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悪役令嬢は駄犬を翻弄する


「…落ち着きましたか?」


マリアンが心配そうに聞いてくれるが、まだ沸々と怒りが収まらない。


「あまり煽らないでください。」


「えー?少し揶揄っただけですよ?」

「この程度で憤慨するなど、狭量すぎでは?…情けない。」


カムが注意しても二人は反省しない。


この性格悪‘sめ。


その横でリリーとナージャがにこにこしている。

見てないで二人を手綱でしっかり握っていて欲しい。


「…本当に大丈夫ですか?」


マリアンも楽しそうな顔して…面白くも無いわよ?


「リアン、心配してくれるなら、あいつらを何とかして頂戴…。」


「あはは…それは無理ですね?」


ハッキリと無理って言わないでよ?

第一、こんなことしている場合じゃない。パーティーも終わったしそろそろお父様と合流して帰らなければ…そう思った時、召使いの女性が現れた。


「会談中申し訳ありません。ロザリア・ブロッサム様に言付けを預かっております。」


わたくしに?


手紙を受け取って差出人をみると意外な人物だった。


「マリオット・カイナン…?」


「え?」


わたくしが驚くとつられてマリアンが驚く。


「お嬢様、俺が封を開けていいですか?」


「う、うん。」



カムに手紙を渡すと、カムは手紙をすぐ様に開封して中身を見る。


「?」


あ、難しい表情して首を傾げた。

カムが悩む程のことなのかしら?


「何て書いてあったの?」


「いえ、『話したいことがあるから騎士の修練場まで来てほしい』としか書いてありません。…これはどういう事でしょう?」


カムがマリアンの方に視線を向けた。


「その手紙を見せてくれませんか?」


マリアンに手紙を渡すとマリアンは疑う様に手紙を凝視する。


「…確かにこの字はリオの字です。何故リオがロザリア様に?」


子供の殴り書きのような字だとごちるマリアンに苦笑する。

どうやら字と性格は共通するようね?


「お嬢様どうしますか?」


マリオットがわたくしに話など疑問しかない…でも、これはある意味彼を知るチャンスではないかしら?


「分かったわ。今から行きましょう。」


「ロザリア様!?」


まさか行くと思っていなかったのかマリアンは驚いた。


「わたくしも彼とお話したいと思っていたの。礼儀を弁えず噛みつくようなら躾け直してあげるわ。カム、一緒に来てくれる?」


「勿論です。お嬢様一人では行かせませんよ。」


カムが頷いてくれた。

そしてマリアンに視線を合わせる。


「リアンも一緒に来てくれる?」


マリアンを誘うと、彼女はすぐに頷く。


「勿論、私もお供します。」


三人で向かうと決めた。


「また揉め事に突っ込む気ですか?」


シリウスが呆れて苦笑している。

まるで何かあるたびにわたくしが突っ込んでいく様なに言い方ね?


キッと睨めつけるとシリウスはやれやれと手を挙げた。


「安心してください、止めないですから。ただ周囲に気を付け下さいね?…ロザリアは第二王子の婚約者なのだから。」


そう言いって帰えろうと言いナージャの手を取る。


「お姉様…。私も一緒に行っても宜しいでしょうか?」


心配そうにここに残ると言うリリーに首を振る。


「いいえ、リリーはお父様を連れて先に帰っていて?カムとリアンがいるからわたくしは大丈夫よ。」


彼に会って話すだけ

それ以上はここに滞在するつもりない。

それよりも過保護の父がここに居られる方が良くない。

娘が帰って来ないからって、衛兵を呼んできそうだから…


リリーは渋る様な顔をするが頷く。


「グレン、悪いけどリリーをお父様の所まで連れていって?…言っておくけど、リリーに変なことしたら承知しないわよ?」


釘をさすとグレンは不敵に笑いリリーの手をとる。


「ここでするわけないだろう?リリー行こう。」


「お姉様、早く帰ってきてくださいね?」


そう言ってリリーとグレンはこの場を離れた。


…顔が引きつる。

あいつに本当に任せてよかったのかしら?


次にナージャを見ると、案の定不安そうに見ていた。


「ロザリア…あまり無茶しないでね?」


あの男ではなく、どうやらわたくしの心配している。

そこなの?


「ナージャ有難う。今度はゆっくり話を…そうだわ!近いうち、一緒に女子会しましょう?」


「いいわね!」


私の提案を聞きナージャは嬉しそうに頷いた。


女の子4人で女子会なら嫌味‘Sの邪魔が入らない。

これなら楽しそうだわ?


そんな事を考えながら去るナージャとシリウスを見送った。


さて、次にやる事は勿論…


「リアン、修練場に案内してくれるかしら?」


「はい、承知致しました。」


3人で修練場に向かった。


・・・・・


騎士棟のその奥に兵士の修練場がある。

普段は鍛錬をする者が多くいるそうだが、今日はパーティーの為に皆出払って人の気配が全くない。


修練場に着くと観覧席に一人の男がいた。


銅色の髪に短髪の男…マリオット・カイナンだ。


「遅かったな?」


此方を睨みつける様に見るマリオットは観覧席を立ち修練場の中央まで歩いてくる。

わたくしもカムとマリアンを後ろに下がらせて堂々と進みマリオットの前に立った。


「話があると手紙を貰ったけど、何の話かしら?」


「ああ、話があるとも…ルーベルト殿下を誑かすこの悪女めっ!」


突然マリオットは剣を取りわたくしに刃を向けようとした。

瞬時にマリアンは剣をとりマリオットの剣を払った。


マリアンはわたくしを守る様にマリオットの前に立つ。


「剣を収めなさい!騎士が剣を持たぬ婦女に剣を向けるとはどういうつもりです!?」


マリアンが怒鳴るがマリオットは全然引かない。


「悪女の手先になったお前に話すことは何一つない!そこをどけぇ!!」


マリアンに刃を振り落とすとマリアンはすぐに躱してマリオットが握る剣の柄頭部分を強く当てた。

当てたことによって剣は落ちたがマリオットの反対の手で拳を作りマリアンを殴ろうと狙う。

マリアンは辛うじて躱し後ろに飛んで下がる事によって二人に距離が出来た。


「仕方ありませんね?王子殿下の婚約者を手に掛けようとした貴方の身柄を確保します!」


マリアンはマリオットに剣を向けた。

マリオットもすぐに剣を広いマリアンに剣を向ける。


「待って!!」


無意識に身体が動いて二人の間に入った。


「お嬢様!?」


戦う為にここに来たわけでは無い。

彼を理解する為に来たのだ。


「命令よ?全員止まりなさい!!」


カムが駆け付けようとするが、そのまま一括して制す。

カム、そしてマリアンとマリオットも動きを止めた。


一息吐き、マリオットに向き合う。


「マリオット、貴方はわたくしがルーベルト殿下を誑かした悪女と言ったわよね?最初から説明してくれないかしら?」


説明を求めると、マリオットがわたくしをきつく睨む。


「そのままの意味だ!ルーベルト殿下の婚約者になる為に殿下が選んだ婚約者候補を騙し怪我を負わせた悪女。今度はルーベルト様を自分の欲で操る気だろう?そうはさせんぞ!?」


「下がって!」


マリオットが動くとマリアンも動きわたくしを後ろに押してマリオットの剣を受け止める。


飛ばされた衝撃で尻餅つきそうになるけど、カムがわたくしを受け止めた。


「お嬢様勝手に動かないでください。危ないです!」

「ごめんなさい、でもっ!」


カムに謝ってすぐにマリオットをみる。


彼が言った事に耳を疑う。


わたくしが婚約者候補を貶めた?

あらぬ事実に驚いた。もちろんそんな事はしてない。


もしかしたらマリオットは誰かに騙されている?


でもマリアンとマリオットは激しく剣を交わしていて、わたくしはただそれを観ているだけしか出来ない。


二人ともすごい気迫で言葉を掛けられる雰囲気ではない。


「一体、誰にそんな嘘を吹き込まれたのですか?ロザリア様を知ろうとしない人が勝手に悪女と決めないでください!」


「貴様こそ、相変わらず女々しく私情を挟みよくぞ騎士などやっているな?そんなんでよく自分を倒せと言ったもんだ!」


「なら私を倒してから言ってください!」


マリアンはマリオットの背後にまわり利き腕を躊躇なく突き刺しその次に足でマリオットを崩す様に薙ぎ払う。

マリオットはバランスを崩して倒れた。


マリアンは瞬時にすぐマリオットの剣を奪い彼のマントに突き刺しては逃げられない様にさせ倒れた彼の体の上にマリアン自身が伸し掛かる。それによってマリオットは次の抵抗が出来なくする。

同時に自分の剣を彼の首に当てて鋭くマリオットに視線を向ける。


「リオ、チェックメイトです。」


「っ!?」


強い!

マリアンの華麗な剣捌きや体術につい魅入ってしまう。


「カム様、取り押さえるのを手伝って貰えませんか?」


助勢を求めるマリアンにカムがマリアンの元に急いで向かった。

マリアンは太目の紐をマリオットの両腕に括りつけて縛る。


…その紐はどこから出たのかしら?


「これで大人しくなるでしょう?」


マリオットに淡々に言うと悔しそうにマリオットは睨めつけた。


このやり取りを見て安全だろうと判断したわたくしはマリオットに近づく。


「ねぇ、ちゃんと話をしてくれない?こちらとしては覚えのない事を話していたけど、わたくしが一体誰を騙して怪我を負わせたの?」


マリオットはわたくしに視線を向け噛みつくように吠えた。


「し、白々しい!この悪女め!ローレライ伯爵ご息女を忘れるとは…さっき会っただろう?」


さっき会った令嬢…?居たかしら…

いや、一人だけいる。


「…もしかして…乱入してきた令嬢?」


バルコニーに突入してきた令嬢。

きっと彼女の事を言っているのだろう。


「そいつはルーベルト様の婚約者候補一人だった!それをお前の陰謀によって婚約者を決めるお茶会に出られず、婚約者の座をお前に奪われたそうだ!!」


ローレライ伯爵…さっきの少女は伯爵家の娘だったのね?

でもおかしい。

当初、候補は確かに多くいたが、王妃様の話だと国王陛下は当初から公爵家の娘であるわたくしとレティシア様だけに的を絞っていたと…。


「ローレライ家はカイナン伯爵家の親族ですね。先ほど捕まえた方はローレライ家のご息女という事ですか…。」


マリアンもその名前に覚えがあるのか思い出す様に呟く。

でも令嬢の顔までは知らないらしい。


確かにローレライ伯爵家は騎士の家で王族に仕える貴族。

紅の騎士副隊長として席も置いており、家柄も王家に嫁ぐには申し分はない。


でも、知名度は殆ど皆無に近い。

武家の娘は殆ど女性騎士の道に歩む為に、貴族社会で殆ど表に出ないから世間に名を知られることがないのだ。


そんな相手に王子の婚姻候補として名が挙がる事はないのだが…。


だがマリオットは吠える。


「そうだ!俺もさっきまで敬愛するローレライ伯爵の娘とは知らなかったが、取り調べを聞きて貴様の悪事を知った。…公爵家の娘だから裁けないと嘆く伯爵の代わりに俺が貴様を裁く!」


彼の態度に段々苛立ちを覚える。


尊敬しているらしい相手の言い分を鵜呑みにて間違った正義で訴え勝手に裁こうとする…この男はなんて愚かだろう…?

これじゃ必死に騎士の誇りを取り戻してほしいと願うマリアンがあまりにも可哀相だ。


「ねぇ…貴方、結構馬鹿じゃない?」

「何ぃ!?」


マリオットはわたくしに馬鹿にされ顔を赤くし目くじらをたてた。

でもわたくしは続ける。


「人の話だけで判断して勝手に決めつけるなんて…貴方、騎士に向いてないじゃない?いいえ、騎士以前の問題ね?真っ当な人間でもないわ。よくそれで騎士だと名乗れるなんて聞いて呆れるわ。」


そのうえ騎士団長の息子だって?

誰もが疑うわ。


馬鹿馬鹿しくて鼻で笑う。


「き、貴様の様な悪女に、この俺を侮辱するんなんて許さん!!」


「許さなくて結構よ?第一、公爵家令嬢のわたくし相手に貴方は何ができるっていうの?今の貴方の言動で十分罪を着せられるわ。」


悪女と決めつけているようだが、証拠もなしでよく吠えるものだ。

それも王家に連なる公爵家の娘相手に。


「もし、貴方の言う通りわたくしがその令嬢を嵌めたとしても、証拠がなければ裁けないわ?貴方はその証拠を持っているの?」


マリオットの顔色が渋くなる。

本当に馬鹿な犬だわ?


「逆に今の発言で貴方の立場は悪くなったわね。…さてどうしましょうか?この事をお父様と国王陛下に話して貴方を罰して貰わないと気が済まないわ?」


「ぐっ…。」


マリオットは更に険しい表情になる。

でも、揺れない所は流石といえる。自分一人で全てを被ると覚悟していたのだろうか?


なら…


「…それだけでは足りないわね?貴方の家と敬愛している全ての貴族を罰してしまいましょう。わたくしは悪女ですもの、平気でやるわよ?‥‥手始めにニースの家はどう?」


悪女らしく口元を弧に描き怪しく微笑む。


「っ!?なぜその名を?」


マリオットが反応した。

彼だけでなくマリアンもわたくしを見て真意を伺っている。

カムまでハラハラしている様。


心配している様だけど、これは全て嘘。

そんなのしたくない。

でも、カイナン伯爵家にはお仕置きはさせてもらうかもしれないわね…?

マリオット次第だけど。


「…なぜニースの事を?…まさか、お前が教えたのか!?」


マリオットは怒鳴るがマリアンは何も言わない。


「そんな事はどうでもいいじゃない?貴方の親友だったニース。騎士として立派な最後だったのに、あなたの所為で彼の実家に責任が及ぶなんて可哀相ね?…その次に責任を負って貰うのはマリアンの家…ね?昔は親友だった仲だから同罪だわ。」


憐れね?と言いながら楽しそうにマリアンに微笑んだ。


…でも内心ではごめんなさいと謝罪する。

いくら嘘でも心苦しい。


「…めだっ。そんなこと絶対にさせぬ!その前に俺が、俺が貴様を止める。絶対にさせないぞ!」


今のマリオットはあきらさまに態度が急変した。

言葉は変わらないけど、目つきが先程と違う。


今の言葉は彼の意志を強く感じさせた。


『…良さそうね?』


心の中でほくそ笑む。


「どうして止めるの?貴方はマリアンを倒したかったのでしょう?ならわたくしに感謝してほしいわ。それとも理由があるのかしら?…言えるなら少しぐらい考えてあげても良くてよ?」


不敵に微笑むと、マリオットは悔しそうにわたくしを睨みつける。


「‥くっ…ニースとの…だからだ。」


小さい声が全然聞き取れない。

彼の本音が聞けるかもしれないから妥協はしない。


「聞こえないわよ。はっきりと言ってくれない?」


悪女に配慮なんてないのだから。


「…ニースとの約束だからだ!俺は自分だけの力でリアンに勝たなければならない、だからこそ絶対にさせない!」


観念したのか悔しそうに歯を食いしばり先ほどよりもはっきした声が響く。

その様子にマリアンの表情が変わった。


「約束?それはどう言う意味か教えてくれない?」


わたくしに話したくなさそう。でもここで引くわけにはいかない。

今話をしなければ彼を変えられない気がする。

最後まで言うように強要する。


「…昔あいつと約束した事だけは果たしたい。俺が強くなってリアンに勝てば…認められる。だからそれを果たすまで俺は騎士を…。」


マリオットが歯切れ悪く話すけれど、よく分からない。

首を傾げているとマリアンが彼の前に立った。


「リオ…聞かせて下さい。医院でニースが最後に貴方に何を言ったのですか?」


マリアンは彼の言葉に何かを感じたのか問いかける。


今のマリオットなら話してくれるかもしれないと思ったのだろうか?


その様子をわたくし達は静かに見守る。


読んでいただき有難うございます。


戦闘シーンは素人が書いていますのであまり期待しないで頂けると助かります。

文章力がなくて本当にすみません。

普通だったら女の人が男の人に勝つのは難しいです。

ファンタジーという事で右から左で流してますが…。


ここから後半になります。

宜しくお願いします。

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