第87話『Welcome to our house! 』賑やかな訪問者たち
朝からホームパーティの準備をしていた三人が一段落つけたところで、玄関チャイムの音がした。
「Nice timing!」
ジェンミの言葉に、三人は玄関に向かう。
「司! いらっしゃい!」
有紗は飛び付くように親友に抱きついた。
「なんか数年ぶりの再会みたいになってるけどね?」
呆れるジェンミに視線を合わせ、司はにこやかな表情で有紗の背中をトントンと叩く。
「お招き、ありがとう」
微笑むジェンミの横で突っ立っている玲音に向かって、司の後ろから " 小さな軍団 " が飛び出して、玲音の足に絡み付いた。
「おおっ!」
驚いた声をあげた玲音は、視線を下げるとフッと表情を緩める。
「よく来たな!」
そう言って一番末っ子のライアンをひょいと抱き上げ、二人の兄に優しく話しかけた。
「ロイ! ジェイク! 新しい友達を紹介してやろう。さぁ、こっちだ」
飛び跳ねるように玲音についていく子供たちを見つめながら、司は首をかしげる。
「ん? ねぇ、また同居人が増えたとか? 新しい友達って……?」
有紗とジェンミが顔を見合わせるのと同時に、部屋の奥から子供たちの歓声が聞こえてきた。
「え? 誰なのよ!?」
半信半疑でリビングに進む司の目に、ソファーではしゃぐ子供たちの姿が目に入る。
その中に混じって、一際 " 異形な後頭部 " があちら向きに座っていることに首をかしげる司に、子供たちがその両腕をもって担ぎ上げ、こちらを向かせた。
「わっ! ウソでしょう?! びっくりした……あはは! やだ、どうしてここに " E.T " が?! こんなに大きなのを生で見たのは初めてよ、一体どうしたの?! あははは」
司の笑い声に気付いた玲音がお手上げのポーズを見せ、ジェンミは得意そうに胸を叩く。
「なるほど、これはジェンミさんの仕業なのね……フフフ」
「ちょっと! " 仕業 " って言い方はひどいんじゃない?! ハートフルなお土産じゃん? ボクとアリサだけで楽しんじゃったからさ、レオにもディズニー・ワールドを味わってほしくてね」
「ふふっ。ジェンミさんって、ホントに面白いのね?」
リビングは一気に賑やかな雰囲気となり、ソファーでじゃれあっている子供たちに皆が目を細めた。
「見て、有紗。うちの子たち、玲音にすっかり懐いて、あんなにからみついちゃってるわ」
司の言葉に、有紗は玲音に視線を向ける。
「ふーん……あんな顔もするんだ」
司は有紗を横目でとらえた。
子供たちの目線まで体を屈め、小さな三男をETに近付けておどける玲音の表情は柔らかく、今まで見たこともないほど優しさに溢れていて、有紗は一瞬言葉を失う。
「へぇ……有紗も初めて見たって感じ?」
「へっ?!」
「彼、普段はああじゃないもんねぇ? いつもはちょっと気取って無愛想に振る舞ってるけど……そんな鎧が剥がれちゃってるじゃない? ふふっ、なるほど。彼、なかなかイイオトコよね?」
隣で聞いていたジェンミが、あからさまに拗ねた表情を作って見せた。
「チェッ! ツカサはレオみたいな男がタイプなのかぁ……悔しいなぁ。ボクだって、そう簡単には負けないんだけど?」
「あら、ジェンミさんももちろんイイオトコよ! でもまぁ……ウチの旦那には、かなわないけどね?」
司はバチッとウィンクをして見せる。
「ふふふ。ごちそうさまぁ!」
冷やかす有紗の隣で、ジェンミはお手上げのポーズを見せた。
「いや……さすがにウォーレン氏には勝ち目がないよ。ボクにとっても憧れの男性像そのものだから」
司は満足そうに微笑みながら、子供たちに声をかける。
「ほら! ごちそうが並んでるわよ。そこのMr.Extra-|Terrestrial《T》も連れて、こっちのテーブルに来なさい!」
次男のロイが真面目顔で自分よりも大きなETをおぶって歩いてくる姿に、皆が笑いを噛み殺しながら、華やかな食事がスタートした。
「ところでさぁツカサ、" 究極のイイオトコ " は、いつ来るの?」
ジェンミの発言に玲音は首をかしげる。
「ん? 究極のイイオトコ?」
「そう! ボクたちは足元にも及ばないほどのね!」
「ふふふ。そんなに拗ねないでよ。ジェンミさんも充分過ぎるくらいイイオトコだって!」
司になだめられたジェンミがキッと玲音を睨み付けた。
「絶対にレオには " 二位の座 " は譲らないからね!」
「は? 話が全然見えない」
「あははは」
有紗に笑われながら、玲音はまた首をかしげる。
「ねぇ有紗、旦那が来たらとりあえず先に商談よね? パームビーチ一帯の『ファッション・フェスティバル』でウチのブランドと|玲音のおばさまのブランド《『ランドルフ』》とが共演するらしいじゃない?」
ジェンミが目を輝かせて、司に向き直った。
「そうなんだよ!!」
玲音が水を差す。
「お前がでしゃばるなよ!!」
「どうしてさ!? ボクはクライアントとも出店ブランドの広報とも、ジョギングして、パワーモーニングも一緒にしてるんだよ!」
「あのな! 一緒じゃねぇだろ!? あれは同席してるって言わねぇんだよ!」
「ちゃんと聞いてるじゃん!」
「それは " 聞き耳をたててる " って言うんだ! 盗み聞きだろうが!」
「人聞きが悪いなぁ! ボクはちゃんと報告する業務を担ってるだけだろ? もはやブレーンに等しいじゃん!」
「はぁ? 思い込みが過ぎるんだよ!」
「はぁ? どこがだよ?!」
玲音とジェンミの言い合いを、有紗と司は愉快そうに聞いていた。
「ふふっ……いつもこうなの?」
「ふふっ、まぁ……ねぇ」
「そう。ウチも賑やかだけど、こっちも結構楽しそうね?」
そう言いながら、司は等身大のETに視線を向け、また吹き出すように笑いながら二人に話しかける。
「ふふっ、それで? この子の " 飼い主 " は誰なの?」
ジェンミがくるりと振り向いた。
「当然、レオだよ! すっかり気に入ったみたいでさ、毎晩ベッドのお供としてちゃんと部屋に連れて上がってるんだよ」
「おい! その言い方はやめろっつーの! お前らが " 連れて行けだ " " 連れて来いだ "とうるさいから、そうしてるだけだろうが!」
「とか言ってさ、ホントはすごく気に入ってるんだろ?!」
「んなわけないだろ! ガキじゃあるまいし!」
司は、玲音とジェンミの二人と、すぐ近くで遊ぶ息子たちを見比べるように眺めながら、愉快そうにまた笑う。
「相変わらず仲がいいのね? まるでウチの子たちを見てるみたいな気持ちになるわ」
「うふふ。私には " ウチの飼い猫 " にも見えるけどね?」
有紗のその言葉に、司は目を輝かせた。
「あ! わかる!」
「おいっ!」
玲音に睨まれた二人は同時に肩をすくめて目を見合わせる。
「ふふふ」
「ふふふ」
食事を済ませた子供たちが、また玲音のもとにやって来てETとともにソファーに引っ張って行った。
「あははっ、また始まったわ! ねぇ有紗、この家は退屈しないわね?」
「ホント! あははは」
「あははは」
第87話『Welcome to our house! 』賑やかな訪問者たち - 終 -




