第2話 異世界転生、いやそれとも転移?
「わんわんわん!」
コタローが私に向かって吠えている。吠えたと言っても威嚇の意ではなく、目を覚ましてという懇願の含まれた吠え方だった。
私が目を覚ますと、そこは森のようだった。コタローが嬉しそうに私に寄り添う。
あれ、さっきまで街にいたのに……。そういや車に轢かれたんだっけ……。それなら目を覚ますなら病院のベッドじゃないだろうか?
よく意味が分からず私はひたすら周りを見回した。
森……。では、あるのだが生えている木も見慣れない種類ばかりだ。それに、変なキノコも生えている。まるで異世界みたい。
私の脳裏にある言葉が浮かんだ。
異世界転生……。
そう、異世界転生だ。よく知らないけど、車に轢かれて目を覚ますと異世界に転生していた……。という話が世間では流行っているらしい……。
まさか、ホントに異世界転生したのか⁉
いやいやいや、たぶん見慣れない木が生えてるだけでそれはないっしょ!
なんで、ここにいるのかはわからないけど……。
せめて人のいる場所に行こう。道は知らないけど。
「コタロー、ついておいで」
コタローのリードはなぜか無くなっていたので、私はコタローを引っ張ることなくそう呼びかけた。
コタローは大人しくついてくる。
本当にかわいい犬だ。
しばらく、あてもなく歩いていた時だった。
ガサガサ
周りの茂みが揺れた。
「えっ動物⁉熊だったらどうしよう」私がそう思う間もなく、音の正体が私の前に出てきた。
それは、半透明でぷよぷよした半円形の得体の知れない化け物だった。大きさは人の腰ほどもある。
スライム⁉
特にファンタジーに詳しくない私でも、それがスライムと呼ばれる化け物だとわかった。
そして、そいつはこちらに向かってきた。私はとっさに落ちていた木の棒を掴みスライムに叩きつける。
ぐにゃり
スライムは一瞬へこんだが、大したダメージを受けてもいないようでまだ向かってくる。
その時だった、
「ヴーわんわん!」
コタローが猛烈に吠えた。
すると、スライムは驚いたようにビクッとすると、そそくさと茂みの奥へ退散していったのである。
「コタロー!すごい!」
私はコタローを抱きしめる。もふもふの毛が顔に当たってくすぐったい。コタローも嬉しそうに尻尾を振っている。本当に偉い犬だ。
それにしても、本当に異世界転生しちゃったのかな……?いや、これは異世界転移かな?
私は先ほどのスライムを思い浮かべた。
どうやってコタローと生きていけばいいのかな。私にも特別な力はなさそうだし、コタローも犬だし……。私は先の見えない不安に駆られる。
しかし、私はまだコタローのすごさに気づいていなかったのである。




