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デジタルゴールド ―― 女神に接続された暗号  作者: パランティーリ
第六章:SHA-256に浮かぶ刻印 ―― 異教徒の存在
33/94

32, ねえ。スコフィールド注釈付聖書には「ジェネシス版」と「ソフトフォーク版」の二種類があって、ジェネシス版が……強烈なのね。それで、SHA-256に刻まれていたのは……どっち、なの?

 ……。書物の整頓を終える。


 途中、とんでもない書物と出会ってしまったけれど……それでも、整頓はきちんと終わらせたわ。


 余計なことは、一切考えない。ただ、それだけに集中して……ミラーアリスと一緒に、黙々と進めたのよ。もちろん、フィーも……。


「……、ありがとう、なのです。」

「なによ。別に……もう、過ぎた話よ。」

「……、でも……。」

「気にしてなんかないわよ。そもそも、抱えていた違和感は……ずっと前からあったのよ。だからほんと、気にしないで……。そう、こんなのは過ぎた話。そういうことにしましょう。今まで通りに、ね?」


 落ち込むフィーを、なんとか持ち上げる。……でも。


 フィーはあれからずっと、申し訳なさそうな表情を浮かべたまま。もともとほとんど無表情なのに……その僅かな揺らぎが、わたしの内側に触れてくる。


 あの、儚くて……満たされない感情を、そのままぶつけてくるように。


 それから……。ミラーアリスの気の利いた取り計らいもあって、場の空気はようやく元に戻りつつあった。


 フィーも、少しずつ……元の表情に戻ってきた。


 ……はずだった。


「ネゲート。わたしにできることは、なんでもするのです。なんでも……。せめて、それが……、わたしの罪滅ぼしでもあるのです。」

「……。大丈夫よ。傀儡の件、とかでしょう。それは仕方がないのよ。それだって、その時点で、それが最善だと判断しての行動だった。フィーは、間違いなくそうするわ。だから、本当に大丈夫。うまくやった……そうよね?」

「……。そう……解釈してくれるのなら、少しは救われるのかもしれないのです。」


 ……。明らかに、いつものフィーのペースではない。


 それだけ……数学の女神の、あの書物は――異様だった。


 そして……それは、そのまま手渡されて……今も、この手の中にある。


 そう。


『スコフィールド注釈付聖書 ―― SHA-256に浮かび上がる刻印の最下層に存在』


 フィーは、その聖書について……ついに、語り始めたわ。


「ネゲート。この書物が示すその聖書について……よく聞いて欲しいのです。」

「うん……。これは、何かしら?」


 ……本当は、知りたくない。こんなの……。


 でも、知るべき。フィーだって、勇気を振り絞って……ここまで来たのだから。


「はい……、なのです。それで……。」


 それからフィーは、スコフィールド注釈付聖書には二種類が存在すると……わたしに伝えてきた。


 ……ええ、そう。そこで、わたしは話を遮った。


 だって……だって……。


「ねえ。スコフィールド注釈付聖書には『ジェネシス版』と『ソフトフォーク版』の二種類があって、ジェネシス版が……強烈なのね。それで、SHA-256に刻まれていたのは……どっち、なの?」


 ジェネシス版は、まさに初版。その内容は、ストレートで……鋭く、容赦がない。


 そして、それを和らげたものが……改訂されたソフトフォーク版。


 内容も気になる。でも、それよりも――


 そう……よ。


 SHA-256に刻まれていたのは……どっちなの?


 お願い……。せめて、まだ柔らかい……ソフトフォーク版であってほしい。


 心の中で、そう強く願っていた。


 そして……そこから。


 SHA-256に刻まれていたスコフィールド注釈付聖書の詳細が――ゆっくりと、明かされていく。

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