第11話 王様からの依頼
王宮事務局は城と思しき建物の目の前にあり、その見た目は、私の元居た世界の小さな役場を連想させるものだった。
窓から様子を伺ってみると、職員が忙しそうに動き回っているのが見えた。
私は勇気を出してドアを開け中に入る。コタローも一緒に入る。
「おはようございます……」
と、言うやいなや
「コタロー様とユキ様ですね!」
と1人の職員が駆け寄ってきた。30代くらいでまだ若い男性の職員だ。
私は少し戸惑う。
「あ、これは失礼。申し遅れました。私がヴァン王宮書記官です。」
彼はそう名乗った。
手紙にあった名前の職員さんだ……!手紙は何だか高圧的だったけど案外普通の人っぽい。
私がそう思っていると、
「この度はわざわざ遠い所からお越しくださり、ありがとうございました」
と、彼は深々とおじぎをした。
「あ、こちらこそです……」
わざわざ遠い所から来たのは確かになのだが、私はついこう答える。
「こちらがコタロー様ですね。なるほど、とても優秀そうだ。魔獣の才能があるのだろう……」
と、ヴァン王宮書記官はコタローをしげしげ眺めながら言った。コタローはやや警戒気味だ。
そして、
「コタロー様とユキ様にはアーデル国王から直接話があります。早速ですが、国王に 謁見していただきたいと思います」
と、言った。
ええ、王様に直接会うの……!なんか怖いな……。
「私も一緒に行きますので大丈夫です。それに国王はとても優しい方ですので……」
と、ヴァン王宮書記官は、私の戸惑いを見抜いたようにこう言ったのだった。
そして、しばらくして
「謁見の準備が整いました!王宮に行きましょう」
と、私とコタローは呼ばれた。
先ほど、城だろうと思って見ていた建物に、ヴァン王宮書記官と私たちは入る。
やっぱりこれが城なんだ。質素な内装だった王宮事務局とは違い、入り口から豪華な装飾や赤絨毯があるのが、目に付く。
そして、私たちはヴァン王宮書記官に案内されて玉座の間に入った。
そ こには、王様のイメージにぴったりな、王冠を被りあごひげを蓄え、豪華なローブを来た中年の男性が座っていた。
私が緊張でもごもごしていると、
「名前を名乗っておじぎをしてください。」
とヴァン王宮書記官に耳元でささやかれた。
私は慌てて
「私は山田ユキ、こちらは犬のコタローです!」
と、言い深々とおじぎをした。
すると目の前の男性は、ニコリと笑い
「私はアーデル国王、エルガルドⅤ世だ」
と言い、続けて
「コタローとユキ、よく来てくれた」
と言った。
「こちらこそお会いできて光栄です」
私は、王様の威厳に圧倒されながら、そんな社交辞令を言った。
王様は、
「コタローはあのファイアードラゴン相手に快勝したというじゃないか!」
と、続けた。
「はい……」
私は、コタローがファイアードラゴン戦後に弱っていたので、快勝では無いと思ったが、なんだか「いいえ」とは言いづらかったので、王様の声に同意する。
そんな私の戸惑いとは裏腹に、王様は話を続ける。
「その話を聞いて、まるで伝説の魔犬ティルヴィングみたいだと思ったのだ」
ティルヴィング、そういえば村の人たちも言ってたっけ。結局何なのか聞けずじまいだったのだけど。
「あの……。無知で申し訳ないのですがティルヴィングとは何なのでしょうか?」
私は勇気を出してこう聞いた。
「なんと!ティルヴィングを知らないとは⁉」
王様は驚いた。私はマズイ質問をしてしまったかと一瞬後悔したが、王様は話を続けてくれた。
「ティルヴィングは魔犬だ。とても強い力を持ち、1000年前に魔王を打倒したという伝説が残っている」
と、答えた。
「そうなんですね。ありがとうございます。」
私はお礼を言う。
「それで、本題なのだが」
王様は、コホンと咳払いした。
「最近我が国の魔物が活性化している。魔王が復活したとの噂もある」
……ユキは嫌な予感がした。
「コタローとユキには魔物退治、ひいては魔王討伐をお願いしたい!」
やっぱりそう来たか……!




