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邪神の子  作者: 月宮 結
巨大樹の森編

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8/20

綺麗な身体

「我が名は邪神! スウメロプテ!

 かつて世界を滅ぼさんとし、今は世界の裏側で捕らわれし者! 赤子!お前、わしを助けに来い!」


 スウメロプテこと神様はそう叫んでしばらくふははは!と高笑いした後、起きた変化に感動しつつも依然として身体の大半を歪ませ悶絶している俺を見てようやく事態に気づいてくれた。


「忘れとった!忘れとった!全身ぐちゃぐちゃじゃな!むふふ!わしは優しいからな!ついでに傷ついた身体も治してやるわ!」

 

 神様はそう言うと、何事かを唱え始めた。

 摩訶不思議な文字列——知らないはずの言語なのに、驚くほど明確にこれもはっきりと理解できた。


 【永遠とわの生命樹の根よ・古の約束のもと・息吹を吹き込め—— アーテム!】


 再度身体が光に包まれ、歪んでいた部分がみるみる治っていく。

 僕は確かにその日、神の御業を、奇跡の一端を目撃していた。

 ――――――――――――――――――――――



一連の流れに感動して呆然とする俺を神様は何も言わず静かに見守っていてくれた。


 ようやく少し落ち着き、気になったことを聞いてみる。


 "叶えて頂いた願いについて、自分自身の認識と実際の変化に差異がないか確かめたいので言葉にして頂けますか?"


 神様はふふんと鼻を鳴らしてから、得意気に説明してくれた。

 

「簡単に言うなれば、お前の体はもう普通の人間のそれではなくなった。血や水の全てを一滴も残さずに抜き取り、不要な臓器のほとんどを消し去った。腹を切り裂けば本来こぼれ落ちるはずのはらわたは、もうそこにはない。消化するための臓器を消し去ったことからわかると思うが今後一切の飲食とそれに伴って発生する排泄の必要はない。

 加えて身体全体を薄い膜で覆ってやった。これにより外界からお前の身体に汚れが付着することも無い。

 他にも細かいものをあげればキリがないが、とりあえず言えるのは、お前が汚れだと認識していたものは今後一切、お前の身体から排出されず、お前自身に影響を与えないいうことじゃ。どうじゃ?すごいじゃろ?」


すごいなんてものじゃなかった。これこそ俺が長い間妄想し、願い続けた完璧な身体。何人なんぴとも俺に触れられず俺自身も何人なんぴとにも触れられない理想の身体。

 

 もし今ここにいたのが赤子ではなく18歳の男だったのなら、年甲斐もなく辺り一面を駆け回っていたことだろう。


重たい頭を支えられず地面に全身を伏せたまま、付いているのに付いていない、おかしな状況を楽しんでいた俺に、神様は声をかける。


「わしから話すことも、お前から聞きたいことも山ほどあって何から話せばいいか最早分からぬが、まず、わしの願いについて聞け。」


 不可能を可能にした大恩人――人ではないが――の言葉をきちんと聞こうと、僕は心の中で姿勢を正した。


「細かい部分を含めると、お前が掴まり立ちできるくらいまでの時間をかけて話すことになるから、だいぶ端折るが……先程も言ったように、わしはこの世界の裏側、異界と呼ばれる場所に紆余曲折あって幽閉されておる。

 忌まわしいことに異界に繋がる門は、世界の中心にあり、そこに本部を構える星冠教会によって厳重に管理されておるのじゃ。お前の使命はその警備を軽々と突破できるくらいの魔法使いになり、異界に来訪して囚われの身であるわしを救うことじゃ。わかったか?」


知らない言葉はいくつかあったが意味自体は理解できたので意思表示に掴んでいた宝石をぎゅっと握ってやる気を伝えつつ疑問に思ったことを聞く。


"救っていただいた以上、自分にできることは全てするつもりです。ですが、こんな奇跡を起こせる神様でも抜け出すことの出来ない環境に人間である俺がノコノコ行ってそこからあなたを救い出すことなど、本当にできるのですか?そもそも自分は今こんな身体で、魔法使い?としての素質があるのかも不明な状態なのに。それに俺、6年くらいまともに身体を動かしてなくて、運動センスもめちゃくちゃ高いというわけでは…"


 つらつらと不安を並べる俺を遮って神様は厳かに言う。


「わしは神で、邪神で、この星の創造主じゃ。この星の全ての奇跡はわしに由来し、魔法もその例に漏れん。そしてこの星の魔法は全て、わしの言葉で作られておる。」


 神様はそこで言葉を区切ってから楽しそうにこう言った。


 「この世に生を受けてから最初に会話した者が神たるわしであるお前が理解できない魔法は、恐らくこの世に1つたりとも存在しない!」

 

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