目を覚ませ。覚醒のとき
第7話 目を覚ませ。覚醒のとき
このエンジンを直すには、アダマンタイトやオリハルコンが必要だ。
はじめはエンジン修理が目的だったが、手段だった鍛冶修行が目的に変わっていった。
鍛冶屋の修行はつらかったが、機関士ヤエモンドはへこたれなかった。
「俺は何も言わない。目で見て覚えろ。」
「はい。親方。」
エルダードワーフの親方の槌をじっと見つめる機関士の目は真剣そのものだった。
メカニックは錬金術に興味を持った。 マジックバッグや魔導具は理屈はわからないが、凄い道具だ。
科学では真似できない未知の技術だ。
ある者は付与術師に、またある者は召喚士にと、クルーは魔導の力に惹かれた。
◆
何故か魔導に魅入られない副長はクールだった。
「皆、好き勝手に船を降りて行ってしまった。」
「ギルバート。魔法世界に魅入られたクルー達を正気に戻す方法はないかしら?」
メカニックのギルバートは考えた。
「これって精神的な分野ですよね。」
「うーんと、ショック療法というのがありまして、ショックを与えることによって、もとの状態に戻るらしいです。」
「うんうん。ショック療法、聞いたことがあるわね。」
「頭にショックを与えて、開かなかった心の中の扉を開かせてやれば良いと思います。」
「今試作しているのがちょうどありましてね。」
ギルバートはおかしなハンマーを取り出した。
「これなんですが、メカと魔道具の融合したアイテムなんですよ。」
「なんだか、玩具のピコピコハンマーみたいね。」
「はははっ。まさに玩具のピコピコハンマーですね。」
「しかし、こいつにはメカと魔法のリカバリーの術式の魔道具が組み込まれてます。」
「どうやらギルバートもあたしと同じ考えを持っていたようね。」
「はい。」
「こいつを使えば、魔法に魅入られた者を正気に戻せると思います。」
「そのピコピコハンマーは名前はなんというの?」
「名付けて『覚醒のマジックハンマー』です!」
「覚醒のマジックハンマー。」
「そのまんまね。いいわ、名前なんかどうでも。」
ギルバートの渾身のネーミングをあっさり否定されて精神的にダメージを食らった。
「ピコッ!」
ギルバートは自らの頭に覚醒のマジックハンマーを使った。
「キャプテンがいない今、あたしがやらなきゃ駄目なようね。」
副長はこれではだめだと、立ち上がる。
「目には目を、歯には歯を。魔法世界には魔法ということね。」
「それ貸してちょうだい。早速使ってみるから。」
「これは回数制限があるので、後8回が限度ですよ。」
「それじゃさっき何で使ったのよ?」
「試作品なので、テストをかねて自分に使ってみました。」
「だから大丈夫です。」
「なんという技術者魂だわね。」
「褒めてくれてありがとうございます。」
「いいえ、別に褒めてはないわよ。」
「えっ!」
ギルバートは精神的に弱かった。
「ピコッ!」
ギルバートは再び回復した。
「ちょっと回数制限あるんだから、無闇に使わないでよね。」
メカニックのギルバートから覚醒のマジックハンマーを奪い取るアストリア。
「それじゃバカ息子達を叩いてくるわ。留守番よろしくね。」
副長アストリアは出かけていったのだった。
アストリアはブレスレットに内蔵されているビーコンを手がかりに仲間を探した。
そして覚醒のマジックハンマーで次々とクルー達の頭をどついてまわった。
「いい加減に目を覚ましなさい!」
「ピコッ!」
ハンマーで殴りまくる副長。
そして、クルーらの魔導に魅入られた日々は終わったのだった。
まともに戻ったクルーから、連絡が入った。
「副長、キャプテンが女魔法使いに拐われました!」
「なんですって!?」
副長アストリアは、この事態に驚き、外出先から急いで探査船に戻ったのだった……。
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