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『Ray of sunshine』レイ オブ サンシャイン - Stunning sky in Florida - 突然の御曹司との生活……?! 過去を紐解きフロリダの空の下で輝くサクセスストーリー  作者: 彩川カオルコ


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第72話『When the Sky Lit Up』夜空に流す涙

有紗とジェンミは『ユニバーサル・オーランド・リゾート』で一日を過ごし、『ユニバーサル・シティウォーク』のレストランで一流のシーフード料理とワインを堪能した。

そこで、かつてこの地で飲んだ思い出のワインに遭遇した有紗は、いつになくグラスを重ねながらその味に浸る。


   " Journey down memory lane "


酩酊(めいてい)状態で有紗が発したその言葉を、ジェンミは聞き取っていた。

それは半世紀ほど前に出版されたアメリカの古い詩集のタイトルで、世界中で翻訳されている有名な著書だった。

幾つもの短編が集められたなかで、一番最後に書かれた本と同じタイトルの詩を思い出そうとする。

ぼんやりとしか覚えていないが、懐旧(かいきゅう)の情に満ちたその詩は、明るい文体の奥に、故人への想いと静かな(いきどお)りが潜んでいた。


" 懐かしいワイン " と " Journey(思い出) down() memory(たどる) lane()"

ここに何らかの秘密が隠されているように思えた。


「さぁ、アリサ、行こう」


ジェンミは、飲み過ぎてよろめく有紗を支えながら店の外へ導いた。

星とイルミネーションが散りばめられた涼しい夜風に当たると、有紗も幾分足が軽くなったように見える。

タクシーに乗り込み、花火を間近で観るために『マジック・キングダム』へ向かった。


「アリサ、大丈夫?」

車の中でジェンミが声をかける。


「うん、もう平気」


有紗は幾分取り繕うように笑顔を向け、明るく話し始めた。

「わざわざ花火だけを観るために『マジック・キングダム』に入るなんて贅沢よね?」


「うん。でもまぁユニバーサルシティーからだったら、どうせホテルへの帰り道だしさ」



『マジック・キングダム』に到着した二人は、早速シンデレラ城に足を向ける。

メインストリートを抜け、『ファンタジー・ランド』に差し掛かったばかりの地点で突然立ち止まる有紗に、ジェンミは驚いて振り向いた。


「どうしたのアリサ? もっと近くまで行けるけど?」


「あ……ここで観たいなって」


「え? ここで?! いいの?」


「うん。ここが……いい」


「そっか、わかった」


半信半疑のまま、ほんのりと赤い頬で空を見上げる有紗の横顔を見つめながら、ジェンミはその答えを探す。


ほどなくしてバッと照明が落とされ、間髪入れず身体に響くような大きな音が鳴った。

歓声と共に大輪の花が夜空にいっぱいに咲きはじめ、二人は胸を高揚させながらそれらに顔を向けた。

ドラマチックな音楽と共にシンデレラ城のプロジェクションマッピングが始まり、色とりどりの幻想的な世界に引き込まれる。


「うわぁ……ホテルから見るのも素敵だけど、やっぱりこうやって近くで感じるのは格別ね」


「ホントだね? でもアリサ、気を付けて。ここは人でごった返してるから、はぐれちゃダメだよ?」


会話の声もかき消されるほどの音響と歓声に包まれて、二人は首が痛くなるほどに空を見上げ、そこに咲く花々を瞳に映す。

その色とりどりの光が、年齢も人種も性別も越えたすべての人々の頬を染め、その心を高鳴らせていた。


歓声の中、ジェンミはふと視野の端に映る有紗のシルエットに気付く。

その顔が花火ではなく自分の方に向いているような気がした。

すぐにまた花火の方を向くだろうと何気なく意識していたものの、彼女の顔の向きは一向に変わらず、そしてそれはなぜか振り向いてはいけないような、妙な緊張感を伴っていた。


辺りが一瞬真っ暗になった演出に、ジェンミはそっと視線を下ろしてみる。

突如大きな音が轟き、再び夜空に光が満ちたとき、浮き彫りなった有紗の表情があまりにも意外で、ジェンミは驚愕(きょうがく)する。


「え……アリサ」


彼女の頬には幾筋もの涙が流れ続けていた。

再び高く上がり続ける花火の色が、そのぐっしょりと濡れた頬にさらに鮮やかに映り込んでいる。

今まで見たこともないような表情でまっすぐにこちらを仰ぐ有紗に、ジェンミは言葉も出ないまま立ち尽くした。


視線が絡まるなか、有紗の口が動く。

なにかを囁いたその小さな声は、何度も鳴り響く破裂音にかき消され、その大きな瞳からとめどなく流れ落ちる涙を見ながら、ジェンミは胸に痛みを覚える。


ようやく声を振り絞った時にはもう、すでに彼女を抱きしめていた。


「アリサ……」


素直に身を任せ、胸に顔を(うず)めてしがみついてくる有紗の行動に戸惑いながらも、ジェンミはその細い肩を抱きながら、心の中にほとばしる情感が溢れてくるのを感じた。

ジェンミはかがんで、有紗の耳元に唇を寄せて囁く。


「アリサ……好きなんだ……」


そのまま頬が触れ合い、そっと唇を滑らせた瞬間、有紗の身体が急に固くなって、ジェンミの胸からバッと身を引いた。


「ア、アリサ?」


ハッとしたように目を見開いて悲壮な表情に変貌した有紗からは、先程見せた(つや)やかさが消え、まるで(おび)えているかのように自分の顔を見上げていた。


「言わないで……」


「……え?」


「その顔で……そんなこと、言わないで! うっ……」

息を荒くした有紗は胸を押さえ、崩れ落ちるようにその場にしゃがみ込んだ。


「はっ! アリサ?! どうしたんだ!? アリサ……!」



第72話『When the Sky Lit Up』夜空に流す涙 - 終 -

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