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美形何それおいしいの?

さて。

時は流れて現在昼休みである。


学校までの行き道はどうだったとか始業式はどうしたとか典型的な転校生による挨拶・自己紹介イベントとかあるだろう常識的に考えてとかいろいろと思うところはあるだろうけれども、これらに関しては一言で終わる。


特筆すべきことは何も無かった。


むしろ「特に何も無かった」こと自体が特筆すべきことだろう。

何せ今までは普通に家を出れば如月啓太に出くわして一緒に学校へ行くことになり(もちろんこの時点で好感度はMAX)、出る時間を15分ほど後にずらせば遅刻目前な黒岩崇とぶつかって惚れられ(そして一気に好感度はMAXに。何でだ)、かといって出る時間を15分前にずらすと女子に囲まれる生徒会の面々と正門前で出くわし声を掛けられる(本当に何でだ)ことになっていた。そして30分前にずらせば「随分早く来てるな」と副担任に絡まれ、30分後にずらせば……ほぼ完全に遅刻、そして女好きの不良として名高い約2名に目をつけられる、そんな按配だった。


要するに、何をどうしても大変に面倒くせーことにしかならなかったのだ。


しかしこの素敵チートアイテム伊達眼鏡があると事情が少々変わる。

どうもこの眼鏡をしていると好感度が上がらないだけではなく存在感もある程度まで薄めてくれるらしく、他のどうしても接触が濃い目になってしまうケースはともかく、「女子の群れに囲まれる生徒会の面々」をやり過ごす事ができる程度には私のことを目立ちにくくしてくれるようなのだ。だからこその15分前出発、で見事に正門の騒ぎの横をすり抜けて校舎にたどり着くことができた。


そして挨拶に行った先の職員室にいたのは担任だけで副担任は不在。その担任こと大槻綾子も学生たちから親しみをこめて綾子ねーさんと呼ばれるようなウルトラゴージャス美人で、近くにいると眼鏡の存在感薄め効果も相まってさらに地味子化していくというね。

とにかく目立ちたくない身としてはありがたい限りで、実際挨拶・自己紹介の時も当たり障りの無い「よくある質問」ばかりで他には特に何も起きなかった。


ただ攻略キャラのうち同学年の面々が全員同じクラスというのは実に勘弁願いたい。

違うクラスなのは3年生である会長及び副会長、1年生でありながら次期会計にほぼ内定している皆川拓斗の3人だけ。しかも、私のクラスの教室が生徒会室から徒歩10秒というのも勘弁願いたい。

相変わらずのヤンデレ副担任がいることも含め、いわば攻略キャラすべてが常に私の半径100m以内にいるというこの状態。


大変に心臓によろしくない。


実はこれまでのループの中でこんなことになったことは無かった。せいぜい1人か2人が同じクラス、生徒会室はそもそもフロアが違う、という状況だったのだ。

ところが接触をできるだけ避けるようにしたらこんな状態である。


これが世界の修正力というやつですか。

世界はどうしても私に更なるループをさせたいのか。

……大変に迷惑な話で全力でお断りしたいのですが。


さてそんな心臓に悪い環境における初の長いの自由時間、昼休みである。このときこそ何か起きそうなものだけれども幸いにしてその攻略キャラどもの誰もがこちらに近づいて来ない。


否、近づいて来ることなど絶対にできない状態にいる。


からくりは至って単純だ。

私がモテ過ぎているから、……ではなく逆で、攻略キャラどもがモテ過ぎているのだ。まあ攻略キャラ=美形揃いってことで当然といえるだろう。さっきからひっきりなしに他のクラスの女子が出入りしては彼らを囲んできゃあきゃあいっている。


「うるさくてごめんね、このクラスいーっつもお昼はこんななのよ」


嫌になるわ、と口を尖らせるのはすぐ前の席の日野由香里。そして、まあ慣れてしまえばどうってことないんだけどね、と苦笑するのが隣の席の鹿島結衣。

片や緩い癖のある髪をショートボブにした活発な子、片や逆に見事な黒髪をまっすぐ伸ばしたほんわかした感じの子だ。最初の授業が終わってすぐの休みにも他クラスの女子がちょこまか来ているのを何とはなしに眺めていたときに声をかけられたのが最初だった。


「うちのクラスって何でか美形が多いのよねぇ、眼福って感じじゃない?」


その時は別にどうとも思っていなかったから、まあ好き好きだしいいんじゃない?と返したら、なぜか2人から揃ってまじまじと見られて、


「……あれ、もしかして美坂さんそういうの興味無い?」

「うーん、興味無いというよりどうでもいい、かな。まあ整った顔立ちの人が多いとは思うけれど、だからどうしたって感じ」


すると2人はちょっとびっくりした顔をした後、くすくすと笑い始めて。

そして声を揃えて、


「美坂さんって面白い!!」


いや何でやねん。


「あの集団を初めて見ると大抵そっちに気が行っちゃうのよねー、目がハートになっちゃうかもじもじし出すかって感じで。でもここまですっぱり無関心なのは初めてだわ!」

「私たちはもう慣れたけれどね。私も由香里も彼らとは小学校の時からの付き合いだから、今更そんな目では見れないしね」

「はあ……でもそんなに凄い人気なの?」

「うん、ちょっと引くくらい凄いね。本人たちもまぁ楽しんでるみたいだけど」


まあお昼休みになったらわかるよ、とウィンクした日野さんと鹿島さんに、ふーんそうなんだ、と返したのがわずか数時間前のこと。

昼休みに入ると同時に確かにどこから来たと思うくらいの女子がなだれ込んできて、最早完全にバリケードと化している。これは凄い。近づけない。いや近づく気なんてまったく無いけど。むしろバリケードでいてくれてありがとう。


「まあ邪魔にならない分にはいいんじゃない?」


全くうるさいったら、となおも不満気な2人に返せば、またもお互いの顔を見合わせてから


「やっぱり美坂さん面白いなあ」

「本当、面白いよね」


いやだから何でやねん。

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