消失
「アルミサエル、今の話は全て本当のことなんだな?」
ガブリエルがアルミサエルに聞いた
熾天使・ミカエルの城にある大広間で全ての熾天使に囲まれたアルミサエルがカスピエルの話をしたのだった
「はい。 事実です。」
それを聞いたガブリエルが続けて言う
「お前がカスピエルに言われた通り天界の書庫で休んでいたというのは分かった。 だがお前がカスピエルを踏みつけていたのを目撃したという者も居るんだ。」
「そんな! 私はそのようなこと致しません!!」
そこで肩まで伸ばされている水色の髪、透き通るような水色の瞳の熾天使・ラファエルが喋る
「現場を見ましたが地面はひび割れていました。 天使の中でそのような力を発揮できるのは限られた者でしょう。 私はアルミサエルではないと信じますよ。」
ラファエルは微笑んだ
「ラファエルの言う通りね。 エルちゃ...カスピエルはアルミサエルではない何者かに襲われた。 そういうことになるわ。」
「じゃあ何者かって誰なんだよ。」
「ウリエル、カスピエルの天罰はどういったものでしたっけ?」
「カスピエルの天罰は『運命の書』 ...頭の中で思い浮かべた命令を触れた相手に下すものよ。」
「カスピエルはそんな強力な天罰を持っていながらどうして使わなかったのでしょうか?」
「それは...アルミサエルが自分に攻撃してきて驚いたからじゃないのか?」
「しかし地面にひび割れを起こす程の力はアルミサエルにはない...。」
「ちょっと待ってくれ! そうかもしれないが目撃した者も決して嘘をつくような者ではないんだ!」
「だとしたら考えられるのは『アルミサエルのなりすまし』 ですね。」
「なりすまし...そんな天罰なんて存在するのかしら?」
「ありませんね。 しかしミカエル、あなたならもう気付いているんじゃないですか?」
ラファエルに質問を投げかけられたミカエルは喋り出す
「天使には居ない。 しかし、天使ではなく悪魔なら居たな。」
「悪魔? ミカエル、いくらなんでも冗談だろ? 現在確認されている悪魔はカスピエルがこの間倒したアモンだけだぞ!? 他の悪魔は神様によって封印されているはずだろ? ありえない!」
「悪魔が封印されているからありえないというのならアモンだって神様のお力によって封印されていた悪魔だろ? だとしたら可能性は十分ある。」
「ミカエル、その他の者になりすますことが出来る悪魔っていうのは?」
「オルニアス。 悪魔で唯一変身能力をもつ悪魔だ。」
「そのオルニアスってのは変身能力もあって、地面にひび割れを起こす程の強い力を持っているっていうのか?」
「いや、オルニアスは変身能力があるだけでそれ程の力はない。」
「? どういうことだ?」
「おそらく他の悪魔から力を借りたのだろう。 これに関してはどの悪魔が貸したのかまでは特定することはできない。」
「つまり、ミカエルの言う通りだとするなら...悪魔は少なくとも2体は居ることになるぞ...? 神様のお力によって永い時の間、封印されているはずの悪魔がだぞ!? こんなの問題だ...!」
「ガブリエルの言うことも分かるわ。 悪魔の封印を解く方法を知っているのは天使の中の一部の者のみ...つまり、裏切り者が居るということ...。」
「そのことなんだが...。」
「? 何よ?」
「これは神様にお伝えしたことだ。 カスピエルがこの間、下界で調査を行ったんだ。 そして分かったのが悪魔アモンの封印を解いた人間が居たそうだ。」
「!? どうしてそれを言わないのよ!」
「ウリエル、あまり責めてはいけませんよ。 ガブリエルは先程、神様にお伝えしたことと言いました。 あなたも知っての通り神様への報告等は機密事項...分かってあげて下さい。」
「・・・ええ。」
「しかし人間が悪魔の封印の解き方を知っていたというのは本当なのか?」
「ああ。 カスピエルの調査によると、その人間の名前は狭山強だそうだ。」
「それで神様はなんと?」
「調べ終わり次第通告されると。」
「調べる? 神様がそう言われたの?」
「ああ。」
「一体何をお調べになられるのかしら?」
「そりゃ...狭山強に関してじゃないのか...?」
「・・・。」
「あの...エルさん?」
紫苑は座っているカスピエルに話しかける
「あうー。」
しかし、カスピエルの視線は紫苑にはなかった 視線は空に向けられていた
「エルさん、どうされたんですか? 俺のこと分かります?」
「・・・。」
カスピエルは紫苑を見つめる
「エ、エルさん...?」
「うーー。」
「まさか...記憶喪失なんですか...?」
「う?」
紫苑は商店街の他の人達が大勢自分達のことを見ているのに気付いた
「と、とりあえずここから離れましょう!」
紫苑はカスピエルの体を起こして連れて行こうとするが、カスピエルは座ったままだ
「ど、どうすれば...。」
紫苑は商店街の中に肩車をしている親子を見つける
「! エルさん、失礼します。」
紫苑はカスピエルをおんぶした そして紫苑は家まで走った
「うーー! うーー!」
紫苑におんぶされて風を感じているカスピエルは笑う 同時に両手を左右に振っている
「エルさん!? あまり動かないでもらえるとありがたいんですが...!」
「うーー! うーー!」
しかしカスピエルには理解できていない様子だった
「ま、まぁ仕方ないか...。」




