100, もう、クリプト……仮想通貨は、秘密でも、正体不明でもないんだよ。わたしは、ここにいるよ。
それから――パランティーリの「主導権」。
その仕組みを知って……わたしは、本当に驚いたわ。
各地へ分散化されているパランティーリ。そこに映し出される「現在」。
その主導権は――最も強い観測者によって決まる。
……そういう構造だったのね。
そして――その「観測者」を、「計算量」へ置き換えたもの。
それこそが――サトシのブロックチェーン。
そういうことだったのよ。
1ゼタの神殿。かつて――そんな膨大な計算量によって、クリプトの本流が定められていた。最も高い計算量。
ただ、それだけを指標にして。それを――合意形成へ利用していた。
つまり――最も計算量の高いチェーンこそが、主導権を握る。
そういう仕組みだったわ。……。
そして――パランティーリの構造を知れば知るほど、わたしは恐ろしくなっていった。
本当に――その仕組みを「数学」へ置き換えたものが、クリプトを稼働させる「ブロックチェーン」だったなんて。
「わかってきた? もう、クリプト……仮想通貨は、秘密でも、正体不明でもないんだよ。わたしは、ここにいるよ。」
「……。その仕組み、『観測者』ではダメだった。それで……『計算量』を選んだのね?」
「うん、そうだよ。観測者の精神力で本流を定めてしまうと――本当に恐ろしい事態へ発展するんだよ。」
「恐ろしい……事態……。」
「そうだよ。同時に映し出された真実。それを、最も強い観測者の力によって――別の真実へ『挿げ替え』できてしまうんだよ。」
……。
「それにより、その誤った真実を解釈させられた者は――簡単に、間違った方向へ導かれてしまう。」
「それって……。」
「そうそう。観測者なんて、結局は……そういう存在だったんだよ。」
数学の女神は、静かに告げた。
「そんな概念を、少しでも入れてしまえば――確実に破綻する。そこへ、入り込む余地すら存在しない、『あの計算』を選んだんだよ。」
「……。」
……そう。だからこそ――計算量。
観測者ではなく。意思でもなく。感情でもなく。
ただ、計算よ。
「でもでも――。」
数学の女神は、少しだけ困ったように笑った。
「予想外の存在が送り込まれてきて、びっくりだったよね。」
……。
「まさに、パランティーリと同じ轍を踏みかねない状況へ追い込んだ――『あれ』だよ。」
そして――。
「ラスボスだよ。」
……。それは、間違いなく。
量子。
パランティーリは――観測者という概念によって、崩壊しかけた。
だから、ブロックチェーンは……そこを「計算量」へ置き換えることで、対抗した。
でも――その計算量そのものを脅かす存在が、きちんと送り込まれていた。
……そういうことだったのね。
それが――量子。古典とは比較にならない、圧倒的な力。古典では到底扱いきれないアルゴリズム。
そんなものを扱うのだから――当然だった。
……でも。その量子ですら――あの哲学によって、うまく取り込んでいった。
ええ……そうよ。
結局――それを、わたしは任されていた。
……そういうこと、だったのよね?




