第88話『Sense of beauty』意外な一面
ランドルフの邸宅にウォーレンファミリーを招き、ホームパーティーが始まった。
一足先に到着した司と三人の子供たちは、ETとの同席で盛り上がりながら賑やかな時を楽しむ。
食事を済ませた子供たちがまた玲音のもとにやって来て、ETとともにソファーに引っ張っていった。
「あはは! 玲音、モテモテよね?!」
「ホント、妬けるよなぁ」
まだまだ遊び足らない子供達が今度はプールに向かって走り出し、それを機に大人たちもグラスとオードブルを片手にプールサイドへ移動した。
「あら、こっちのテーブルウェアもうちのブランドで揃えてくれてるじゃない? なんか気を遣わせちゃったかしら?」
玲音は首を横に振る。
「いや、このシリーズはもともと俺の好みだからさ」
「そうなの? ありがとう。それにしても、素敵なテーブルコーディネートよね?」
司はアイビーとフロリダローズをいけてあるピルスナーグラスを目の高さまで持ち上げる。
「お宅のメイドには、インテリアコーディネーターがいるとか?」
ジェンミが隣に座る玲音の肩に手を置きながら微笑む。
「これは全部レオのプロデュースだよ! 因みにダイニングテーブルも、ボクとアリサが調理してる間にレオが一人でセットしたんだ」
司は驚いた表情で玲音を仰いだ。
「そうなの?!」
「ああ、まぁ……」
「そう……玲音ってこんなに繊細なセンスの持ち主だったのね……」
ジェンミがクスッと笑う。
「ツカサ、すっごく意外だって顔してる!」
「え?!」
玲音も頷きながら訝しい視線を向けた。
「そうだよなぁ? " こんな無骨な男がそんな繊細なことなんて出来るはずない " って目つきだったし?」
「ち、違うわよ! 単に感心しただけで……」
「ふふふ。司はウソをつけないタイプだもんね?」
笑いながらそう言った有紗に、全員の視線が瞬時に集まる。
「はぁ? お前が言うか?!」
呆れ顔の玲音に続いて、司も抗議の視線を向けた。
「そうよ! 有紗にだけは言われたくないけどね!」
「え?」
キョトンとしながら首をかしげる有紗に、ジェンミは微笑んだ。
「ははは。ボクの記憶が正しければ、つい数時間前にアリサも同じような反応してたはずだけど?! ちがったっけ?」
「いいや、そうだったよなぁ?」
そう言って玲音に睨まれ、有紗は身を縮める。
「あ……そう……かも?」
有紗の様子に、三人は一斉に吹き出した。
「あはははは」
有紗はバツが悪そうに立ち上がる。
「もう笑わないでよ! 私の大好物が売れちゃったから、追加を取ってくる!」
頬を膨らませながら、駆け足で室内に向かう有紗の後ろ姿に、また皆が笑った。
「あはは」
「ふっ。ったく、小学生かよ」
「今に始まったことじゃないけどね。私もあの子を見てたら、娘を持ったような気持ちになることがしょっちゅうあるわ」
ジェンミが納得したように頷く。
「確かにツカサはアリサのママみたいだもんね。それにしてもアリサって、ホント " フムス " が好きだよね? アムトラックの中でも、食いしん坊みたいに頬張っちゃってさ」
「え……そうなの?」
司が片眉を上げる。
「あの子……その時、どんな話をしてた?」
その声色に妙な緊張感を感じた玲音が、チラッと司を見た。
ジェンミは記憶を探るように空を見上げて話す。
「ああ……確か、ギリシャに行った時にフムスに出会ったって言ってたよ。まだ編集長をやる前だとも、言ってたなぁ……で、その時は " 前の編集長 " ? その人と一緒に、ヨーロッパを回ったって」
「え……そんな話まで……?」
ジェンミは司の様子をうかがうように、ゆっくりと視線を向けた。
「その時ってさ……ツカサも同行したの?」
「え? い、いえ……私は」
「カメラマンは一緒じゃなかったって、アリサは言ってたけど」
「ああ……そうだったかも」
あからさまにトーンダウンした司の様子を、玲音とジェンミは不審に感じた。
ジェンミが切り出す。
「ねぇツカサ……その " 前の編集長 " ってさ……まさか、オトコ?!」
第88話『Sense of beauty』意外な一面 - 終 -




