探査船クルーの崩壊
第6話 探査船クルーの崩壊
クルー達はファンタジー世界で、魔法に魅入られる。だんだんと科学を捨て、魔法に頼るようになっていく。
次第に脳が焼かれて、おかしくなっていくのだった。
メカニックと副長以外は、おかしな行動をはじめる。
キャプテンは能力向上ポーションで、飛んだり跳ねたりして、「エクスカリバー!」と叫び、手刀でモンスターを真っ二つにしていた。
揃えられるだけ揃えた魔法の装備の数々。 素早さを上げたり、力を上げたり、防御力も装備するだけで簡単に上がってしまった。
毎日の苦しいトレーニングはもういらない。
「この身代わりの護符さえあれば、一度だけは死ぬほどのダメージをくらっても大丈夫。」
「世界樹の葉は、死者さえも蘇るすぐれもの。」
「ファンタジーっていいな、あんなことも、こんなことも、なんでもできちゃうー。」
「俺、レベルどんどん上げて、賢者目指そうかな。」
キャプテン・スレインは楽しそうにモンスター討伐を行っていた。
◆
ドクターは回復ポーションなどを買いあさり、製法を会得するために旅立つ。
「錬金術は偉大なり。錬金術士は予を救うものなり。」
ドクターはお経でも読むかのように、ぶつぶつと言って歩いていた。
「この辺りに偉大な錬金術士様はおりませんか?」
「ああ、それなら街のハズレの一軒家に変わった先生が住んでおりますよ。」
「ほうほう、変わった先生とな……。」
「何でも錬金術で金を生成するとかなんとかで、毎日のように研究してるらしいですよ。」
「それは興味深いですな。」
「まぁ、変わり者の変人ですから、関わらない方が良いですよ。」
親切な近所にいた街のおじさんが忠告してくれた。
「それは、ありがとう。」
近くの食料品店で食べ物と酒を買ってくる。 そしてドクターは忠告も聞かずに、その錬金術士の家を訪ねた。
「トントン。」
「錬金術士の先生は、ご在宅かな?」
「トントントン。」
「先生はおりますか?」
繰り返しノックしてみた。
「なんじゃ? ドアは開いているから、入って要件を言え。」
ドクターはドアを開けて中に入った。
「わしはドクという医者だが、錬金術に興味があって来た。」
「ちょっと話をしてほしい。」
「ん~~。今は忙しいから、帰ってくれ。」
部屋の中は暗かったが、目がだんだんと慣れてきて、部屋の様子が見えてきた。
埃っぽい部屋のテーブルに本やビーカーなどが散乱していた。
「まぁ、そう言わないで、酒や食い物があるから話をしないか?」
髭面のおやじが背を向けていたが、はじめて振り向いてくれた。
「ほぅー、土産に酒と食い物とは気が利くのぅ。」
髭面のおやじはテーブルの本やビーカーなどを退かしてスペースをつくった。
ドクターは買ってきた食べ物の紙袋と酒瓶をテーブルに置いた。
髭面のおやじは遠慮なしで酒瓶のコルク栓を抜いて、酒の匂いを嗅いだ。
そこら辺にあったビーカーを二つ用意すると、埃を払って酒を注いだ。
「ビーカーがコップ代わりかいな。」
「口に入れば同じだわい。」
「まー、わしも同じようなことをしてるがな。」
二人は笑って酒を飲んだ。
髭面のおやじが紙袋に入っている、パンやチーズやソーセージを取り出して、ムシャムシャと食べだした。
「どうせ研究に没頭して食事を疎かにしてると思ってな。買ってきたんだよ。」
「それで、なんか用か?」
髭面のおやじが食べながら聞いた。
「あんた、錬金術士だろ?」
「そうだ、大層なものではないがな。」
「わしはハイポーションの作り方を知りたいんだよ。教えてくれないか。」
「そんなのは、錬金術士の学校で教われば良いじゃないか。」
「いやぁ、この歳だしな。若いのに混じって学ぶのもなんだから。」
「恥ずかしいか。」
「まぁいいか。」
錬金術士の髭面のおやじが戸棚から古い本を取り出してドクターの前に置いた。
「これを読んで作ればよかろう。」
ドクターは本を開いて見たが、現地人の文字はサッパリ読めなかった。
ポケットから翻訳機を翳して見て、ようやく何が書いてあるか分かった。
「なになに、ポーション作成方法。材料は以下の通り用意し調合する。魔法術式により成分を変化させれば完成させることができる。」
「魔法術式ってなんだ?」
「なんだ? いい歳して、お前はそんな事も知らないのか?」
「医学が専門だからな。」
「分からんから教えてほしいな。」
「それは面倒臭いから嫌だ。」
錬金術士はきっぱり断った。
「それじゃ、こんな交換条件はどうだ?」
「わしが、食事の用意やら世話するから、ポーション作りを教えてくれ。」
錬金術士はしばらく考えてから言った。
「家事は面倒臭いから、やってくれるなら助かるな。」
二人は握手した。
「わしはレイモンドだ。」
「わしはドクだ。」
二人は師弟関係になり、ドクターはポーション作りを教わることになった。
◆
機関士は鍛冶屋に弟子入りし、鍛冶仕事の修行をすることになった。
「こんな歳の奴に鍛冶を教えるのははじめてだ。」
「俺もまさかこの歳で、鍛冶を教わるとは思わなかったな。」
「まーなんだ。あんな良い物貰ってしまったら、いまさら嫌とはいえねーな。」
機関士ヤエモンドは船内にあったリペア品のスペースチタンなどの金属を取引材料にしていた。
「俺が鍛冶を教えてやるからよ、そのスペースチタンの作り方を教えてくれよ。」
「言っただろうが、俺はスペースチタン作りはやったことはない。」
「ただ、チタン鉱石を真空状態で製錬するくらいとしか言えない。」
「なんだか、まだまだ隠し事がありそうじゃないか。おかしな道具を持っているし、その腕輪も仕掛けがありそうだしな。」
鍛冶屋のおやじはヤエモンドの腕にはめてある通信端末を指さして言った。
「これはまぁ、あれだな。魔道具みたいな物だな。」
「その光沢のある金属、綺麗に磨かれていて、よく見ると細かいパーツや赤い光が点滅を繰り返している。俺の目には明らかにお前さんが何か隠しているとしか思えない。」
「ドキ。」
この鍛冶屋は侮れないな。よくこちらを観察している。
「まぁ、おいおい話を聞かせてもらうかな。」
この二人は師弟関係になったが、隠し事がいつまでもつかは分からなかった。
しかし宇宙からやって来たと言っても、信じてはもらえないだろう。
そっと左腕にはめているブレスレット端末をヤエモンドは見たのだった。
◆
探査船フリーダムフォレスト号の航海士アストンや航海長セドリックらは魔法使いになるため、それぞれ修行を開始した。
もうクルーらは一人、また一人と魔法やこのファンタジー世界に魅入られる。
次々と修行のために探査船を後にしていった。 既に惑星探査という目的を忘れ、探査チームは崩壊していったのだった。
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