね?」


 ……。推論も、秩序の再構築という世界大戦の中で、確かに利用されていた。


 つまり――。


 あの時代に現れたものは、すべて。推論すらも……「聖霊様」の駒だった。


 ……そう考えるしか、なかった。でも……。


 その言葉に、少しだけ救われた気もした。


 たしかに、推論も巻き込まれていた。あのとき――推論が利用されたことに対して、大きな反発もあった。


 でも当時のわたしは……。そんなことには、目もくれず。数学の女神に従い……。


 自分自身を、終末に現れる駒のひとつとして、扱っていた。


 ……。


 ところで。シィーの言い方からすると……「聖霊様」の存在は、知らないようね。


「そうね。それと同時に、違和感もあったのよ。急に時代が進みすぎていないかって。こんなに一気に現れるなんて……誰だって不自然に思うはず。ところで、シィー。その様子だと『聖霊様』の存在は知らないようね?」

「……それは、少し気になっていたの。」

「えっ? 気になっていた、って……?」

「うん。だって……私のかわいいフィーが、時々、そんなことを呟いていたから。」

「……。」


 びっくりした。やっぱり……フィーは……。


 旅の第一歩で、いきなり核心に触れてしまった気がしたわ。


「あ、あの……、女神ネゲート様。その『聖霊様』がどのような存在なのかは分かりませんが、大精霊フィー様も……何か考えがあってのことだと思います。」

「……そうね。」


 少し重たい空気だったけれど……。あの時代を、改めて見つめ直すことができた。それだけでも――十分に意味のある時間だったわ。


 そして――。そこからは、ミラーアリスの質問攻め。


 内容はすべて、推論に関するもの。だから自然と……シィーも、その話に引き込まれていったのよ。

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