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後宮のお困り相談人- 後宮・事件未満録 -  作者: 水海雫


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8/12

知らない方が幸せなこと 3

いつだって私は一人だった。


「あれが噂の子よ」

「……汚らわしい」


耳に聞こえるのはこの血筋を疎む声。


幼いながらも自分が嫌われているのは分かっていた。それ故に私はいつも一人だった。そんな私を父は気にもしなかった。


「父上、父上」


何度呼んでも父は近くにはいなかった。声は枯れても私は呼び続け、いつも眠りについていた。


「はっ!?」


目が覚めて初めに視界に入ったのは杏華の夕日に照らされた顔だった。


「あ、子安様。起きましたか?」


「すみません。寝ていたのですね……」


「ええ、寝苦しそうでしたよ?」


あの夢のせいかもしれませんね……


幼き頃のトラウマ。


いや、傷。


言葉は絶えないがそんな記憶の夢だった。


「いつものことですよ………」


「それは大変です。私が使ってる枕はとても寝心地がいいのであげましょうか?」


「いえ、人が使た枕は遠慮しておきます」


「むっ、汚くなんてありませんよ」


「そう言う問題ではありません」


そんなもので寝たら杏華の匂いがして余計に眠れなくなりそうですからね……


「とにかく、私の睡眠についてはいいです。今はもうこんな時間ですし帰りましょう」


「……何かごまかしてませんか?」


「そんなことはありませんよ。ほら、帰りましょう」


「むー」


頬を膨らませながら杏華は子安の後ろをついて行く。


「で、帝の件は何かわかりましたか?」


「いいえ、なにも分かりません」


「気のせいではないのですか?」


「うーん」


杏華は腕を組み唸る。


「そう…なの…かも?」


「歯切れが悪いですね?」


「何か引っかかるのです」


彼女は口元に手を持っていきいつものように考えている。だが、答えが出ないのか唸るばかりだった。


「まあ、そんな日もあります。気にしないのが一番です」


「それが大人のやり方ですか?」


「ええ、考えてばかりでは余計に思いつかないものですから」


「それもそうですね……」


______________________


翌日、杏華はずっと唸っていた。


「まだ考えているのですか?」


「頭から離れてくれないのです」


「あまり、考えすぎては体調を壊しますよ?」


「ええ、気をつけます」


そう、返事する杏華だが、頭からは帝の件が離れない。


これは重症ですね…何かほかで気を逸らしましょう。


子安はそう決めると相談状を一通開けて杏華に渡す。


「杏華、これを見てください」


それは下女からの相談状だった。


杏華は相談状に目を落として文字を追っていく。


すると杏華の目が大きく見開く。


「子安様、これは帝と似た状態の人ですか?」


「ええ、みたいですね」


再度、子安は相談状に目を落とす。


最近、妙に体調が悪くて困っています。特に原因はないと医者には言われていて困ってます。どうか助けてください。そう記されていた。


「気になりませんか?」


「ええ、気になります」


そこでやっといつもの杏華が戻ってきた。


白い歯を見せて笑っている彼女を見て子安は安心する。


「では、話を聞きに行きましょうか」


「はい!」


______________________


「すみません。ここに鈴々《りんりん》という下女はいますか?」


子安は下女の宿舎で掃除をしていた侍女に聞く。


「これは子安様。その子なら奥の部屋で寝ております」


「ありがとうございます」


そうして奥に行くと体が細くなり肌が青白い侍女が寝ていた。


「あなたが鈴々ですか?」


「あなたは……子安様……どうか助けてください」


彼女は子安の手に縋りつく。


「ええ、やれるだけやってみますので詳しく教えてくれますか?」


「はい……実は一週間前から食欲はなくなりめまいなどが起こって気づけばこのようになってしまっていました……」


下女は静かに涙を落とす。


「一週間前からと言いましたね?」


杏華が少し体を前のめりにして聞く。


「は、はい……それが?」


「その時くらいから何か変わったことはありますか?」


「いえ、とくには……ああ、でもその時くらいからお付きの妃様からお薬をいただいていました。なんでも健康にいいと」


侍女がそう言って机の上にある薬を指さす。そこには帝の部屋と同じで杯にお湯が入っておりその横に薬が置かれていた。


杏華は口元に手を持っていき次の質問に移る。


「その妃様は誰ですか?」


「上級妃、紫苑様です」


「紫苑様……ですか?」


「はい、よく効くお薬でとても元気になるのです」


確か帝も彼女から薬をもらっていた……偶然なのでしょうか……


「そのお湯は?」


「これは、紫苑様がこちらで飲んだほうが体にいいとおっしゃっていたので」


その言葉で杏華はやっと違和感に気づくことができた。帝の部屋にもお湯があった。それが点をつなげる。


「子安様、急いで医局に行きますよ」


「え?ま、待ってください!?どうしたのですか!?」


「もしかしたら、帝の命が危ないかもしれません」


彼女は静かに告げた。


「誠ですか?」


「ええ、お湯と薬。この二つが帝の命を危ぶませます」


「分かりました。急ぎましょう」


「はい!」


点は繋がった。

















読んでいただき、ありがとうございます。

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