第1話 ユキとコタロー、トラックに轢かれる。
「コタロー!おいで!」
そう呼ぶと、柴犬のコタローは尻尾を振りながら私の足元に駆け寄ってくる。
うん!今日もとてもかわいい!
愛犬のコタローは私のペットであり、唯一の大切な家族……。
私、山田ユキはバイトをしながら1人暮らしをしている、しがないフリーターだ。両親は既に他界しており、親戚とも疎遠なため実質天涯孤独と言っても良い。
そんな私の唯一の家族で最高の癒しはコタローだ。
3年前、まだ子犬だったコタローは私の家の前に捨てられていた。両親の残した一戸建に住んでいたため、ペットは飼える状況だったが、最初、フリーターの私にコタローがちゃんと飼えるかは不安だった。
でも、今は自信をもって、ちゃんと飼えていると言えると思う。
毎日散歩に行って、餌やら何やらお世話をして……。
孤独な私にとって、コタローは最愛の存在だ。
コタローは私の言うことも良く聞くしとてもできた犬なのだけれども、唯一欠点がある。
それは、他の人に全く懐かないことである。散歩の途中で、道行く人に「かわいい犬ね」なんて言われてなでようとされようものなら、猛烈に吠えて、牙をむき出しにして威嚇するのだ。幸い人を嚙んだことはないが、この威嚇っぷりだといつか人を嚙みそうで不安になる。
まあ、こんなかわいいコタローにとってそんな欠点とは微々たることなのだが。
そろそろコタローの散歩の時間だ。行かなくては。
そして、私はコタローにリードを付けて散歩に出かけた。
いつも通り、いつもの道を歩いていたのだが、
「わんわんわん!」
突如コタローが猛烈に吠え始めた。そして、物凄い力でリードを引っ張り、私ごと車道に飛び出した。
「待って!ここ車通り激しいから……!」
そう思う間もなく……。
キキー!
大きなトラックがブレーキを踏む音がする。
ドカァン!
コタローと私はブレーキの間に合わなかった大型トラックに轢かれたのであった。
私の意識はここで途絶えている。




