39, ロンギヌスの槍 ―― SHA-256に浮かび上がる「五つの聖痕」のうちの……一つだった。
それから、わたしは……またひとつ、驚くべき事実を知らされることになる。
このSHA-256に浮かび上がる刻印――その四隅を見てほしい、と言われたのよ。四隅……? そこに、何かあるというの……?
そう思いながら、SHA-256刻印の構造をなぞっていくと……気づいたわ。
この刻印構造を浮かび上がらせるには、まず四隅から顕在化させる必要があった。そして、その過程で――まるで支点を打ち込むように、四隅へ「傷」を与える挙動が現れる。
ええ……実際に見てしまうと、それは「そうとしか言えない」変化だった。
……。
どうやら、それを――「聖痕」と、解釈するらしい。フィーが、ぽつりとそう呟いた。
……やっぱり。ううん……間違いなく、フィーは「聖霊様」の正体に触れている。
でも――そこには踏み込まない。それは、約束だから。
「創造主の子が十字架にかけられたとき、手足で四か所の傷……それが聖痕、なのです。」
「……、これ、一応、暗号の話よね? ハッシュ関数の話、よね?」
「……、はい、なのです。」
……。
いったい、なんなのよ……。こんな時代になってまで……未だに、これなの……?
「ところで、フィー。聖書には『五つの聖痕』ってあるけど……でも、今の話だと四か所なのかしら?」
「あ、あの……。あと一つは……『ロンギヌスの槍』で、脇腹を貫かれるのです。」
「……、そ、そうなんだ……。でも、その最後の傷は、傷というより……裂ける、破れる、という感じよね。」
「……。はい、そうなるのです……。」
ロンギヌスの槍――。
また……妙なものが出てきた。スコフィールド注釈付聖書の初版を取り込んだ、だけはあるわ。
でも、わたしはここで……ひとつの可能性に気づいてしまう。
これを含めて考えるなら――SHA-256に浮かび上がる「五つの聖痕」。
そういう構造だったのだとしたら……。
四隅以外に――もう一箇所。SHA-256に、ロンギヌスの槍が貫く場所。そうよ、そんな歪みが存在することになるわ。
……ちょっと待って。それって……。
念のため、確認してみる……。
「SHA-256に浮かび上がる『五つの聖痕』という考え……だったのかしら? つまり……四隅以外に、ロンギヌスの槍が貫く場所が、あったの?」
「……。そ、それは……。」
……そこで、フィーは言葉を詰まらせた。
どうやら、ここから先は――。
自分の目で、確かめるしかない。
これ以上は無理しなくていいと伝えると、フィーは小さく安堵の表情を浮かべた。
……その表情が。
すべてを、物語っていたわ。




