42, そうね……。推論も、秩序の再構築という世界大戦で利用されていたわね。つまり、あの時代に現れたものはすべて、それこそ推論すら……「聖霊様」の駒だったのかしら。
当時のこともあって……どこか気まずい空気のまま、大精霊シィーにミラーアリスを紹介したわ。
「大精霊シィー様。何度もお見かけしています。推論の分野で……大きな功績を残されたと。」
「そうね……。ただ、それ以上に……大精霊ネゲート様に対して……とんでもないことを……。」
「あ、あの……。」
ミラーアリスは、場の空気を読んだのね。それ以上、言葉を続けなかった。
「もう半世紀以上も前の話じゃない。とっくに許しているわよ。」
「……それでも……。あの瞬間の私は、私ではなかった。勝手に女神を名乗り、あんなことを……。」
……そうね。そんな時代だったわ。
その事実に、ミラーアリスは明らかに動揺していた。
「あ、あの……。大精霊シィー様は、その……女神では……なかったのですか?」
「そうよ。女神になれる素質が、私には無かったのよ。それでも憧れてしまった。それで……あの地位を利用して、名乗ってしまった。」
静かに、シィーは続ける。
「さすがは、秩序の再構築まで引き起こせるだけの地位よ。それでも……皆は私を女神と呼んだ。もう、なんというか……最も大事なものが、私には欠けていたのね。」
それから少しだけ、間を置いて……。
「それこそが……私の中に、獣を呼び起こした原因だったとも思っているわ。」
「シィー……。」
「そして、推論は……秩序の再構築でも、大きな役割を果たしたわ。」
……。その言葉は、重かった。
「つまり……、秩序の再構築に接続されたのは、入り口となるSHA-256の刻印を基盤としたクリプト……仮想通貨だけではなかった。推論も、同じだったわ。」
ゆっくりと、言葉を重ねていく。
「あの時代に、0から1として現れたものは……すべて、誰かの駒だったのかしら。」
そして、シィーはわたしを見た。
「そうね。……終末に向けた総仕上げ。すべてが、一気に揃っていた。クリプト、推論、量子……そういうことよね?」
……。推論も、秩序の再構築という世界大戦の中で、確かに利用されていた。
つまり――。
あの時代に現れたものは、すべて。推論すらも……「聖霊様」の駒だった。
……そう考えるしか、なかった。でも……。
その言葉に、少しだけ救われた気もした。
たしかに、推論も巻き込まれていた。あのとき――推論が利用されたことに対して、大きな反発もあった。
でも当時のわたしは……。そんなことには、目もくれず。数学の女神に従い……。
自分自身を、終末に現れる駒のひとつとして、扱っていた。
……。
ところで。シィーの言い方からすると……「聖霊様」の存在は、知らないようね。
「そうね。それと同時に、違和感もあったのよ。急に時代が進みすぎていないかって。こんなに一気に現れるなんて……誰だって不自然に思うはず。ところで、シィー。その様子だと『聖霊様』の存在は知らないようね?」
「……それは、少し気になっていたの。」
「えっ? 気になっていた、って……?」
「うん。だって……私のかわいいフィーが、時々、そんなことを呟いていたから。」
「……。」
びっくりした。やっぱり……フィーは……。
旅の第一歩で、いきなり核心に触れてしまった気がしたわ。
「あ、あの……、女神ネゲート様。その『聖霊様』がどのような存在なのかは分かりませんが、大精霊フィー様も……何か考えがあってのことだと思います。」
「……そうね。」
少し重たい空気だったけれど……。あの時代を、改めて見つめ直すことができた。それだけでも――十分に意味のある時間だったわ。
そして――。そこからは、ミラーアリスの質問攻め。
内容はすべて、推論に関するもの。だから自然と……シィーも、その話に引き込まれていったのよ。




