第5話 コタロー、覚醒
いつも読んでいただきありがとうございます。
今回のお話は戦闘描写があるため、(モンスター側ですが)ちょっと残酷描写があります。
エヴァおばあさんの家から外に出ると、あたりはもう日が沈んで真っ暗だった。村の男たちが各々剣や棍棒を手に持ち、ゴブリンの襲撃に備えているようだ。
「お嬢ちゃん。危ないから家に引っ込んでな!」
私は、昼間声をかけてくれたおじさんにそう言われる。
確かに無謀だったかも……。と思いながらも
「私にもできることがあるかもしれません!」
と勇気を振り絞って言った。
異世界転生(私の場合は転移だろうか)では、転生した者が特別な力を持つ事が多いという。私には特別な力があるようには思えないが、もしかしてピンチになったら覚醒する可能性もあるかもしれない。
そして、コタローの吠え声もモンスターに効果がある可能性があるし……。
そう思いながらも、私の足は震えていた。
ガサガサ
茂みから何か出てくる。5体いる。
私の心臓がキュッとなる。
それは、人の背丈ほどの大きさでぼろをまとい、緑色の肌をした醜悪な化け物だった。
これが、ゴブリン……。
彼らも各々棍棒を持っており、村を襲う気のようだ。
村の男の1人が「ヤー!」と声を上げて先頭のゴブリンに切りかかる。しかし、ゴブリンはそれをかわすとその村の男を棍棒で殴った。
他の村の男たちが一斉に飛びかかるも、あまりゴブリンはダメージを受けていないようだった。
「わんわんわん!」
コタローが猛烈に吠える。ゴブリンたちは一瞬ビクッとしたようだったが、さすがに吠え声だけでは退散しないようだ。
どうすればいいの……⁉
私は、村の男たちとゴブリンが入り乱れる、もはや戦場と化した村をうろうろするばかりだった。
と、その時、背後に気配を感じた。
ゴブリン⁉
そう思う間もなく、私に棍棒が振り下ろされる。
助けて……‼
その瞬間、ゴブリンの腕に嚙みついた者がいる。コタローだ‼
私を襲おうとしたゴブリンは、ひるんでコタローを振り放そうとする。
コタローはがっしり嚙みついて離さない。
と、その時だった。コタローがむくむくと大きくなっていったのだ。
コタロー……⁉
最終的に人の背丈よりも大きくなったコタローは、ゴブリンの腕を嚙みちぎり、そのゴブリンの頭にかぶりついた。
「グェェ……」
ゴブリンの断末魔が聞こえた。
コタローがゴブリンを倒したのだ‼
その後は、もうコタローの圧勝だった。残りの4体も嚙みつきであっという間に倒してしまったのである。
5体のゴブリンが倒されると村の男たちが勝利の雄たけびをあげた。コタローはいつの間にか元のサイズに戻っていた。
村の男たちがコタローに駆け寄る。しかし、コタローは「ヴゥー」と威嚇するばかりで、村の男たちは近づく事ができなかった。
「すみません。この子、人が苦手で」
私は慌ててそう答える。コタローは私の近くによって来て尻尾をふりふりした。
「いや、すごいじゃないか!この犬は伝説の魔犬ティルヴィングみたいだ!」
ティルヴィングという名前は聞いたことがなかったが、どうやらこの地に伝わる伝説の魔犬のことらしかった。
「その犬はコタローっていうのか!コタロー様バンザイ!」
コタローが村の男たちから喝采を受ける。男たち以外も家から出てきたようで、その様子を見ている。
これは、どうやら、私ではなくコタローが特別な力を持ってしまったようだ……。
最高の愛犬コタローが特別な力を得たのは嬉しいけれど、私には何も能力がなかったのが悔しいような、ちょっぴり複雑な気分になる。
そして、ゴブリン襲撃の後始末が始まった。コタローがさっさとゴブリンを倒したお陰で家屋への被害は無し、先ほどゴブリンに殴られた男性も命に別状はなかったようで、死者も出なかった。
「さっきはすごかったわね。ユキもコタローも疲れているだろうから家に入って休みましょう」
家から出てきたエヴァおばあさんにそう声をかけられた。私は疲れていたのを思い出し、その日は休むことにしたのである。
そして、私はその晩ぐっすりと寝た。コタローも私の横で丸くなって寝ていたようだ。




