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『Ray of sunshine』レイ オブ サンシャイン - Stunning sky in Florida - 突然の御曹司との生活……?! 過去を紐解きフロリダの空の下で輝くサクセスストーリー  作者: 彩川カオルコ


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第73話『When Snow White Closed Her Eyes』魔女の林檎

『マジック・キングダム』の花火の最中、大勢の観客が歓声を上げる中、有紗は突然、苦痛に表情を(ゆが)め、胸を押さえてその場に座り込んだ。


「アリサ! こんなところでしゃがんだら危ない!」


ジェンミがとっさにその身体(からだ)を支え、人混みから有紗を連れ出す。

朦朧(もうろう)とした状態の有紗をベンチに降ろし、気を失ったかのように意識の薄い彼女の肩を抱いて支えながら横に座ったジェンミは、しばらく茫然(ぼうぜん)としながら夜風に吹かれていた。


――いったい、どうしたっていうんだ……アリサ


すぐとなりにある濡れた頬をそっとハンカチで押さえる。

目を閉じて力なくもたれ掛かる有紗を見つめながら、その表情の移り変わりを思い起こすと、ジェンミの胸の奥で、混乱が渦を巻きはじめた。


彼女を腕の中に抱いた瞬間、受け入れられたのだと幸福感に満ちたが、それは一瞬にして崩れ落ちた。

あの悲壮感溢れる有紗の表情は、まるで絶望を見たかのようで、それが頭から離れない。


――" その顔で " とは……どういう……?

   あれは、何を拒んだ言葉だったんだ……?


ふと、初めてあのランドルフの家で対面した日のことを思い出した。

こっちを向いた有紗が、瞬時に凍りついた表情に変わったのを見て、最初はただの人見知りだと思っていた。

しかし、彼女の誠実で社交的な人となりを知るにつれて、あの初対面の態度が腑に落ちないと感じていた。

そして気丈で意地っ張りな彼女が、ここへ来てからは何度も涙を見せるほど感情が揺らいでいる。


――この……ボクの顔になにか……


「う……」

有紗が声を発した。


「アリサ!」


「……あ、私……どうして?」


ジェンミは有紗の肩から腕を下ろす。


「ああ……ほら、すごい人混みだったからさ、酸欠(さんけつ)みたいに少し呼吸が乱れたのかもしれないね。大丈夫? 気分はどう?」


「ん……フラフラするけど気分は悪くないわ」


「まぁ、かなりワインを飲んじゃったからね」


「ごめん……」


「いいって。それより、ほら」

ジェンミは有紗の肩を支えたまま空を指差す。


「折角だから観ていこうよ。ここからでも花火は充分きれいだからさ?」


「……ホントね」


二人はしばらくそのまま空を見上げて静かに過ごし、ジェンミは有紗が落ち着くのを見計らって、混雑を避けるために少し早く切り上げて有紗を誘導した。

ふらつきが取れない有紗の身体(からだ)を支えながら、ゲートをあとにした二人はタクシーに乗り込む。

車が走り出したとたん、ジェンミの肩に乗った有紗の頭が徐々に重くなるのを感じた。

ジェンミにもたれ掛かったまま眠り始めた有紗は、ホテルに到着しても目覚めなかった。



「よいしょっ……と!」


有紗を抱き上げたまま部屋にたどり着いたジェンミは、リビングのソファーに一旦その身体を下ろす。


「ふぅ……」


自分もどかっと座り込み、しばしそのままたたずんだ。


――ふふっ、なるほど。これがレオの言う " 死体状態 " ってヤツね?


ふと窓に目をやるといびつな表情で笑っている自分の顔が映っていて、慌てて目を背ける。


(かたわ)らでスヤスヤと寝息をたて始めた有紗の額にかかる髪を払いながら、そっと頬に手を添える。

玲音(レオ)の前だと簡単に寝落ちしていた有紗は、自分とはこれまで何度一緒に飲もうとも眠りに落ちなかった。

そんな彼女が今こうして無防備に自分の(そば)で静かに寝息をたてているのが不思議に思える。

更に、それに喜びを感じる自分をもまた、妙だと思った。


――ホンキ……なのか? ボクが?!


花火を前に、彼女を抱き締めたときの感情が蘇る。


――いや、あれは……単に雰囲気に呑まれてのことだろう?


だんだん胸の奥に、痛みに似た熱い思いが込み上げてくる。


――いや……ダメだ。だってボクは……


不意に、テーブルに置いたスマートフォンが振動した。

頭の中に思い起こしていた情景が瞬時にかき消され、ジェンミは眉をひそめる。

画面を確認すると、そこには玲音の名前があった。

ジェンミはちらっと有紗を確認する。

そしてソファーから上目遣いに月を見上ると、一人声を上げて呟いた。


「さぁ、レオ……どうする?」


ジェンミは画面を伏せ、通知を静かに捨て置く。

スマートフォンをその場に残したまま、ジェンミは有紗の(ひたい)にそっと口づけると、その身体を抱き上げた。

そしてきびすを返すように、彼女の部屋とは反対方向に足を向ける。

指先で自室のドアを開け、ジェンミは自分のベッドにその身体を下ろした。


「アリサ、よく眠ってるね」


そう(つぶや)いてドアを閉めに向かうと、リビングに置き去りのスマートフォンがまた振動している音が聞こえる。


「レオ、今夜はレオにとってどんな夜になるのかな? フフッ……」


ジェンミはサッと表情を消し、すべてを(さえぎ)るかのように、そのままドアを閉めた。



ベッドに静かに横たわる有紗の脇に(ひざ)をつき、ジェンミは彼女の髪を整える。

「本当に眠り姫になったんだね。アリサ」


そしてその華奢(きゃしゃ)な手を握る。


「大丈夫だよ、これからはボクがずっとそばにいるから……」


そう言ってジェンミは、有紗の首もとから順に、一つ一つボタンを外していった。



『マジック・キングダム』の花火の最中、大勢の観客が歓声を上げる中、有紗は突然、苦痛に表情を(ゆが)め、胸を押さえてその場に座り込んだ。


「アリサ! こんなところでしゃがんだら危ない!」


ジェンミがとっさにその身体(からだ)を支え、人混みから有紗を連れ出す。

朦朧(もうろう)とした状態の有紗をベンチに降ろし、気を失ったかのように意識の薄い彼女の肩を抱いて支えながら横に座ったジェンミは、しばらく茫然(ぼうぜん)としながら夜風に吹かれていた。


――いったい、どうしたっていうんだ……アリサ


すぐとなりにある濡れた頬をそっとハンカチで押さえる。

目を閉じて力なくもたれ掛かる有紗を見つめながら、その表情の移り変わりを思い起こすと、ジェンミの胸の奥で、混乱が渦を巻きはじめた。


彼女を腕の中に抱いた瞬間、受け入れられたのだと幸福感に満ちたが、それは一瞬にして崩れ落ちた。

あの悲壮感溢れる有紗の表情は、まるで絶望を見たかのようで、それが頭から離れない。


――" その顔で " とは……どういう……?

   あれは、何を拒んだ言葉だったんだ……?


ふと、初めてあのランドルフの家で対面した日のことを思い出した。

こっちを向いた有紗が、瞬時に凍りついた表情に変わったのを見て、最初はただの人見知りだと思っていた。

しかし、彼女の誠実で社交的な人となりを知るにつれて、あの初対面の態度が腑に落ちないと感じていた。

そして気丈で意地っ張りな彼女が、ここへ来てからは何度も涙を見せるほど感情が揺らいでいる。


――この……ボクの顔になにか……


「う……」

有紗が声を発した。


「アリサ!」


「……あ、私……どうして?」


ジェンミは有紗の肩から腕を下ろす。


「ああ……ほら、すごい人混みだったからさ、酸欠(さんけつ)みたいに少し呼吸が乱れたのかもしれないね。大丈夫? 気分はどう?」


「ん……フラフラするけど気分は悪くないわ」


「まぁ、かなりワインを飲んじゃったからね」


「ごめん……」


「いいって。それより、ほら」

ジェンミは有紗の肩を支えたまま空を指差す。


「折角だから観ていこうよ。ここからでも花火は充分きれいだからさ?」


「……ホントね」


二人はしばらくそのまま空を見上げて静かに過ごし、ジェンミは有紗が落ち着くのを見計らって、混雑を避けるために少し早く切り上げて有紗を誘導した。

ふらつきが取れない有紗の身体(からだ)を支えながら、ゲートをあとにした二人はタクシーに乗り込む。

車が走り出したとたん、ジェンミの肩に乗った有紗の頭が徐々に重くなるのを感じた。

ジェンミにもたれ掛かったまま眠り始めた有紗は、ホテルに到着しても目覚めなかった。



「よいしょっ……と!」


有紗を抱き上げたまま部屋にたどり着いたジェンミは、リビングのソファーに一旦その身体を下ろす。


「ふぅ……」


自分もどかっと座り込み、しばしそのままたたずんだ。


――ふふっ、なるほど。これがレオの言う " 死体状態 " ってヤツね?


ふと窓に目をやるといびつな表情で笑っている自分の顔が映っていて、慌てて目を背ける。


(かたわ)らでスヤスヤと寝息をたて始めた有紗の額にかかる髪を払いながら、そっと頬に手を添える。

玲音(レオ)の前だと簡単に寝落ちしていた有紗は、自分とはこれまで何度一緒に飲もうとも眠りに落ちなかった。

そんな彼女が今こうして無防備に自分の(そば)で静かに寝息をたてているのが不思議に思える。

更に、それに喜びを感じる自分をもまた、妙だと思った。


――ホンキ……なのか? ボクが?!


花火を前に、彼女を抱き締めたときの感情が蘇る。


――いや、あれは……単に雰囲気に呑まれてのことだろう?


だんだん胸の奥に、痛みに似た熱い思いが込み上げてくる。


――いや……ダメだ。だってボクは……


不意に、テーブルに置いたスマートフォンが振動した。

頭の中に思い起こしていた情景が瞬時にかき消され、ジェンミは眉をひそめる。

画面を確認すると、そこには玲音の名前があった。

ジェンミはちらっと有紗を確認する。

そしてソファーから上目遣いに月を見上ると、一人声を上げて呟いた。


「さぁ、レオ……どうする?」


ジェンミは画面を伏せ、通知を静かに捨て置く。

スマートフォンをその場に残したまま、ジェンミは有紗の(ひたい)にそっと口づけると、その身体を抱き上げた。

そしてきびすを返すように、彼女の部屋とは反対方向に足を向ける。

指先で自室のドアを開け、ジェンミは自分のベッドにその身体を下ろした。


「アリサ、よく眠ってるね」


そう(つぶや)いてドアを閉めに向かうと、リビングに置き去りのスマートフォンがまた振動している音が聞こえる。


「レオ、今夜はレオにとってどんな夜になるのかな? フフッ……」


ジェンミはサッと表情を消し、すべてを(さえぎ)るかのように、そのままドアを閉めた。



ベッドに静かに横たわる有紗の脇に(ひざ)をつき、ジェンミは彼女の髪を整える。

「本当に眠り姫になったんだね。アリサ」


そしてその華奢(きゃしゃ)な手を握る。


「大丈夫だよ、これからはボクがずっとそばにいるから……」


そう言ってジェンミは、有紗の首もとから順に、一つ一つボタンを外していった。



第73話『When Snow White Closed Her Eyes』魔女の林檎 - 終 - 

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